結婚するかどうかにとらわれず、今を生きる人々がそれぞれの速度で“自分の居場所”を見つけていく群像劇『てんてん ずっと独身でいるつもり?』。今回は本作で初主演を飾った森香澄さんにインタビューをさせていただきました。
<PROFILE>
森香澄(もり かすみ):ヤマダミサキ 役
1995年6月16日生まれ。東京都出身。2023年3月にテレビ東京を退社後、アナウンス業、タレント業のみならず、俳優としても活動の幅を広げている。本作『てんてん ずっと独身でいるつもり?』で映画初主演を飾る。その他の近年の主な出演作に、映画『裏社員。 スパイやらせてもろてます』(2025)、『ロマンティック・キラー』(2025)、ドラマ『オトナの授業』(2024)、『伝説の頭 翔』(2024)、『栞ちゃん 心の声を聞かせてよ』(2024)、『年下童貞くんに翻弄されてます』(2025)、『奪い愛、真夏』(2025)、『DREAM STAGE』(2026)、『プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮』(2026)などがある。2026年9月1日には自身初の美容本「戦略的かわいいの作り方 森 香澄のかしこい美容メソッド」(小学館刊)を発売。
アナウンサー時代のバランサー経験が俳優のお仕事にも活きています

シャミ:
最初に役が決まった時や脚本を読んだ時に、作品やヤマダというキャラクターにどんな印象を持ちましたか?
森香澄さん:
まず脚本を読ませていただいて、すごく良い作品に巡り会えたなと感じました。それに、「この役を森香澄にやらせてみたい」と思っていただけたことがとても嬉しかったですし、ヤマダを演じるのが楽しみでした。ヤマダは特にやりたいこともなく、それに少し焦っているけれど、だからといって何をしたらいいかもわからない。それって決して特殊な悩みではなく、誰もが感じたことがあるようなリアルな悩みですよね。観た方が何か感じ取っていただければいいなと思いながら撮影に入りました。
シャミ:
ヤマダのキャラクターはパンチがあって、あのやんちゃさが個人的にすごくお気に入りです。森さんがこの作品ではリアルにヤマダにしか見えませんでした。
森香澄さん:
ありがとうございます!

シャミ:
ヤマダに対して特に共感した部分や、ご自身と似ていると感じたポイントはありますか?
森香澄さん:
ヤマダは基本的にやりたいことがなくて、頼まれたからやっているだけというスタンスなんです。シバ(若葉竜也)と話すシーンで、ホームヘルパーの仕事も代理婚活の仕事も頼まれたからやっているだけだと伝えるシーンもありますよね。
私自身もオファーをいただいたから挑戦してみるというのが基本のスタンスです。だから、自分から「これができます!」「やります!」と言うことはあまりありません。それは私にとってはすごく怖いことで、逆にそれができる方はすごいなと思っています。だから誰かに「これが合うと思うんだけど、やってみない?」と言っていただいたことには全力で向き合いたいと常に思っています。30代になってからは少しずつ「これをやってみたい」と発信する機会も増えてきましたが、ベースはヤマダと一緒だなと思います。
シャミ:
ヤマダとの共通点があったんですね。ヤマダがさまざまな壁にぶつかり、もがきながらも成長していく姿はとても見応えありました。そうした彼女を演じる上で、特に意識された点や工夫されたところはありますか?

森香澄さん:
ビジュアルなどの調整は多少しましたが、何か特別な役作りをしたわけではないんです。ヤマダは接する相手によって雰囲気が少しずつ違うのですが、それって人間なら当たり前のことですよね。だから、こう演じると決めつけてしまうのではなく、その場面やヤマダが一緒にいる人との間に生まれるテンポ感を大切にしていました。
シャミ:
本作が初主演とのことでしたが、現場に臨むスタンスや心境の変化、あるいは本作を経て俳優というお仕事に対する考え方に変わった部分はありましたか?
森香澄さん:
主演だからという意識はあまりありませんでした。私自身、お芝居の経験は数年ありますが、共演の皆さんは長年たくさんの作品に出て来られた方ばかりです。なので、主演として現場を引っ張るという感覚は全くなく、どちらかというと皆さんの姿を見ながら「こうやって演じるんだ」とか、現場での在り方を感じ取って、そこに混ざっていくような感覚でした。
でも、ヤマダ自身もそうやって周囲と関わっていくタイプなので、結果としてそれがシーンの良さに繋がっていった気がします。撮影裏でもヤマダとしていられましたし、皆さんとも役のまま話していたような感覚がありました。もちろん実際の会話内容は役とは違いますが、お互い初対面だったからこそシバとヤマダ、フルヤ(芋生悠)とヤマダといった関係性が、自然と役のままだったように思います。その延長でお芝居に入れたからこそ良いシーンになったと思いますし、周りの方々に本当に助けられました。

シャミ:
なるほど〜。本作はヤマダの物語と並行して、シバやシミズ(香椎由宇)にもフォーカスが当たる場面のある群像劇でした。森さんが思う群像劇のおもしろさや魅力はどこにあると思いますか?
森香澄さん:
この作品は、大きな事件が起きたり、犯人がいたり、爆発があったりするような派手な作品ではありませんが、現実の日常ってそういう大きな出来事はなかなかないですよね。だからこそ、そうした普通の日常を切り取って描くおもしろさがあると思います。私自身、ヤマダの気持ちに寄り添いながら丁寧に作ることができて、そういった作品はなかなかないので、皆それぞれ尊重して作り上げる環境は本当に恵まれているなと感じました。ただ自分の出ていないシーンは本当にスクリーンで初めて観たので、こんな感じなんだと思いました。
シャミ:
撮影している時と、完成した作品を観た時の作品のイメージで変わったところはありましたか?

森香澄さん:
全体のイメージ自体は変わりませんが、細かい部分での発見はありました。例えば、私以外のキャラクターを映像で観た時に、「私からは見えていない角度でそんな顔をしていたんだ」という発見があり、「演じている時にその表情をしていると知らなくて良かった」と思った場面もありました。もし撮影当時にそれを知っていたら、その次のシーンでちょっと違う感じでヤマダを演じていたかもしれないので、それはヤマダ視点でのみ知るべきことを知って、演じていて良かったなと思いました。そうやって自分の演じた役の目線で作品を鑑賞したのも初めての感覚でした。
シャミ:
ここからは森さんご自身についてお伺いします。最初に俳優のお仕事に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
森香澄さん:
明確なきっかけがあるわけではありませんが、元々ドラマや映画を観るのが好きで、関わりたいというよりは純粋に好きだったんです。局アナを経てフリーになって何でも挑戦できるとなった時に、一番やってみたいと思ったのがお芝居でした。アナウンサーやタレントのお仕事は、カメラの前では口角を上げて笑顔でいることが求められますし、それが当たり前だと思っていました。でもお芝居では、怒ったり泣いたりというネガティブな感情も表現します。私は作品の役を通さないと、表でそういったネガティブな感情を出せないんです。森香澄という個人としては負の感情を外に出すことが苦手なのですが、役を通すことでその感情を出せると気づいた時にお芝居っておもしろいなと感じました。
シャミ:
確かにアナウンサーやタレントのお仕事と俳優のお仕事との一番違う部分かもしれませんね。

森香澄さん:
もちろんプライベートでは感情を出すこともありますし、家族や友達と喧嘩することもあります。お仕事の場では良い表情や楽しい感情しか出してこなかったので、そうではないネガティブな感情を作品を通して表現できることが、私にとってはすごく新鮮でした。
シャミ:
逆にそれを「恥ずかしい」ではなく「おもしろい」と感じられたのは、俳優さんに向いていらっしゃる証拠かもしれませんね。
森香澄さん:
どうなんでしょう(笑)。でも、あくまで役であって私自身ではないので、恥ずかしさはありません。私個人としてのネガティブな感情は表に出せないので、お芝居を通してだからこそ出せるものだと思います。
シャミ:
では、最後の質問です。俳優、アナウンサー、タレントとしてお仕事をされるなかで、それぞれのお仕事で相互作用していると思う点はありますか?

ヘアメイク:水野花菜
スタイリスト:稲葉有理奈(KIND)
カメラマン:小嶋淑子
森香澄さん:
会社員のアナウンサーだった時期が一番長いので、やはりアナウンサーとしての経験が自分の根源にあります。アナウンサーはいわば現場のバランサーで、共演者や話し手はもちろん、ディレクターの意図を汲み取ったり、その上のプロデューサーが考えていることを察知したりします。さらに、「この話を展開しても後でカットになるかも」とか、いろいろなことに気を配りながら一つの番組を作っていきます。その経験は今もすごく活きているなと感じます。バラエティ番組でコメントをする時はもちろんですが、ドラマの現場でも役者以外のスタッフの皆さんがどういう立ち位置で何を求めているのかを考える癖がついています。すべてに応える必要はありませんが、皆さんがどういうことを期待しているかを汲み取る力は、アナウンサー時代の経験が活きている部分だと思います。
シャミ:
多くの方がいる現場で、それぞれのバランスを考えるのは本当にすごいですね!
森香澄さん:
意識して考えるというより、自然とそうなってしまうんです(笑)。
シャミ:
今までの経験があったからこそですね。本日はありがとうございました!
2026年9月30日取材 TEXT by Shamy

映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』
2026年10月23日よりPrime Videoにて独占配信中
監督:箱田優子
出演:森香澄/若葉竜也/香椎由宇/芋生悠/田村健太郎/笠島智/黒沢あすか/白川和子/眞島秀和/前田吟
ヤマダミサキ30歳、独身。今は友人のつてでホームヘルパーとして働いているが、恋人の浮気が発覚し、仕事もうまくいかなくなってしまう。葬儀社で働くシバ、38歳。姉の幼い息子を預かることになり途方に暮れるなか、ヤマダと関わるうちに、甥との距離を少しずつ縮めていく。そして、デザイナーのシミズ、46歳。父が倒れたことを機に仕事か介護か、そして自分の人生をどう生きるかの間で揺れ始める。年齢も境遇も異なる3人は、それぞれが迷いながらも、自分の居場所を見出していく…。
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- イイ俳優セレクション/森香澄(後日UP)
- イイ俳優セレクション/若葉竜也





























