REVIEW

野球少女【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『野球少女』イ・ジュヨン

最高134キロの球を投げる高校球児が、女子という理由だけでプロ球団への道を阻まれながらも、諦めずに挑み続ける姿を描いた本作は、1997年に韓国で女性として初めて高校野球部に所属し、韓国プロ野球(KBO)主催の公式試合で先発登板したアン・ヒャンミ選手の実話をモデルにしています。主人公チュ・スインを演じたのは、日本でも大ヒットした韓国ドラマ『梨泰院クラス』でトランスジェンダーの料理長役を演じブレイクしたイ・ジュヨン。彼女は今作のために40日間の特訓を受け、ノースタントですべてのシーンを演じたそうです。主人公の投球スタイルが物語の鍵となってくるところもあり、演技だけでなくピッチャーとしての技術が要求されますが、スポーツや野球に詳しい人はぜひそんなところにも注目して観てください。
そして、本作は何といっても物語に引き込まれます。ただでさえ入団が難しいプロ球団への道を諦める人が多くいるなかで、女性は入団テストを受けることさえ難しい。それでも諦めずに挑み続けるんだろうなと思いながら観るのですが、普通だったらここで終わるだろうというところでも彼女は立ち止まらず、妥協しないで突き進んでいきます。そんな彼女の姿に勇気をもらえるのはもちろんですが、一方でなかなかここまで戦い抜ける人は稀だということも感じて、これまで女性の多くが妥協を強いられてきたのだなと実感させられます。でも、主人公のように妥協せず諦めなかった人がいるおかげで、他の女性達にとっても少しずつ道が切り拓いていくのだなと思うと希望と共に感謝の気持ちが沸いてきます。また、家族とのやり取りも印象的に描かれていて、夢を追いかけるには周囲の理解や支えも必要だということがひしひしと伝わってきます。女性目線はもちろん、夢を追う人、夢を追う人をサポートする人、いろいろな視点で共感できる映画です。

デート向き映画判定
映画『野球少女』イ・ジュヨン/クァク・ドンヨン

社会には性別が壁になっていることがまだまだ多くあること、そして性別だけでなく家庭の事情や家族の価値観に縛られてしまうこともあることなどを実感できるストーリーなので、お互いのこれまでの経験や価値観を共有する意味でも一緒に観て感想を話すのは有意義だと思います。爽やかな青春映画なので、友達以上恋人未満、初デートで観てもOKです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『野球少女』イ・ジュヨン/イ・ジュニョク

試練はいろいろ出てくるかもしれないけれど、どんな夢を持っても良いんだよと教えてくれるストーリーなので、ぜひキッズやティーンの皆さんにも観て欲しいです。高校生が主人公なので、進路を具体的に考えて動き出している高校生や大学生の皆さんは特に感情移入できるでしょう。主人公のように絶対にこうなりたいという気持ちがあれば妥協せずに進むのも良し、まだここまで固まっていなければいろいろ試してみるのも良しなので、進路を考える一例として観るくらいでも良いのではないでしょうか。

映画『野球少女』イ・ジュヨン

『野球少女』
2021年3月5日より全国公開
ロングライド
公式サイト

© 2019 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ モンテ・クリスト伯【レビュー】

アレクサンドル・デュマ・ペールの傑作小説「巌窟王」を映画化した本作は…

映画『秒速5センチメートル』松村北斗 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年10月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年10月】のアクセスランキングを発表!

映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一 旅と日々【レビュー】

つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』などを手がけた三宅唱監督が映画化…

映画『風のマジム』肥後克広 肥後克広【ギャラリー/出演作一覧】

1963年3月15日生まれ。沖縄県出身。

【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】羽佐間道夫、山寺宏一ほか 人気声優達が真剣勝負!会場が終始笑いに包まれた【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】本番リポート

発起人である羽佐間道夫のもと、山寺宏一、林原めぐみほか錚々たる人気声優達がズラリと顔を揃えたライブは今年で20周年を迎えました…

映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』ホン・サビン/シン・ジュヒョブ あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。【レビュー】

物語の始まりは、1995年の韓国、テグ。学校でいじめられていたドンジュン…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  2. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー
  3. 映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング
  4. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  5. 映画『秒速5センチメートル』松村北斗

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP