Author Archives: 局長

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学生映画宣伝局:2019年5月24日ミーティング

2019年、新メンバーを募集します!

Category : 活動リポート

【Student PR Agency for movies:学生映画宣伝局】では、エージェントを募集します!

2017年に立ち上げた当局は、運営方法について試行錯誤しながら、現在は認定エージェントがメインとなって、稼働しています。
→認定エージェントプロフィールはこちら

今回は、「仮入局」というスタイルで、エージェントを募集しますので、顔合わせなどを経て、どんな様子かぜひ一度体験してください。

募集について、詳しくはこちら

第1弾募集締切:2019年6月19日(水)23:59
※第1弾の募集人数次第で、第2弾募集が必要かどうかを検討します。

2019年稼働中の認定エージェントからコメント

〜エージェント名:50音順〜

学生映画宣伝局認定エージェント:おかめ 学生映画宣伝局認定エージェント:さおり 学生映画宣伝局認定エージェント:サン
おかめ
映像編集担当のおかめです!映画オタクでもそうじゃない人でも大丈夫!参加お待ちしてます!
さおり
必要なのは映画が好きな気持ちだけです!一緒に映画の楽しさを語り、そして魅力を広めましょ〜!
サン
学校では映画好きの友達が見つけられない〜というそこのあなた!学生映画宣伝局で語りましょう〜!!
学生映画宣伝局認定エージェント:染井 学生映画宣伝局認定エージェント:ハグリ娘 学生映画宣伝局認定エージェント:ミミミ
染井
日本中の大学生が、1週間に1本映画を観る時代を創りたい!映画愛を拡散したい人、ぜひ来てネ。
ハグリ娘
食!おしゃれ!スポーツ!笑い!漫画!
あなたの好きなジャンルは?
映画には、たーくさんのジャンルがある?
学生目線で伝わる映画の魅力をあなたの好きなジャンルの映画から発信していきましょ〜。
 ミミミ
映画好きさんに会いたい!!喋りたい!!友達になりたい!!

現在の認定エージェントは、たまたま女子大生ばかりですが、男女問わず、16〜24歳の学生の方を対象に募集しています。皆さんのご応募待ってます。

★募集について、詳しくはこちら
★合わせて必ずお読みください→こちら


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映画『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督

映画業界人インタビューVol.13ゲキメーション作品『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督

今回は、エージェントのハグリ娘が取材を行いました。ページの最後には取材で訪れた吉本興業さんの社内のお写真も掲載しています。学校の跡地を利用したユニークなオフィスです。

宇治茶監督から学生映画宣伝局サイトをご覧の方にひと言頂きましたので、まずは動画をご覧ください!

上映NGの国もあれば、最初から最後まで爆笑だった国も!

ハグリ娘:本作を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

宇治茶監督:前作『燃える仏像人間』を自分で見返してみて、納得がいっていない部分が結構あったんです。無茶苦茶で訳がわからなくなって、もうちょっといろんな人に伝わる、わかりやすいものを作りたいなって思いがまず一番にありました。それが本作でできていたかどうかはわからないですけど(笑)。で、昔から好きだった『ジュラシック・パーク』とか、誰かが作った公園みたいところに入っていって、そこで恐怖の出来事に巻き込まれるみたいな物語が作ってみたいなって思って、そういう発想から本作を考えました。

局長:すごくグロテスクな描写が印象的ですが、元々そういう作風で絵とかも描いてらっしゃったんですか?

映画『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督:絵もそうですね!子どもの頃から結構残酷な絵を描いたりしてました。周囲から心配されるような内容で(笑)。

一同:アハハ(笑)。

局長:それは何かきっかけがあるんですか?

宇治茶監督:きっかけ、何なんでしょうね。小学生の時は、人が包丁を持った人に追いかけられてる絵とか、カエルの解剖ができるおもちゃみたいなのを作ったりしてたんですけど、中学生くらいからそういうのが怖くなって、ホラーが苦手になった時期もありました。大学生になって、1回生の時に自分の机の上に誰かが置いた、楳図かずおさんの「洗礼」っていう漫画を読んでから、またホラーにハマりだしてって感じです。

ハグリ娘:好きなアニメ作品が『リメンバー・ミー』『耳をすませば』と資料にありますが、グロテスクなのを描いてると、逆にそういう作品を観たくなるんですか?

宇治茶監督:いや、実写映画やホラーはめちゃくちゃ観るんですけど、アニメ自体はそんなに観てなくて、観てるのはピクサーとジブリはほぼ全部という感じですね。でも『リメンバー・ミー』は今までの映画の中でもほんまに好きで、『耳をすませば』もずっと何度も何度も繰り返し観てますね。

局長:それはご自身の作品と何か通じるものがあるからですか?

映画『バイオレンス・ボイジャー』

宇治茶監督:そうですね。『リメンバー・ミー』は家族の映画で、『バイオレンス・ボイジャー』も結構家族の映画かなと(笑)。『耳をすませば』は恋愛に目がいきがちなんですけど、1人の女の子が自分自身に向き合って、夢に向かっていくっていう、そういう部分もやっぱり自分が今まで物を作ってるなかで共感できる部分が多かったです。昔は単純に恋愛的な憧れもありましたけど、最近はそっちの目線で観てしまいますね。

局長:なるほど。で、怖いシーンはすごくインパクトがありつつ、ちょいちょい笑える部分もあったんですけど、笑わせようという意図もやっぱり込められたんでしょうか?

宇治茶監督:そこまで意識せずにそうなっている部分はあるんですけど、やっぱり自分が好きやったスピルバーグの映画とかも、怖いシーンに時々ふっと抜ける笑いの部分ががあって、そういうのが好きなんです。だから、何か染み付いてる部分があるのかも知れません。

ハグリ娘:笑いの部分で、ウケが良かった国とかはありましたか?

宇治茶監督:この作品では、フランスとアルゼンチンに行かせてもらったんですけど、アルゼンチンでは始まってからずっと最後まで笑いが絶えない感じで、エンディング曲が流れてくるあたりでまた大爆笑みたいな状態でした。全然意図してないところでもウケて、めちゃくちゃ笑ってくれていました。

ハグリ娘:日本だとどういう予想ですか?

映画『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督:どうですかね。京都国際映画祭で去年一回だけ上映したんですけど、やっぱり海外より全然静かでしたね。でも身内や家族が観にきてたんで、恥ずかしくて劇場の中にいられず、ほとんど外で姪っ子と遊んでました(笑)。だから、あまりちゃんと日本での反応をまだ観てないんです。

ハグリ娘:そうなんですね。資料に次回の構想がいくつか浮かんでるって書いてあったんですが?

宇治茶監督:はい!いや〜秘密です(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

ハグリ娘:毎回テーマを決める時に大事にしてることってありますか?

宇治茶監督:んー、ぼんやりとあるのは、子ども達が活躍するのが結構楽しいので、やっぱり次の作品も子どもの成長みたいなストーリーになるような気はします。

局長:今後、実写やアニメーションで撮ることもありそうですか?

宇治茶監督:いやもうチャンスがあればいくらでもやりたいです!

局長:怖いのじゃなくて、完全にラブストーリーとかも(笑)?

映画『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督:それも、やってはみたいと思う時もあるんですよ。今までホラーだったので、逆に次は全然意外なのでいったろかなって思うんですけど、「3年間もモチベーションが保たれへんな!」って(笑)。保つとなったら、やっぱり血が出たり、ゲロが出たり、モンスターとかそういうデザインとかを考えたいってなりそうですね(笑)

局長:ハハハハ(笑)。で、映画作りをしている学生で、ゲキメーションに興味がある人もいると思うんですが、こういったゲキメーションを作る上での工夫の仕方は、どういうところから着想を得ているんですか?

宇治茶監督:意外とゲキメーション自体のマニュアルっていうか、そういう本が無いんで、ゲキメーション作品を観て、映画もとにかく観まくって、盗めるところは盗んでってやっていくのが一番良いんじゃないかなと思います。そのままやったら怒られることもあるかも知れないですけど、実写でやるとそのままのこともゲキメーションとしてやったら意外とまんまではなくなったりすることもあるんで。

局長:「それを表現するのに、そこをそういう風に動かすんだ!」っていう観方も楽しかったです。

宇治茶監督:それはほんまに直感で、その時その時でカメラで撮ってみて「なんか足りひんな」って思ったら、この腕だけちょっと切って動かしてみたりしてました。

ハグリ娘:作っていて、どの部分が一番最初に完成するんですか?

宇治茶監督:最初にあらすじを決めてから、脚本を作って、それをもとに、イメージボードとかスケッチとかを書いていって、絵コンテを作って、その絵コンテをまずビデオの編集ソフト上に並べて、80分の尺を先に作ってしまうんですよ。それをもとに映像というか、作画をしていきます。で、どんどん作画したやつを切って、この紙の人形を全部完成させるまでに1年半くらいかかって、撮影はそれからですね。

ハグリ娘:え、それ何人くらいでやってらっしゃるんですか?

宇治茶監督:1人で全部です。

ハグリ娘:えーーー!

宇治茶監督:全部自分の部屋でやりました。脚本を書いて、撮影も、編集も自分のパソコンでやったんです。

局長:いや〜ほんとすごい!実写だとたぶんカットされるなと思う過激なシーンもあって、実写でできないことを結構できたとは思うんですが、その辺はどうでしたか?

宇治茶監督:でも、ゲキメーションとはいえ、海外の映画祭で「あのシーンがあるからかけられない」というのも結構あったみたいです。だから日本は意外と緩いほうですよね。

局長:声優さんもすごく豪華だったんですが、完成した作品を観た時、どう感じましたか?

宇治茶監督:絵コンテの段階で声優さんに先に収録してもらったんで、例えば悠木碧さんの声に合わせて僕が絵を描きつつ操演(絵の人形を動かして演じることを)してたんで、声と絵と一緒に融合してできあがっていったみたいな感じです。悠木さんの声に引っ張っていってもらったところは大きいと思います。

ハグリ娘:声優さん達は動画になっていない絵コンテの段階で吹き込んでるってことですか?

宇治茶監督:そうです!白黒の鉛筆の絵しかない状態で、たぶん訳がわからずにやってはったと思います(笑)。

局長:皆さん、さすがですね!私はお父さんの顔と声がやたらイケメンでツボでした(笑)。

映画『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督:(ココリコの)田中さんですね(笑)。(サバンナの)高橋さんや田口トモロヲさんとかも、自分の中でピッタリの方に、イメージ通りの声で演じてもらえて、小野大輔さん、藤田咲さんは、結構贅沢な使い方をしてしまったなと思うんですけど(笑)。

局長:松本人志さんがナレーションをされてたり、錚々たるメンバーですよね。

宇治茶監督:いや、ほんとにそうです。

ハグリ娘:では最後の質問で、仕事以外の時って、どうされてるんですか?

宇治茶監督:映画を観たり、家でゴロゴロしながらDVDを観たり、カメラが好きなんで、街に出て昆虫の写真を撮ったりしてますね。

ハグリ娘:そういうのが作品作りにも活きてきたり?

宇治茶監督:そういうのが活きてますね。昆虫をマクロレンズで撮るんですけど、それが難しくて、すごく練習になるんです。意外と精神を擦り減らされる作業なんで、そういう趣味も役立ってるんじゃないかなと思いますね。

ハグリ娘&局長:この度はありがとうございました!

今回の記事担当:ハグリ娘
■取材しての感想
すべての作業をお一人で行われていらっしゃることにとても驚きました。だからこそ独特の世界観とファンタジー要素のある作品になっているのだと思いました。グロテスクな部分は好き嫌いがあるかも知れませんが、その先にあるメッセージや作品を楽しむ在り方を感じられる作品に出会うことができました。ありがとうございました!

取材日:2019年4月5日

★宇治茶さんが監督した作品

映画『バイオレンス・ボイジャー』『バイオレンス・ボイジャー』

2019年5月24日より全国劇場公開
公式サイト
監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影:宇治茶
出演:声の出演:悠木碧/田中直樹(ココリコ)/藤田咲/高橋茂雄(サバンナ)/小野大輔/田口トモロヲ/松本人志(特別出演)
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

劇画とアニメーションを融合させたゲキメーションという手法で描く異色作。3年もの歳月をかけ、監督、脚本、編集、キャラクターデザイン、作画、撮影まですべて宇治茶監督1人で担当。山奥にあるアトラクション“バイオレンス・ボイジャー”を訪れた子ども達が、思わぬ事態に巻き込まれていく様を、スリリングかつユーモラスに描いている。

©吉本興業

吉本興業さんのオフィスはとってもユニーク

今回、学校の跡地をそのままオフィスにされている吉本興業さんで取材をさせて頂きました。建物の中央にある風景もちらっと撮影させて頂いたので風景を少しご紹介します。

学生映画宣伝局:取材先の吉本興業2019年4月

学生映画宣伝局:取材先の吉本興業2019年4月

学生映画宣伝局:取材先の吉本興業2019年4月

学生映画宣伝局:取材先の吉本興業2019年4月

学生映画宣伝局:取材先の吉本興業2019年4月

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学生映画宣伝局:就活生が『何者』を観てみた(2019年3月22日)

就活生が『何者』を観てみたら〜後編〜

学生映画宣伝局の現役就活生、サン、おかめ、はぐり娘、さおりの4人が、就職活動中の学生達の姿を描いた『何者』を観賞。

キャラクター達に自分達を重ねて等身大で語る学生達の生の声をぜひお聞きください。

観賞日:2019年3月22日

 

前編も観る

『何者』
DVD好評レンタル&発売中 


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学生映画宣伝局:就活生が『何者』を観てみた(2019年3月22日)

就活生が『何者』を観てみたら〜前編〜

今回は、朝井リョウ原作、就職活動中の学生達の姿を描いた『何者』を、学生映画宣伝局の現役就活生、サン、おかめ、ハグリ娘、さおりの4人で鑑賞!

映画の感想や就活の悩みをわいわい話す様子をどうぞご覧ください。

観賞日:2019年3月22日

後編も観る

『何者』
DVD好評レンタル&発売中 


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第13回TOHOシネマズ学生映画祭(2019/3/29)

映画はまだまだ愛される存在でいられる“TOHOシネマズ学生映画祭”

皆さん、こんにちは。今回は局長による投稿です。2019年3月29日、第13回TOHOシネマズ学生映画祭にお邪魔してきました。もう13回を迎える映画祭とあって、過去の受賞者には2018年夏に全国で劇場公開された『ペンギン・ハイウェイ』の監督、石田祐康氏の名前もあったり、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督をはじめ、映画業界の名だたる方々が審査員を務めていたり、映画界を目指す学生達にとって、とても重みのある映画祭だということがうかがえます。

第13回TOHOシネマズ学生映画祭(2019/3/29)

プロのアナウンサーさんかと思うくらい、上手なMCさんでした。

実は今回初めてこの映画祭にお邪魔させて頂いたのですが、たくさんの応募作品の中から選ばれただけあって、クオリティの高さに驚きました。でも同時に学生らしさもちゃんとあって、学生である今しか撮れない作品が集まっているという印象でした。大人目線で観賞すると、そういう部分もとても新鮮で、世代を問わず楽しめるイベントですね。

第13回TOHOシネマズ学生映画祭(2019/3/29)

劇中では良い味を出している俳優さんもいて、ここには映画監督になりたい人もいれば、照明さん、音響さんを目指す人、俳優になりたい人もいて、それぞれに夢があるんだろうなとしみじみ。

第13回TOHOシネマズ学生映画祭(2019/3/29)

今の時代は映像を撮れる環境や道具、仲間を見つける手段など、あらゆる点で恵まれているし、いろいろなメディアで国内外問わずいろいろな作品を観ることができるし、発信することもできる。同時にそれだけライバルのレベルも高くなっていくので、生き残るのは昔よりも難しいのかも知れませんが、会場にいた学生達のとても活き活きとした表情を観ていると、まだまだ映画業界は希望があるなと実感しました。

第13回TOHOシネマズ学生映画祭(2019/3/29)

【ROBOT賞:ショートフィルム部門】
『ロボーイフレンド』寒川亘揮監督

若者の映画離れが囁かれていますが、ここにきたらそんな不安は吹っ飛びます。映画を好きになってもらうためにできることって何だろうといつも考えますが、こうやって映画に熱い思いを持つ人達の日々の努力が、ジワジワと一人ひとりの心を動かし、それが広まっていくのだと信じています。

第13回TOHOシネマズ学生映画祭(2019/3/29)

受賞された方、出品された方、そして映画祭スタッフの学生達にも大きな拍手を贈りたい。映画を作る人がいて、それを支える人がいてこそ、観客に伝わっていく…。あの会場にいたすべての方の存在価値はとてつもなく大きいと感じました。

大きな可能性を秘めた学生達が集まる映画祭。彼らの未来が本当に楽しみです。

第13回TOHOシネマズ学生映画祭(2019/3/29)

【ショートフィルム部門】
・グランプリ:『ZOB』 竹中貞人監督
・準グランプリ『No Lie No Life』 前田柊監督

第13回TOHOシネマズ学生映画祭
公式サイト
公式Facebook ※詳しい受賞結果はこちらに掲載されています。
公式ツイッター


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映画業界人にインタビュー:国際交流基金の活動

映画業界人インタビューVol.12独立行政法人 国際交流基金 映像事業部 寺江瞳さん【後編】

国外からは、日本の映画市場や映画業界はどう見えている?

おこめとパン:学生の頃にやっていて、今のお仕事で役に立っていることがあれば教えてください。

寺江さん:仕事に役立っているかわからないですけど、学生の頃にしかできないことってあると思うんです。長期的にやること、例えば旅行とか勉強とか留学とか。すぐお金や結果にならないことも、考えたりトライしたりする時間がたくさんありますよね。映画鑑賞や読書もそう。私も学生時代にボランティアで学生向けマガジンのライターをしていておもしろいなと思って新聞記者を志望したので、何が将来に繋がってくるかわからないですが、いろいろやったほうがいいと思います。きっと社会人は皆同じことを言うと思いますが(笑)。

おこめとパン:今の学生って、とにかくやりたいことが見つけられないっていう人が本当に多いんです。私とミミミちゃんは映画を作りたいんですけど、それをなかなか言えなくて…。

寺江さん:そうなんですか!?東京なんかだと、逆に情報が多過ぎるんですかね。

おこめとパン&ミミミ:確かに…。

寺江さん:だから地方のほうが逆にハングリー精神みたいなものがあったりするのかなあ。

一同:あ〜。

映画業界人にインタビュー:国際交流基金 寺江瞳さん寺江さん:私は大学まで九州に住んでいたので、東京にいる学生って、すごく羨ましいですけどね!映画や文化イベントも多くて第一線で活躍する人にも会えるし。もちろん東京以外でもいろいろおもしろい活動もあるし、とにかく何かしないともったいない。

おこめとパン:そうですよね。学生って時間があるからこそですもんね。ちょっとお話が変わってしまうんですが、海外とのお仕事をすごくたくさんされているなかで、国外から見た日本の映画市場や映画業界はどういう風に見えていると感じられますか?

寺江さん:ドメスティックな思考が強いなと思うことはあります。国内市場内で興行として上手くいっているのは喜ばしいことですが、もっと海外でも見てもらえるチャンスが増えたら良いなと。日本映画はアニメをはじめとても人気が高いですが、世界的には、映画館で日常的に観られる環境にはなっていない。
一方で監督さん、プロデューサーさんなどと海外に一緒に行くと、海外での映画市場や制作、海外の文化などに非常に興味を持ってくださる方が多いんです。意外と監督って海外で反応を見る機会が少ないんでしょうね。実際、基金でもいろんな国で上映していますが、報告しても監督まで届かないことが多いと思うんです。だから、私達としてはそういう反応を知るチャンスにしていただきたいというのもあります。文化の壁を越えて共感を得られることを実感していただくことは、その後の作品作りにも良い影響を与えてくれると思います。
近年は海外との共同制作も増えているので、実際にどんどんお仕事のオファーがきている方もいます。基金では海外の制作者や映画業界の方との交流の機会を設けるようにしているので、つながりをつくり、その後の海外展開の手助けができればと思います。

ミミミ:他の国で映画祭を行うにあたって大変なことはありますか?

寺江さん:海外の基準と日本の基準が違うし、海外はしょっちゅういろいろなことが変更になります。日本人の感覚だと、先に話し合って決めていって、決めたことは基本的に変えないみたいな感覚だと思うんですけど、中国に限らず海外は随時変動していくというか。直前に決まることもあれば、日程とかも全然変わるし、国によって検閲があったり、許可が下りなかったりすることもあります。基本的に仕事の進め方が違うので、文化を尊重しつつ、日本側が求める水準はキープできるよう説明や確認を丁寧に行うなど、気をつけています。

映画業界人にインタビュー:国際交流基金の活動ミミミ:海外の映画祭での観客のテンションはどうですか?日本人って映画を観る時に静かですが。

寺江さん:そうそう、笑いは中国のほうが結構おきますね。お客さんが若いのもあるかもしれませんが、テンションが高いんだと思います。「えーっ!」とか声を出したり、手をたたいたり、日本人と全然違いますね。あとはティーチインの時間って、日本ではあまり手を挙げる人がいないじゃないですか。

おこめとパン&ミミミ:挙げない、挙げない…(笑)!

寺江さん:ですよね。今まで何十回と上映後のトークをしていますが、質問がなかったのは1回しかないですね。結構次々に挙げてくれて、日本語もできるお客さんがとても多いので通訳なしで日本語で質問する方が多い(笑)。

局長:質問がたくさん出ると、登壇者も嬉しいですよね。

寺江さん:そうですよね。質問もすごく深くて、よく観てるなって思うことも多いです。あと「自分はこう思うんですけど」ってことを恥ずかしがらずに一生懸命話す人が多い。日本の俳優や映画、ドラマなどもよく知っているなあと驚きます。
昨年秋に石井裕也監督に深センと広州にゲストでご登壇いただいたとき、映画館で100人規模くらいのトークイベントをしたのですが、満席でみんなが次々に質問し、熱視線が監督に集中していて。監督は「(観客の)圧がすごい!」とびっくりされていました(笑)。そういう体験はなかなか日本ではないんじゃないかなって思います。あと昨年重慶では、現地の共催団体のボランティアスタッフに映画を学んでいる学生たちが多かったのですが、篠原哲雄監督がスタッフの学生に「どんな映画を撮ってるの?」と話しかけてくださって、学生に映画を撮るときのアドバイスをしてくださっていました。映画を届けるだけでなく、作り手の方と実際にお会いし、触れ合えるのが映画祭の良いところですから、映画祭を通じてそんな交流を積み重ねていければと思います。
お客さんに若者が多いこともあるんですけど、若者がこれからの世界を作っていくので、特に多くの若者に交流の機会を作っていきたいです。

一同:今日はありがとうございました!

取材日:2018年11月27日

 

今回の記事担当:おこめとパン
■取材しての感想
「こんなお仕事があるのか!」という発見と、世界各国にはそれぞれの価値観があるという当たり前なことを改めて実感しました。言葉と文化を超えた手段の1つに映画があることが映画ファンとして本当に誇らしいです。楽しいお時間をありがとうございました!

【前編に戻る】

 

国際交流基金の事業

日中映画交流事業は→1  

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映画業界人にインタビュー:国際交流基金 寺江瞳さん

映画業界人インタビューVol.12独立行政法人 国際交流基金 映像事業部 寺江瞳さん【前編】

今回は、エージェントのミミミと、おこめとパンが取材しました。2回に渡ってお届けします。

 

国際交流という視点でみた、映画の可能性

ミミミ:普段のお仕事としては具体的に何をされてるんですか?

寺江さん:国際交流基金というのは、外務省所管の独立行政法人で、美術や言語など文化を通して国際交流を行っている組織です。その中で映画を通じた文化交流として、映画祭の開催を中心に調整や準備作業などをやっています。全世界で年間100件以上を分担して担当しているので、複数同時に準備しています。多くの国では日本の大使館とか総領事館と共催しているので、現地での運営は共催機関のほうでやっていただいて、こちらでは随時進捗を聞いて、素材の準備、字幕制作やポスターやHP制作などの費用の支払いなどの準備をやっています。また、国交樹立〇〇周年など、節目の年には特定の国や地域で大きな映画祭を行います。こちらは私達で企画から素材手配、広報制作、ゲスト招へいや現地での運営まですべてこなします。今年度は東南アジア地域、ロシア、そして私が担当した中国で大きな映画祭を実施しています。

局長:海外の方とのやり取りで、英語だけではないと思いますが、言葉はどうされているんですか?

寺江さん:中国での上映に関しては、2017年の日中国交正常化45周年、2018年の日中平和友好条約締結40周年と記念の年でメイン事業になっていて現地とのコミュニケーションも多いので、一人中国映画事業専門スタッフがいます。英語圏だったら基本的に職員が担当しています。

局長:他の中東とかはどうなんでしょう?

寺江さん:基本的には大使館の方とのやりとりになるので、日本語がやり取りできますし、現地職員の方とは英語でやり取りをしています。スタッフはロシア語やフランス語などいろいろな言葉を話せる人もいますよ。

ミミミ:今のお仕事に就こうと思ったきっかけは何ですか?

寺江さん:私は大学卒業後10年くらい、全国紙の新聞社で記者をやっていました。取材をきっかけに、現代アーティストやキュレーターたちの面白い活動に出会い、彼らと行動を共にするうちに、アートの奥深さに興味を持ち、国内外のいろんな展示やイベント、アートスポットなどをリサーチしに行くようになりました。プライベートでアートイベントを実施したり、新聞社の中で文化の記事を発信したりと活動していましたが、ご縁があって2016年から国際交流基金に来ることになりました。新聞記者の時はずっと社会問題に接していた訳なんですけど、いろいろな立場の人々には、どうしてもわかり合えないものがすごくあるなと日々感じていたんです。そういったところで社会の常識や固定観念にとらわれないアートの可能性は大きいのではないかと思いました。新聞は社会をよくするために報道という形でいろいろな人や物事をつなぐ「メディア」ですが、人やアートをつなぐ文化事業に携わることも同じ目的で可能ではないかと考え、ここでのお仕事をやることにそんなに違和感はありませんでした。映画はミニシアター系などを中心に観ていましたが、専門的に勉強したこともなく詳しいわけではなかったので、映像事業部に配属となってからいろいろ勉強しました。お仕事を通じて、配給さん、映画祭を運営されている方、監督やプロデューサーさんなど、映画に一生をかけている方に出会い、その熱意に触れることで、いろいろな視点を学ばせてもらうことが大きいです。やっぱり映画っておもしろいじゃないですか。映画は誰でも観たことがあって、映画を嫌いな人っていないから、それはすごいことだと思いますね。あと、私は元々国際交流も好きで、自分の知らない世界を見たいっていうのが強かったので、記者、アート、旅、国際交流っていうのは自分の中では地続きで、自分の知らない世界を見ることで視野を広げ、新しいことを学びたいという思いが強かった。だからそういう体験をできる仕事を選んできたのかなと思います。

映画業界人にインタビュー:国際交流基金の活動ミミミ:中国で行われた日本映画祭の映画を選んでいる人は誰なんですか?

寺江さん:中国の共催者の意見も取り入れながら、私達で選んでいます。セールスとの関係もあって、何でも配給会社に頼めばオーケーしてくれるわけじゃなく、特に中国は日本映画がかなり売れているので、出品可能な作品から自分達の条件の中で選んで、なおかつ作品も良いっていうのを選ぶのが、なかなか難しいです。文化交流だからって日本を良く描いているものを選ぶ訳ではなく、日本で人気の作品、日本の今を映しているものを選ぶようにしています。例えば『カメラを止めるな!』は一般的にはマイナスな要素である低予算を逆手にとっておもしろいものを作りあげた例で、それが大ヒットして社会現象にもなっていますが、日本の独特な状況だと思うんですよ。中国は今結構大きな予算をかけたスペクタクル大作も多いですが、逆に日本は不況と言われている中、創造性によって優れた作品を生んでいる。“カメ止め”は、私達の映画祭でもいろいろな国で上映し、監督はじめゲストの方に現地に行っていただいています。映画には歴史や都市、食やファッション、言語などいろんな背景が詰まっているので、良い作品を紹介して国を超えて共感してもらうことが文化交流になると考えています。

おこめとパン:映画祭はどれくらいの動員があるんですか?

寺江さん:例えば中国の映画祭は若い方が多くて、特に女性が多いんですが、日本と一桁違うくらいで、昨年度実施した映画祭は計2万人以上が来場されました。

一同:ええ~~~!!!

映画業界人にインタビュー:国際交流基金の活動寺江さん:中国映画の映画祭を日本でも実施したのですが、約3千人だったので全然桁が違いますね。特に上海では、座席が1300席以上ある劇場もありますが、ほとんど埋まるくらい人気が高いです。今年度中国6都市で実施した上映会では、約1万8千人が来てくださいました。

一同:すごい!

局長:中国では映画館の数は増えてるんですか?

寺江さん:すごい勢いで増えていて、アメリカを抜いて世界一になっています。チケットも日本より安いですし、若い人にも娯楽として定着しているように思います。

ミミミ:今の仕事で一番楽しかったことは何ですか?

寺江さん:中国内で同日同時に3箇所で開催して、その中でゲストのスケジュールも複雑で大変だった時があったんですけど、現地で観客の皆さんの反応を見られて「こんなに満席になって、皆楽しんでくれて、監督もすごく手応えを持ってくれていて、やりがいがあるな」と思いました。毎回準備がすごく大変なんですけど、実際お客さんの笑顔を見た時に良かったなって思うという、その繰り返しですね。作り手さんも海外での反応にとても興味を持ってくださるので、海外展開の一助になればうれしいなと思っています。

取材日:2018年11月27日

 

今回の記事担当:ミミミ
■取材しての感想
就活まっただ中の私ですが、映画に関わる仕事も視野に入れています。その中で今回寺江さんのお話をお聞きできたのはとてもいい機会になりました。映画祭を運営していく側、ましてや外国で日本映画を紹介する映画祭を企画・運営する仕事っていうのがどんなものなのか。どんなことを思って開催しているのか。また映画祭の重要性なども聞けて新しい発見がたくさんありました。また、たまたま映画に配属になったとおっしゃっていた寺江さんですが、映画を制作している方の熱意を目の当たりにしてその手助けができればとおっしゃっていたのも印象深いです。私達が何気なく観ている映画や、海外の方が観る日本映画には映画制作陣や配給さん、もちろん映画祭企画運営の方々などの伝染していった熱意によって生まれているのだなと実感しました。

 

映画にまつわるお仕事って、本当にいろいろあるんですね!映画関係のお仕事をしたい学生の皆さんにとっては、間口が広がりますね。後半は寺江さんの学生時代のお話などもお伺いしています。→【後編を読む】

 

国際交流基金の事業

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アップリンク吉祥寺オープン20181214

映画業界人インタビューVol.11有限会社アップリンク 代表取締役社長 浅井隆さん【後編】

映画業界は衰退していない!業界が栄えるには…

ミミミ:総合的にいろんな方向で展開するにあたってメリット、デメリットはありますか?

浅井さん:デメリットはないよね、要するに映画のことを考えてればいいんで(笑)。映画のプロデュースの経験もあって、配給会社でもあって、渋谷に映画館があって、吉祥寺にも作ろうとしてるって、そんなに全部を考えている人って意外にいないのよ。アイデアがあればアップリンククラウドとかオンデンマンドみたいに自分達のサイトを持つこともできる。そこを全部自分の手で経験できるっていうことはおもしろい。全部自分でわかる範囲でできるし、やってることがぶれなければ、どんどんどんどん知識が貯まっていくので、メリットはあるけどデメリットはない。

アップリンク吉祥寺オープン20181214

2018年12月14日にオープンしたアップリンク吉祥寺

ミミミ:大変なことはありますか?

浅井さん:そんなにないんじゃないかな。

ミミミ:それは好きだからですか?

浅井さん:いや、「好きだから」ってそう単純に考えることは間違ってると思う。やり続けることは大変だよ。だけど、なんでダメなのかって考えてそこを直していけば、アップリンクくらいの規模の会社だったら、自分が反省すれば軌道修正できる。もちろん一緒にずっとやってきたスタッフが育ってきてるから、チームの力でやりたいこともできる。今アップリンク吉祥寺を作るってことでアルバイトを一気に20人くらい増やさなきゃならない。大きな会社だったら何でもない人数かも知れないけど、僕らは元々小さい会社でそこは大変っていったら大変だけど、自分の考えで軌道修正できる大変さかな。

アップリンク吉祥寺オープン20181214

局長:学生映画宣伝局のメンバーには映画業界に入って宣伝をやりたいという人が多いんですが、業界の方からは「厳しいよ」とか「儲からないよ」とか、だいたい共通していることを言われるんです。浅井さんは、そこのところをどのように感じてらっしゃいますか?。

浅井さん:俺はそれは間違ってると思ってて、うちも働き方改革で給与形態を見直したり、深夜までの残業も今年に入ってからなくしてる。給料が悪いとか大変だとか、架空の映画業界をイメージされてもね。もしそうだとしたら、そんな業界に入る必要ないし、全然夢がないじゃない。
だったらどこかの会社に入るんじゃなく、自分達で新しいことをやったほうが良いと思う。映画業界っていっても配給会社とか宣伝以外に、シネコンで働いてるアルバイトの人もいっぱいいる。宣伝っていっても本当に自分の好きな作品を宣伝できるかっていうと宣伝会社に入っちゃうと違うって思うこともあるだろうし。とはいえ、自分が何をやりたいのか、20歳ちょっとで見極めるのは難しいよね。

ミミミ&さおり:難しいです。

浅井さん:難しい。でも政治的にも経済的にもとにかく日本は閉鎖的だから、一旦海外に出るのはありかも。ただ、語学留学でどうしようもない帰国子女にはならないで欲しいんだけど(笑)。

ミミミ:雰囲気だけ持って帰ってくるような(笑)。

浅井さん:そう、うまいこと言うね。そういう人何十人も見てるから(笑)。

局長:浅井さんは買い付けに行かれた最初の頃、英語はどうされてたんですか?

浅井さん:いや、全然できなかったね。片言だった。でも売り買いなんか、喋れなくてもできるじゃない(笑)。

局長:権利関係の交渉とか、複雑なこともあったりしませんか?

浅井さん:契約書とかは一生懸命辞書を引いて、勉強して覚えるっていうのはやってたけど。

一同:スゴい!

局長:なんだか今日のインタビューでお話を伺って、今までいろいろ難しく考え過ぎてたのかなって思いました。業界が衰退しているというお話も含め…。

浅井さん:映画業界が衰退してるわけではない。映画業界っていう時に、ネットフリックスとかアマゾンスタジオを入れてないでしょ。映画業界が衰退してるって意味がわからない。それは全然新しいことにチャレンジしてない人の話でしかないと思うけど。

アップリンク吉祥寺オープン20181214

2018年12月14日にオープンしたアップリンク吉祥寺

ミミミ:映画業界はこれからこういうふうにしたら伸びるんじゃないかっていう浅井さんのビジョンはありますか?

浅井さん:吉祥寺は料金体系を変えました。シニアの反語って、ユースだよね。学割をやめて、一般は1800円、シニアは1100円、ユースは1300円っていう3つにしたのよ。ただアップリンクの会員になれば、ユース会員の人はいつでも1000円で観られます。だから、どうやれば映画業界が栄えるかっていったら、若者に映画を観てもらうしかない。

取材日:2018年11月27日

映画業界人にインタビュー:アップリンク浅井隆さん

今回の記事担当:さおり
■取材しての感想
多角的に事業を展開されていることもあり、情報収集の質に驚きました。フェイクニュースのお話にも触れてらっしゃいましたが、すべて鵜呑みにするのではなく自分で調べたり実際に足を運んでみることが大切だなと思いました。映画業界について大学でも小さい市場で衰退していることを学んでいたので驚きました。配給会社や劇場などいろいろな立場で関わり広い視点でみると様々な動きが感じられるんですね。また、アップリンクの配給作品のこだわりを聞き、メッセージ性が深いと思い、これまで配給会社によってそういった視点で作品を観たことがなかったのでとてもおもしろかったです。とっても魅力ある会社だなと感じました。

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映画業界人にインタビュー:アップリンク浅井隆さん

映画業界人インタビューVol.11有限会社アップリンク 代表取締役社長 浅井隆さん【前編】

今回は、エージェントのミミミと、さおりが取材しました。このインタビューは2回に渡ってお届けします。

 

配給会社は1人でも始められる! 

ミミミ:アップリンクを作られる前は何をされてたんですか?

浅井さん:高校を卒業後に東京に来て、“天井桟敷”っていう寺山修司さん主宰の劇団に入って、寺山さんが亡くなるまで10年くらい舞台監督をやってた。

ミミミ:どんな経緯で舞台監督になられたんでしょうか?

浅井さん:入って1年も経っていないうちに先輩がやめたから。

ミミミ:元々演劇に興味があったんですか?

浅井さん:当時、天井桟敷は海外で公演したり、日本の他の劇団とは違うセンスがあったかな。

ミミミ:元々東京に出られたのはどういう目的だったんですか?

浅井さん:大阪出身なんだけど、やっぱり東京に行ってみたいと思って。10年間劇団にいて、寺山さんも亡くなって、何か自分でやろうと思った時に、配給は時間はかかるけれど一人でもできるような仕事だった。もちろん全く一人じゃなく、友達とかアルバイトの人達に手伝ってもらってね。

ミミミ:そこで演劇ではなく映画にしたのは何か理由があるんですか?

浅井さん:寺山さんは映画監督でもあったので、彼が作っている映画にもスタッフとして参加してて、映画はそんなに遠い世界じゃなかった。

ミミミ:一人で配給なんて大変そうで、私からすると自分でやりたいと思っていても躊躇しちゃいそうですが。

浅井さん:天井桟敷は、どちらかと言うと自由に自分達が考えたことを表現できる劇団だったんで、会社に入ろうとは考えなかった。演劇でも場所を借りて公演をするわけで、それは舞台監督としてやってたんで、配給ならできるかなと思った。
今って一人で映画配給をやる会社っていうか、屋号をつけて活動していらっしゃる方もいて、配給は一人でもできる。ただ一人でやってる場合は誰かから少し資金を出してもらって請け負ってやるケース、宣伝費を最初にもらってやっているケースがある。映画配給の仕事と劇場の仕事って考えると、お金の流れで考えてみるとわかるんだけれど、例えばカフェだと、お客さんを呼んでコーヒーを売ったら現金収入がその場であるよね。仕入れたコーヒー豆は先に送ってもらって、仕入れ代金はたいてい後で払う。普通僕ら一般人はお店に行ってお金を払って買うけど、店は月末に締めて、翌月末に払う。ということは払うまでに仕入れて売り上げをたてればいいわけだよ。ところが、映画の配給って、もし本当に個人で映画を買い付けて、いろいろ宣伝をやろうと思ったら、宣伝費とか、あとスタッフのお給料、事務所があったら家賃、電話、コピー機のリース代とか先にお金が出ていく。入ってくるのは映画上映した後。だから、配給は結構大変だけれども、そういうことを僕はよくわからなかったから、とりあえず最初に映画を買い付けて、配給して、その上映収入が入ってくるまでは全然貧乏だよ。でも使ったお金プラスアルファがちょっと入ってきて、それを回転させてやっていけた。

ミミミ:お金の工面が結構厳しそうなイメージです。

浅井さん:厳しい、厳しい。

ミミミ:なのに配給会社をやっていこうと思ったのはなぜですか?

アップリンク吉祥寺オープン20181214

2018年12月14日にオープンしたアップリンク吉祥寺

浅井さん: 1987年にアップリンクを作ったんだけど、ちょうど時代的にミニシアターブームっていうのがあった。2人はまだ生まれてないでしょ?

ミミミ&さおり:はい。

浅井さん:そうだよね。今年で会社作って31年だから。今のアップリンクは40席とか、大きくて58席あるけど、当時は200席、300席とある劇場でも、ミニシアターって言われてて、僕からするとミニじゃないけどね。それがいくつかできてきて、館主が見せたい映画を1スクリーンで1作品、何週間も上映するスタイルがあったんだよ。それがミニシアターのやり方で、それぞれの個性があったわけ。業界の言葉だと単館上映って言って、1つの劇場で1作品しかやってなかったから、その映画を観たいならそれをかけている映画館に行くしかない。そういう状況があったので、アップリンクも映画を輸入して上映して、そこでうまく続けられたっていう状況があったかな。

さおり:その配給会社を設立させた後に劇場をオープンさせたんですよね。

浅井さん:ただ、劇場は配給と違って一人じゃできない。映画館は休みなく上映してるしね。お金の流れも配給とは全然違うけれど、やっぱり最初に映画館を作るっていうのはたぶんできなかった。最初一人で配給をして、それでスタッフが何人か増えて、今度は小さい場所を持とうってなったときにスタッフがいて初めてできたことかな。

さおり:その流れは元々視野に入れてたんですか?

浅井さん:元々外国の映画を日本で配給することが多かったんで、上映してもらうには映画館と交渉しなきゃいけない。そうすると、こちらがこの作品はおもしろいからお客さんが入ると思っていても、映画館はそう思ってくれなかったり。で1990年代、2000年代ギリギリまではミニシアターの時代だったんで、作品と劇場の個性が合う形にしようとすると、自分達で上映する場所が欲しいなと思った

アップリンク吉祥寺オープン20181214

2018年12月14日にオープンしたアップリンク吉祥寺

ミミミ:吉祥寺に新たに劇場をオープンしようと思ったきっかけは何だったんですか?

浅井さん:週末はアップリンク渋谷がだんだん満席になっちゃって、3スクリーンしかないから、お客さんにサービスがちゃんとできない。ビジネスとして、吉祥寺は都心でありベッドタウンでもある。そういう意味じゃチャンスはあるかなと。

さおり:いくつか候補があった中で吉祥寺を選ばれたんですか?

浅井さん:人口の推移を見て、人口が減ってないところ。そうすると東京なんだよね。これからシネコンは池袋に2つもできるし、たぶん品川と東京の間にできる新しい駅にもどこかのシネコンができると噂されてるし、渋谷ヒカリエの横にも109のシネコンができると言われてる。人口が増えてるのは都心なんで、都心はまだ映画館ができる余地がある。だって会社が渋谷にあるからずっと通ってるけど、若者が多いセンター街はずっと若者が多いもん。20年前も今も。

局長:吉祥寺と渋谷で一番違うところはどういう点ですか?

浅井さん:デパートの東急に皆自転車で来る。

アップリンク吉祥寺オープン20181214

2018年12月14日にオープンしたアップリンク吉祥寺

局長:その文化的な違いは、作品を選ぶ時にも変わってくるんですか?

浅井さん:平日の昼間はやっぱり主婦、子育て中の方、あるいはシニア層とかが、お客さんになるんじゃないかな。映画ファンだけじゃなくても、子育て中のお母さんとかはかつて映画を観てたけど忙しくて、新宿とか渋谷に電車で一本でも来ようとはなかなか思わないじゃない。でもスーパーに行くついでに2時間映画を観ることはお母さん達の生活のライフスタイルに入るんじゃないかな。
5スクリーンあるんで、もう少し多様な編成ができるよね。例えば夏休みとか、春休みは子ども用のアニメとか。

取材日:2018年11月27日

今回の記事担当:ミミミ
■取材しての感想
私が初めてアップリンク渋谷で観た映画が2015年公開の『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~』でした。それ以来、ファストファッションの洋服屋に行くと今でもこの映画が頭をよぎります。それ以降も基本的に私はアップリンクにドキュメンタリー作品を中心に観に行っています。アップリンクで観る作品からは、毎回、劇場を後にする時に何か頭の中に重しを詰め込まれたような、そんな強烈な衝撃をくらいます。今回、浅井さんとお話をさせて頂いて一番印象に残ったことは、「社会と繋がっている映画をやっていきたい」とおっしゃっていたことです。映画は、元気のない時の特効薬であるようなエンターテインメント性もありますが、私達の知らない、気づいていないようなことを教えてくれる、考えさせてくれる側面も多く持っています。ただ目に映すだけではなく、自分で考え、消化し、一生自分自身のカラダの中に残っていくような映画を上映するアップリンク。そこに込められた思いを聞くことができ、とても嬉しかったです。

 

とにかくパワフルにいろいろなことにチャレンジされているアップリンク。後編では今の日本の映画業界についての浅井さんのお考えなどをお聞きしています。若者が鍵だそうですよ!→【後編を読む】

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映画業界人インタビューVol.10 映画コラムニスト ジャンクハンター吉田さん

映画業界人インタビューVol.10 映画コラムニスト ジャンクハンター吉田さん【後編】

大人の社交辞令を逆手に取り、ファミコン雑誌編集部に遊びに行ってバイトをゲットした恐るべき高校1年生

ジャンクハンター吉田さん:もう1つ自分の転機があったんです。その転機になった人が、元GAGAで、今はメディアコンテンツ研究家と名乗っている黒川文雄さん。黒川さんがGAGAで映画の宣伝マンをやっていた時に、ホラー映画のイベントを新宿のシネマミラノでやって、1989か90年くらいだったかな。『バスケット・ケース』っていうカルト映画があって、フランク・ヘネンロッターっていうニューヨークにいる映画作家を呼んでイベントをやったんです。その時に黒川さんが、舞台に出て、キャパが300名くらいのところで、すごく熱意たっぷりに映画の宣伝トークをして、お客さん達を沸かせてたんです。そんなのは初めて見たから「なんなんだ、この男は!」って思って、こういう宣伝も大事で、喋りも大事だし、やっぱりイベントでの喋りって必要なんだって思って、すごく影響を受けました。自分の中では追いかけなきゃいけない人だなって思って、映画業界に入った時には、黒川さんはまだGAGAにいたんだけど、ある日GAGAを辞めて、セガ・エンタープライゼスに就職されたと知って、ゲーム業界でも名前が出てくるのかなと思ってたら、予想が的中して「やっぱりこの人ってただ者じゃないな」と思った。その後しばらくして、ゲーム関係の人に「昔から黒川さんの大ファンだったんだよね」って話したら紹介してくれて、一緒に食事したんですよ。それから今も仲良く関係が続いています。

一同:え〜!すごい!

映画業界人インタビューVol.10 映画コラムニスト ジャンクハンター吉田さんジャンクハンター吉田さん:もう1人自分のDNAに入っているのは、淀川長治先生。25か26歳の頃に、会社の人から、ヤン・デ・ボン監督のディザスタームービー『ツイスター』の完成披露試写会に行ってこいって言われて、淀川先生の隣りに座ることになったの。こんな大御所の人が隣に座っていても、自分はまだペーペーでこっちから喋りかけるわけにはいかなかったんだけど、隣からすっごく目線を感じるわけ。そしたら、「おい、お前いくつだ?」って言うから、「まだ25です」って返したら、「年齢を聞いてるんじゃない!」って怒り始めて、「体重を聞いてるんだよ!」って言われて(笑)。

一同:ハハハハハ!

ジャンクハンター吉田さん:「体重ですか…、95キロです」って答えたら、「あと5キロ増やしてこい。100キロになったら俺が面倒見てやるから」って言われて。頼んでもないのにどういう意味だろうって思って、「え?意味わかんないですね」って言ったら、「飯食わしてやるから。お前、飯食うの好きだろ?どうせお前金とかないだろ!映画業界なんかな、金とか儲からないところだからな」っていう映画業界の話をいっぱい喋り始めて。そんなこんなで、一緒にご飯を食べたり、映画の観方を教えてもらうようになって、その時に映画宣伝マンとしてプロモーションをやっているだけだと、自分の素の部分が出ないなって思ったの。もともと定時制高校1年の頃に、宝島社の前身のJICC出版局っていうところに入ったんですよ。ファミコン全盛期だったので、そこでファミコン攻略本の仕事をしたり、隔週でファミコン雑誌を出版していた編集部の一番底辺で働いてたの。その時はまだ15歳で、自分で原稿はなかなか書かせてくれないわけで、とにかく雑用ばっかりさせられて。ゲームの攻略本を作る時は、ある程度テキストを書いてそれを写植屋さんに持って行ったりして、国語の点数は悪かったけど、文章の書き方は先輩達を見てすごく勉強になった。で、自分が映画の宣伝をやり始めた時に、文章力が必要になったんです。映画のプレスシートの原稿を書いたり、リリース文も書かなきゃいけないから、絶対必要になったのね。そういうのをやらされて、どんどんどんどん自分が叩き上げで原稿を書くようになったんですよ。そういう話とかを淀川先生にしたら、「お前は独立したほうが良いんだよ。今のサラリーマンで、月に15万じゃ割に合わないだろうから独立して、30を超えればきっと何とかなるだろ」みたいな話になって。「お前がフリーランスで物書きをやるんだったら、いろいろ教えてやる」って言われて、すっごくいろいろ教えてもらって、資料とかも「この辺にあるやつ好きなものを持って帰って良い」って言われて、大量に持って帰って。そこから、自分の中で黒川文雄さんから影響を受けた宣伝マンの仕事とは別に、もう一つのレールに乗っかっちゃったんですよ。文章を書く仕事の大事さを知ったのは、淀川先生のおかげなんです。淀川先生と2年間くらいの濃厚な時間があって、先生には「おれは弟子なんかとらないけど、お前が最後の弟子みたいなもんだ」って言われたんだけど、自分なんかを弟子だと語るのは恐縮でございますみたいな話で。でも、自分の中では、映画の宣伝としては元GAGAの黒川文雄さん、物書きとしては淀川長治先生のDNAが入ってるんです。この2人の影響はやっぱりすごく大きい。

おこめとパン:ファミコン雑誌の編集部にはどうやって入ったんですか?

ジャンクハンター吉田さん:中学を卒業して、たまたまその雑誌の編集後記に、「遊びにいらっしゃい」みたいなことが書いてあったから、ゲームをやりたくて遊びに行ったんですよ。「遊びに来いって書いてあったから遊びに来ました」って言ったら、「本当に遊びに来るやつがいたんだ」みたいな話になって。

局長:吉田さん、そんなのばっかりじゃないですか(笑)!

ジャンクハンター吉田さん:その時に知り合ったのが、今はゲームアナリストって名乗っている平林久和っていう人だったんですよ。平林久和さんは、自分の中で最初の先輩です。行く前にかけた電話を彼が受けてたから、「本当にお前来たんだ。お前いくつだよ?」って言われて、「中学卒業したばっかりでまだ15です」って言ったら、「若いなー!」って皆珍しがって、「じゃあ若いから食えるよな、ラーメン」って言われてパッと机を見たら、カップ麺が50個くらいあったのね。そのカップ麺っていうのが、お湯が必要のないアルキメンデスっていうカップ麺で。

一同:へえ〜。

ジャンクハンター吉田さん:「コレ、編集部に山ほど届いちゃってさ。消化できないから50個食ってくれないか?」って頼まれて。これはとんでもないところに来ちゃったなって思いながら、それを食べたんだけど、25個くらいでギブアップしたのかな。半分は食べないと根性を見せられないと思って。でもそんなに食べるとは思っていなかったらしくて、当時編集長だった井上さんや平林さんが、「こんなに食ったから、編集部にあるゲーム好きなだけやっていいよ」って言ってくれて、そこでずっとピコピコやって。定時制高校だったから、17時半には行かなきゃいけなくて、「すみません、16時半になったので学校に行きます」って言ったら、「え!普通の昼間の高校をサボって来たんじゃなかったのか?」って言われて、定時制高校に通ってるって話したら、「じゃあうちでバイトしないか?」ってことになったの。平林さんにそう言われて、井上編集長経由で唯一の15歳のバイトとして入って、そこで写植とか、雑誌編集とかものすごくたくさんのことを学んだ。自分の中の師匠一番手が平林さんで、2番目は黒川文雄さん、3番目は淀川長治先生。人生で5人は師匠が現れるって言われているんだけど、この3人は自分の中で絶対的存在なんです。あと、人生の先輩ではチャック・ノリス先生がいるので、あと1人って誰が現れるのかなって。この人生の中で、残りの1人が誰だろうって、ワクワクしながら生きているんですよ。

取材日:2018年6月1日

 

今回の記事担当:おこめとパン
■取材しての感想
お話がとにかくディープ(笑)!刺激的な内容だけでなく、惜しみなくご自身の知識や経験を伝授してくださるので、吉田さんこそ”師匠”という印象でした。「何事も行動、そして恐れない!」を信条に、私も壁をぶち破っていきます。

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映画業界人インタビューVol.10 映画コラムニスト ジャンクハンター吉田さん【中編】

プロレスラーをやりながら、映画宣伝の仕事。そして、CGの専門学校へ

ジャンクハンター吉田さん:日本に帰ってきて、ハリウッドでの体験から格闘技の道に進みたくなっちゃって、プロレス界に入ろうと思ったんですよ。それでプロレスの道に進みつつ、1991年、当時住んでた新大塚から行ける場所でバイトできるところを探してたら、株式会社現代(現在は“株式会社現代マーチャンダイズ”)っていう、映画のプロモーションの仕事をやってる会社を見つけて。当時の時給が820円くらいで「安っ!」って思ったけど、修行のためにと思って、面接を受けたんだよね。面接には映画業界に入りたいっていう人がたくさんきていて、皆スーツだったけど、バイトの面接だしというのもあって、自分だけ短パンに半そでで行ったんですよ。ちょっとアメリカナイズされてたから、おかしくなってた(笑)。結局80人くらい面接を受けてて、3人採用の中に入れられて、なんで自分が選ばれたのか不思議だったけど、最初の仕事が『ターミネーター2』で、そんなにでかい仕事があるんだと思った。それから『ターミネーター2』の仕事をやりつつ、ジャッキー・チェンの『ツイン・ドラゴン』っていう映画のプロモーションをやったり、東宝との仕事が多かったね。プロモーションとして、配布用、劇場販売用のキャラクターグッズの企画とか、いろいろとやり始めて、そうしてる間に、自分はまだ20歳で会社で1番若かったので、東宝東和のプロモーション会社に行けって言われて、東和プロモーションっていう会社で下積み生活を始めたんです。映画のチケットを管理している会社で、当時、東宝東和は20世紀フォックスとか日本ヘラルドのチケットの管理をしてたの。でそのチケットの営業を手伝わされたり、飲食店とかを回って、B2ポスターを貼ってもらったり、ポスターをラミネートフィルムで加工して看板を作って、店先に置かせてもらったり、営業なんかしたことがなかったから全然わからなかったけど、いろんなところへ行って、まず喋りを鍛えさせられて、これがタモリ倶楽部で見ていた、喋りを鍛えるってことなんだなと、自分のなかでの挑戦と思ってやってた。そういういろんな仕事をして、映画の宣伝をやった時はおもしろかったですよ。27歳の夏で会社を辞めるまで毎月15万で、生活がすっごくきつかったけどね。でも、やっぱ人生って修行が大事だと思うし。

局長:それと同時にプロレスラーをやってたんですよね?

ジャンクハンター吉田さん:その時に、アニマル浜口ジムに入って、プロレスの練習もし始めた。

一同:うわ!ヘビー!

映画業界人インタビューVol.10 映画コラムニスト ジャンクハンター吉田さんサン:そのときにジャンクハンターって名前が付いたんですか?

ジャンクハンター吉田さん:ジャンクハンターっていうのはまだ。ジャンクハンターって名乗り始めたのは1997年かな。フリーライターとしての道をスタートする時に、ジャンクハンター吉田っていう名前で活動し始めたんですよ。その後2000年に、プロレスをやって欲しいってすごく頼まれて、その時ライターネームの“ジャンクハンター吉田”のまま、プロレスとか格闘技を始めちゃって。でも、それまではずっとアマチュアでしかやってなくて、プロとしてはやってなかった。48歳でジャンクハンター吉田って、どうなのかなって思うけど、自分でもこの歳までこの名前で仕事してると思ってなかった(笑)。

一同:ハハハハハ!

ジャンクハンター吉田さん:20年ちょっとこの名前で仕事してて、一回この名前を捨てて、“吉田みやん”って名前にしたけど、仕事がこなくて、ジャンクハンター吉田に名前を戻したら一気に仕事がきたっていうね。絶望感を味わいました。名前は変えちゃいけないって思った。まあそういっても映画業界って、もともとお金が儲からない仕組みになってるんだなって、すごく学んじゃって。で、1998年に、デジタルハリウッドっていうCGの専門学校に退職金で行ったんですよ。CGクリエイターになるつもりはなかったけど、フリーのライターとして活動していきたいなと思って。あと1997、98年って、CGブームがくるっていう黎明期だったんですよ。その時にまた修行したいなと思って退職金の80万を全部注ぎ込んで、お茶の水にあるデジタルハリウッドに行って、半年間CGを学んだけど、知識が欲しかっただけだから、就職活動はしなかった。就職活動をしてたら、今の自分はいなかったですよ。でも、その知識のおかげで、ゲームクリエイターとも仲良くなれるし、ハリウッドのCGクリエイターともすごい仲良くなれる。

おこめとパン:それはどうやって、そういう方々と繋がったんですか?

ジャンクハンター吉田さん:取材です。ライターでここまで詳しいやつはいないって皆に言われる。クリエイターはそういう人間を喜ぶわけですよ。ウェルカムって感じで「飲み会やるから来ない?」って言われたり、アメリカに行って取材した時には、今度紹介したいやつがいるからって言って、CGクリエイターを紹介してもらったり、ILM(インダストリアル・ライト&マジック=アメリカの特殊効果の制作会社)の人を紹介してもらったり。それでいろいろ広がっていって、その80万は自分への投資だったけど、役に立ったよね。普通のライターじゃわかんない知識がいっぱいあるって言われて。

取材日:2018年6月1日

吉田さんのこれまでのご経験があまりにドラマチック過ぎて、3回の連載には収めきれないのですが、まだまだ“ドラマ”は続きます!
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映画業界人インタビューVol.10 映画コラムニスト ジャンクハンター吉田さん

映画業界人インタビューVol.10 映画コラムニスト ジャンクハンター吉田さん【前編】

今回は、エージェントのサンと、おこめとパンが取材しました。このインタビューは3回に渡ってお届けします。

高校生で『ロボコップ』前売り券50枚の束を買い占めた!

サン:今まで映画にまつわるお仕事をいろいろとされていますが、ご職業名は何と書けば良いでしょうか?

ジャンクハンター吉田さん:そうか。映画コラムニストが主軸だよね、今はね。たぶんこの映画コラムニストっていう肩書きが、“最終駅”だと思うんですよ。これまでは映画の宣伝マン、ライター、ジャーナリスト取材とかをしてきたけど、1つの作品について「語ってください」「記事を書いてください」っていうオファーがすごく多くなっちゃって。需要がどれくらいあるかって自分ではわからないけど、例えば『レディ・プレイヤー1』だったら、普通はスピルバーグ推しだったりするけど、敢えてそうせずに、脚本家の目線という独自の切り口にしたり。具体的にいうと、「脚本家が実は80年代の映画が好きで、ゲームが大好きで、ゲームのドキュメンタリー映像まで作ってるザック・ペンっていう人で…」とか、そういうアウトサイドの切り口からコラムをやってくれって言われるわけ。王道なら誰でもできるけど、僕は王道じゃないところを切り口にするから需要がある。隙間産業ですよ。結局、畑を耕してるところはいっぱいあるけど、遠くの畑までは耕せないんですよ。だからやっぱり自分としては、メインストリームじゃなくアウトサイドのほうから、遠くの畑を耕すほうが、作品を柱として自力で支えてるような気がして好きなんです。それは映画の宣伝も同じで、メインストリームは誰だってできます。なんでかというと、お金を投入すれば、広告を打てるしCMも出せます。でも、お金を投入しないでどうやって限られた宣伝費でやるのか、頭を使って考えなきゃいけないとなると、王道で宣伝できない。だからアウトサイドから、遠くの畑を耕すやり方で宣伝していく。それが僕がホラー映画の宣伝ばっかりだった理由です。

局長:私が吉田さんに出会ったのも『テキサス・チェーンソー』の宣伝をされてた時でしたもんね。ほんと、宣伝、ライター、ジャーナリストと、いろいろされてて、ゲームもすごく詳しいですよね。

ジャンクハンター吉田さん:幅広くやってきたっていう部分で、肩書きを特に重要視しないで、この業界で生きてきてっていうのがあって、それが根底だよね。肩書きがあると、それだけ仕事の幅が狭くなるなと思って。だから名刺に肩書き入れてないでしょ。肩書きって、すごくこの業界で重要視される部分なの。でも肩書き入れないと、「こういう仕事できますか?」ってオファーが来るの、フリーランスだから。いや、できませんって断るときもあるけど、7割はできる仕事が多い。クライアントがある程度ネットで調べて、この人ならこういうことができるかなって思ってオファーしてくるの。フリーとして生きる道はそこだよね。

サン:では、定番の質問なのですが、この業界に入ろうと思ったきっかけを教えてください。

ジャンクハンター吉田さん:映画業界の話に限定しちゃっていいんだよね?

局長:はい、大丈夫です。

ジャンクハンター吉田さん:“タモリ倶楽部”っていう番組を80年代に観てて、当時は映画宣伝マンが月に1回くらい出てきて競い合ってたわけよ。それを観た時に、映画の宣伝マンって、喋れないとダメなんだなって思ったの。で、俺だったらこんな風にもっと喋れるのになって、自分で勝手にシュミレーションしてたのが高校生の時かな。それから1987年に、ポール・ヴァーホーヴェン監督の『ロボコップ』を試写会で観て衝撃が走って、これは自分が考える映画の教科書だと思ったの。こんなに最後まで沸かせるような、これはもう自分の中の王道の王道で、無人島に絶対持っていきたい映画だなって。定時制の高校に行ってて、バイトでお金をいっぱい貯めてたから、このポール・ヴァーホーヴェンってよくわかんないけど、映画の業界に入れれば、この人にきっと会えるかもしれないなと思って、映画のチケット屋に行って、前売り券を全部くださいって言ったの。

『ロボコップ』

一同:ええー!!

ジャンクハンター吉田さん:「全部ですか?!」って言われて、「全部です」って答えて(笑)。その時自分は高校生だったから学生として普通はそんなに買えないじゃない。でも、まだチケットが誰にも買われてなかったので、50枚つづりが1束あって、「すいません。これ50枚一束ください」って言ったら、「一束ですか?!」って聞かれたから、「いや、これ本気です」って言ったんだよね。そしたら、そこの人達が “なんだかよくわかんない若者が『ロボコップ』のチケット50枚を買おうとしてるらしい、なんなんだこれ?”ってざわざわしてたけど、現金で買って。当時の銀座プランタンのプレイガイドの人達の中では伝説になってるかもしれない(笑)。

一同:いや~すごい。

ジャンクハンター吉田さん:やっぱりね、この業界に入る時の熱量が大事なんですよ。“タモリ倶楽部”に出てた映画宣伝の人達が熱量ないなと思って、あれは反面教師でしたね。やらされてる感があって、この作品を本当に心底愛してない状態で宣伝してるな~っていうのが伝わってきちゃって。宣伝マンだから仕方なくきてるのかなって、ブラウン管越しだったからそういう風に感じたのかも知れないけどね。でも、いつか映画業界に入ったら、自分は熱量100パーセントでぶっぱなすしかないなと思った。『ロボコップ』でうるっとくるのもおかしいかも知れないけど、試写会で観た時も号泣して、自分だけしか泣いてなかったけど、17歳の時かな。劇場公開してからビデオリリースを待てずに輸入版VHSも買って、「この道に進んで『ロボコップ』を担当したら、こうやって宣伝するのにな」って考えたり、いろいろ自分の頭の中でシュミレーションしてました。それでね、定時制高校で4年制だったので、卒業する間際、映画の仕事とか漠然とした状態だったけど、アメリカに行ったんですよ。『ドラゴンへの道』っていうブルース・リーの映画があって、ハリウッド俳優であり、空手家のチャック・ノリスをこの作品で観て、「この俳優すごい、胸毛むしられてる。なんだすげえ!」と思って、彼を好きになっちゃって。マーシャルアーツ本とか空手本とかもういろいろ調べまくったら、見つけたんですよ、住所を!チャック・ノリス道場って書いた、空手着を着たチャック・ノリス先生の写真が載ってたから、「これだ!」と思って、渡米して道場を訪ねたんです。で入門させてもらおうと道場に行った瞬間に、たまたまチャック・ノリス先生がいてね。

一同:ええー!すごい!

ジャンクハンター吉田さん:これはもう逃せないと思って、なんとかハリウッドで仕事ができるかも知れないって勝手に妄想が膨らんじゃって、何の経歴もなく、何の手土産もなく行って、「あなたの作品”THE WAY OF THE DRAGON”を観ましたよ。ブルース・リーではなく、あなたのファンになりました。あなたのジャンピング・バック・スピンキックは本当に強いんですか!?」って、片言の英語でペーパーを持ちながら喋ってね。でも「本当に強いんですか?」って聞いたもんだから、それを向こうが道場破りと勘違いしちゃって。

一同:アハハハハ!

ジャンクハンター吉田さん:これはまずいなと思ったけど、道場生達に囲まれちゃって、カラテもレスリングも、格闘経験なんて何もない人間が、でっかいサンドバックっていうかキックミットっていうのを持たされて、「歯を食いしばれ」みたいなことを言われて。チャック先生が「本当にいいのか?」って聞いてきたけど、全然言葉がわかんないから“Welcome”って言ったら笑い始めちゃって、3,2,1と数えた後、ボーンっとジャンピング・バック・スピンキックをくらったんです。吹っ飛ばされて、3回転くらい転んだのかなあ。

局長:漫画みたい(笑)。

ジャンクハンター吉田さん:そしたら道場生達が「なんだ、この日本人は!」ってなって、一気にそこで皆爆笑し始めたの。それまで道場破りが来たと思われてすごい空気だったけど、その後に皆笑いながら近づいてきて、「お前のキックミットの持ち方がおかしいんだよ」とかダメ出しされて、そこで一気に雪解けして、仲良くなったの。それでチャック先生に「お前は本当に何しに来た?クレイジーだな」って言われて、「いやあ感動しました。キック食らって回転したけど、あなたは本当に強かった」って、なんだか気持ち良くなっちゃって、感動して泣いてたら、「泣く必要ないだろ」って言われて、「観光ビザだから3か月間、ここで道場生としてやりたい」って話して、入れてもらったんだよね。道場にはどっかで見たような映画プロデューサーとか、俳優とかが来るわけ。やっぱチャック・ノリスってすごい人なんだって思い始めて、アメリカでは格闘家としても有名だし、俳優としても有名なんだなって、余計尊敬を抱いちゃって。だから、そこで練習してて、白帯のくせに試合に出たいっていう欲求が出てきちゃったんですよ。

局長:なんか運命に導かれてる感がすごくありますね。

ジャンクハンター吉田さん:チャック先生は映画の撮影があるから1週間とか10日に1回しか来てないらしくて、「お前はラッキーだ」って言われた。直接指導は、本当に1週間とか10日に1回、みっちりと教えてくれるんだけども、その間も自分達は本当もう底辺だから、道場の隅々を磨いたり、下積みをやらされたんですよ。でもそこにハリウッドの映画人がいっぱい来るから、ミーハー気分ですごくドキドキするわけ。でもビザが切れるので帰国したんだよね。

今回の記事担当:サン
■取材しての感想
私の想像を超える破天荒で濃密なエピソードに、仰天するばかりのインタビューでした!難しいことをいろいろと考える前に、自分の直観に従って行動を起こすことが大切だと感じました。ありがとうございました!

取材日:2018年6月1日

映画化されても良さそうなくらい、ドラマチックな人生を送られている吉田さん。次回も濃厚なお話をお聞きしています!→【中編を読む】

 

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翻訳家:菊地浩司さんインタビューに見せて頂いた資料

映画業界人インタビューVol.9 翻訳家(ACクリエイト株式会社 代表取締役会長) 菊地浩司さん【後編】

映画は、文化を輸入する役割がある

局長:今みたいにインターネットとかですぐ調べられない時代は、知らないものが出てきた時にどうされてたんですか?

菊地さん:聞く!

一同:アハハハハ(笑)。

菊地さん:例えば、LPD【Los Angeles Police department】とか、Highway Patrolとか、警察の種類もいろいろあるでしょ?日本と警察の組織が違うから、わからないとドラマ自体がわからなくなっちゃう。となるとそれは調べなきゃいけないから、知ってそうな人に聞く。それと同時に、日本語に翻訳しなくちゃならないから、日本の警察のことも知らなくちゃいけなくなる。例えば、日本の警察で“巡査部長”って偉い地位に聞こえるけど、実際は日本の警察の中では下のほうなんだよね(笑)。

一同:へぇ〜。

菊地さん:下から二番目くらい。そういうことが頭に入ってないと、上手に訳せないわけよ。

らいらい&mo:確かに。

菊地さん:あと、最近はあんまり使わないけど、“police”のことを日本では“お巡りさん”、悪く言えば“お巡り”って言い方をしてて、私服の“detective”は刑事でしょ。でも日本では刑事はデカとも呼ぶ。そうすると、“お巡り”とか“デカ”って、良い言葉なのか悪い言葉なのかわからないまま使って、警察から怒られちゃうと困るから、警察に問いあわせて「“お巡り”って言い方をしても良いですか?」って聞いたりしてね。

一同:へぇ~〜(笑)!

菊地さん:わからないことが多いから、警察や自衛隊とかには、よく電話しましたよ。あとアメリカの地方検事って田舎の検事だと思ってたら、選挙で選ばれる、その地区で一番偉い検事なの。日本では検事を選挙で選んだりしないけど、アメリカでは州知事みたいな地位なんだよね。そういうのが頭に入ってないと、訳す時に間違えちゃう。

局長:それは、やりながら学べる部分と最初から知ってないとできないことがあるんですか?

菊地さん:最初は知らないから、出会う度に知っていく。

局長:なるほど~。実は、moは翻訳家を目指しているんです。

mo:はい…やりたくて、今日来ちゃいました(笑)。

菊地さん:おお~(笑)。

局長:彼女のように、翻訳家になりたい人はどんな準備をしたら良いでしょうか?

菊地さん:英語がすごくできる人達が増えたけど、実はそんな必要でもない(笑)。TOEIC満点でも、翻訳で使う英語とはギャップがあって、英語を読み込む力っていうのかな。トライアルというか、ちょっと例題を出してみるね。

翻訳家:菊地浩司さんインタビューに見せて頂いた資料

デスクから紙を取り出してきて見せてくださいました。

菊地さん:これ、映画の翻訳じゃないんけどね。それほど難しい単語は書いてないけど、おおよその意味はわかる?

’I still miss my ex-husband, but my aim is improving. ’

mo:まだ前の夫に未練があるけど前を向いて行くわ…?

菊地さん:うーん…、みんなそうやって訳しちゃうんだけど、実は全然違うんだよ。このaimっていうのは狙いって意味で、ここにあるmissっていうのは、それに対する言葉なの。

一同:あ~!

菊地さん:「私はまだ前の旦那に弾をあてることができない」、“miss”は、「打ち損じる」って意味。もちろん未練があるって意味もあって、ここではダブルミーニングで使われてる。

mo:そっちの意味か!

菊地さん:「だけど、私の狙いはだんだん良くなっていってるわよ」って言ってるわけ。

らいらい&mo:難しい~(笑)!

菊地さん:決して難しいわけではないんだけど、みんなひっかかる(笑)。でもこの言い回し、ネイティブはすぐ理解できるんだよね。

局長:言葉の組み合わせからも意味を読み取るんですね。

菊地さん:そうそう。でもこの“miss”を“寂しい”って訳しちゃうと、次の文が訳せなくなっちゃう。

らいらい:そういう感覚は、海外で生活して触れていくことで養えるんですか?

菊地さん:いや映画のセリフに触れてれば大丈夫だよ(笑)。映画のセリフってこういうの多いんだよ。

一同:へぇ~~!

菊地さん:一見単純な話し言葉のようだけど、脚本家が一生懸命頭を使って考えてるから、単純なセリフじゃないことが多い

らいらい:そっか~。

菊地さん:字幕なんか無くてもわかるって言う人がいるけど、そんなに簡単ではないぞ~って(笑)。

局長:なるほど。じゃあ逆に、DVDとかで日本語で聞いて、英語の字幕で観るというのも良いんですかね?

菊地さん:英語の勉強だったら良いんだよね。イアン・マクレガーって友達がいるんだけど、知る限り日本語を英語に訳すのが一番上手。彼の訳した日本映画を字幕つきで観ると、「ああ、(英語で)こう言うんだ~。なるほど」って。

局長:マクレガーさん、覚えておきます!

翻訳家(株式会社ACクリエイト代表取締役会長) 菊地浩司さん菊地さん:あとはね、日本語の感覚。英語ができても大事なところを見落とすと、映画がつまんなくなっちゃう。できないのが普通なんだけど、自分の英語に自信を持たないことも大事。

mo:自信を持たない?

菊地さん:わからないって思った時には、わかる人に必ず確認すること。わからない度に必ず確認する。たぶんこうだろうって思っても、確認する。特にこういう大切なところはね。

局長:ユーモアのある言葉を、ユーモアがあるように訳すのも難しいですよね。

菊地さん:だから今度は日本語のセンスが必要になるわけよ。大体意味はわかってて、日本語でなんて言えばいいかわからない単語はどうすれば良いかなとか、それこそ字幕は字数制限もあるし。

一同:確かに。

局長:翻訳者になりたいなら、翻訳の勉強ができる学校に入ったほうが良いということはありますか?

菊地さん:我々の時代はそんな学校はなかったからなぁ。僕は法学部で英語なんて関係なかったし、ただ多少、学生時代に会話はできたかな。一つは、日本語の練習をしたほうが良い。ピカソみたいな絵を描く人も、デッサンがめちゃくちゃ上手で、ダリとかも若い時からすっごく上手なんだよね。だから、日本語のデッサンみたいな、本当は俳句でも短歌とかでも良いんだけど、例えばこの部屋を文で表してみるとか。それも自分のために書くんじゃなくて、誰かが読んだ時に、この部屋を思い浮かべられるように、表情とか動かないものをいかにイメージできるか、文章で書く練習をする。そうすると、表現力がつく。

局長:ほぉ~。

菊地さん:日本語の翻訳は一つの表現だから、そういう言葉のデッサンで練習しておくと、こういう時はこう訳せば良いっていうのが自然と身についてくるのね。だから日本語のデッサンをしておくと良いよ。英語は後からでも良い

らいらい:今まで訳して一番おもしろかった、楽しかった作品はなんですか?

菊地さん:うーん…、よく言うんだけど、『スタンド・バイ・ミー』かな。まだ若い頃にやった作品なんだけど、主人公と同い年で、映画の中に出てくるいろいろなシーンがほんとに自分の若い頃と同じで、小学校の頃の夏ってあんな感じだったよな~って思えた。自分で翻訳しながら共感できたんだよね。

局長:逆にぶっとんでるというか、意味がわかりづらい作品も、それはそれで楽しいんですか?

菊地さん:言えません(笑)。でもまぁコメディはおもしろいよね、一番難しいんだけど。

局長:ダジャレとか、英語で韻を踏んでいる言葉を、日本語でも韻を踏んで訳しているのが、いつもすごいなと思います。

mo:本当にすごい。

菊地さん:映画って長く残るから、いつ観てもおもしろくしなきゃいけないんだよね。

mo:10年後、20年後に更新していくんですか?

菊地さん:そういうことがあまりないから難しいんだよね。今風の、時代ウケする訳をしても良いんだけど、僕が良い映画だなって思うのは、10年後、20年後の人が観てもウケるように訳しているもの。それはどっちが正しいとかではないんだけどね。

局長:さじ加減がすごく難しそうですね。2時間の映画だと、翻訳のお仕事はどれくらい時間がかかるんですか?

菊地さん:ピンキリだけど、机に向かって翻訳してる時間は4日くらい。

局長:もうほぼ缶詰状態ですかね。

菊地さん:まあ8時間くらいずっとかな。僕と戸田さん(戸田奈津子さん)なんかは早いから、4日くらいでやって、その前後に試写をやったり、ずっと翻訳だけしてるわけではないから、だいたい全部で1週間くらいで終わるのかな。一番多く翻訳してた頃は、年に50本翻訳してたから、1週間に1本のペースでやってたかな。

一同:えぇ~、すご~い!

菊地さん:当時はビデオがなかったから、3回映画会社に行って観るのよ。一番最初に観て、机に向かって翻訳して、2回目はその原稿と映画を付け合わせて、あとはラボで字幕を入れてもらって、最後に字幕の入った状態で観る。40本やるとしたら、120回は映画会社に行って映画を観ることになるから、その間に時間をみつけて翻訳するわけよ。

らいらい:すごいな~。

mo:では、最後にどんな人が翻訳者に向いてますか?

菊地さん:戸田さんを筆頭として石田康子さん、松浦美奈さんとか、今劇場公開の映画を翻訳している人達はみんな基本明るいよね。おしゃべりが好きで、じーっとしてるより、明るい人が多い。

mo:お会いしてみたいです。

一同:ありがとうございました!

今回の記事担当:mo
■取材しての感想
とても気さくで、お話の上手さが印象的でした。思わぬところで翻訳に挑戦させていただきましたが、やっぱり、英語の読み込みや制限内での置き換えは難しい…。だけどそれ以上に楽しく、興味深いことばかりで、さらにやりたいという気持ちが強まりました。他の翻訳者さん達の話もおもしろくて、今回お話を聞けて良かったです!ありがとうございました!

取材日:2018年7月6日

【前編に戻る】

AC クリエイト株式会社

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翻訳家(株式会社ACクリエイト代表取締役会長) 菊地浩司さん

映画業界人インタビューVol.9 翻訳家(ACクリエイト株式会社 代表取締役会長) 菊地浩司さん【前編】

今回は、エージェントのらいらいと、moが取材しました。2回に渡ってお届けします。

今は普通に使われている言葉には、翻訳がきっかけのものも

ごはん:この業界に入ろうと思ったきっかけや、このお仕事に就いた経緯を教えてください。

菊地さん:全く成り行きで、映画の字幕をやるなんて考えてなかった。大学を出た1970年当時は、アンダーグラウンドな日本のお芝居とかがすごくおもしろい時代だった。寺山修司とか唐十郎とか、歴史に名を残すような人達が登場して、全体的に熱気のある時代で、僕は何となく隅っこでその真似をしてました。就職しないでブラブラしていたら、新宿で映画喫茶を作った大学の先輩に声をかけられてね。映画は本来、映画館で観るものだけど、その先輩がお茶を飲みながら観られる場所を作りたいと言ったんです。
とはいっても、フィルムが手に入らないでしょ?当時はビデオもない時代だからね。アメリカでは家庭用の16ミリフィルムっていうのがあったんです。それをその先輩がアメリカから輸入して、喫茶店で流して見せるっていう話だったの。ただしちゃんとした映画はやっぱり手に入らなくて、チャップリンとか、サイレント映画を最初に持ってきた。サイレント映画はセリフはしゃべらないんだけど、幕間に文字が出る。アクションだったら、「この野郎」とかって。アメリカの映画だから英語で書いてあるので、それを日本語にしなきゃいけないわけ。そのサイレント映画に日本語字幕をつけた、っていうのが僕の一番最初の字幕かな。
それをやってくうちに今の映画、トーキー映画もやっていこうかってことになって。当時トーキー映画に字幕を入れるラボがあったから、そこに行って「字幕翻訳ってどうやってやるんですか?」って教えてもらって、最初は真似ごとで字幕を始めた。これが1番最初に字幕の翻訳をやるようになったきっかけです。で、ちょうどサイレント映画からトーキー映画を翻訳するようになった頃に、日本の会社が16ミリの外国映画を輸入して流すっていうのを始めて、「16ミリの映画を丸ごと翻訳しているやつがいるぞ」って、そういうところから仕事をもらうようになって、16ミリの翻訳を始めたんです。映画館で公開する映画はヒットするものもしないものもあるけど、ヒットしないなら捨てちゃうから、16ミリになるってことは基本良い映画、名作が多いんです。だから16ミリ時代に良い作品にたくさん出会って、名作に傷つけてすいませんって感じだけど(笑)。

一同:いやいやいや!

局長:その時代は劇場公開されるのは邦画がメインだったんですか?

菊地さん:アメリカ映画がいっぱいありましたよ。第二次世界大戦で日本が負けたあと、アメリカは日本人の頭の構造を変えようと、アメリカ映画を大量に持ってきたの。だから戦後はそういう専門の配給会社があって、そこはアメリカのフィルムを集中的に入れて、映画館で流してた。日本人も文化に飢えてたから、アメリカの映画を観て感動して喜んだらしい。僕は終戦直後のことは知らないけど、時代としてはそんな感じだったらしいね。その後、ヨーロッパの映画もたくさん入ってきて、イタリア映画だと『鉄道員』、フランス映画だと『禁じられた遊び』とか、名作がたくさんある。もう少し時代が後になってくるけど、フランス映画では二枚目のアラン・ドロンとか、ジャン・ギャバンっていうすごく渋いスターもいるんだけど、これがフィルム・ノワールって言われる、ギャング映画で大ヒットしたんです。あの頃はヨーロッパ映画が大ヒットしてたし、アメリカ映画ももちろんすごかったし、その後、1960年代くらいはマカロニ・ウェスタンがすごく流行った。クリント・イーストウッドなんかはマカロニ・ウェスタンで大ブレイクしたの。

一同:へぇ〜〜〜〜!!!

菊地さん:マカロニ・ウェスタンっていうのはイタリア製のウェスタンって意味なんだけど、実はそれは日本人が作った言葉で、日本人はイタリアのものはマカロニだと思ってるじゃん(笑)。でもアメリカでは、スパゲッティ・ウエスタンって言ってた。

mo:似たり寄ったりですね(笑)。

局長:急に翻訳家が必要になる時代があって、翻訳家の方も増えたんですか?

菊地さん:終戦後、アメリカ映画がたくさん入ってきて、それでも翻訳家は4、5人だったかなぁ。

mo:4、5人!

菊地さん:もうちょっといたかも知れないけど、主に表に出て活躍している先生は4、5人だったかな。天才だよね。清水俊二っていう先生がいて、東大出身で、経済学部だったけど、ずっと翻訳をやって、宝塚の人達と仲が良かったから、先生の周りには宝塚の女優さん達が集まってて、すごく羨ましかった(笑)。

一同:あはははは。

菊地さん:あと我々がこの人天才だなって思っているのが、高瀬鎮夫(たかせしずお)先生。この先生は英語だけじゃなくてフランス語も堪能で、ラボに行くと、辞書も持たずに台本だけを見て翻訳してるんだよね。試写を一回観ただけで、音も画もない台本だけを見て訳してるのに、実際に映画と字幕を合わせるとぴったりなの。

一同:へぇ~~~~!!!!

菊地さん:でも朝っぱらから、麦茶を飲んでるのかと思ったらウイスキーを飲んでたね(笑)。「菊地君も飲みますか?」って言われるけど、「いやいや結構ですって」言ってたね(笑)。

局長:ハハハハ。個性的な方が多いですね!翻訳家はただ英語ができるだけじゃなく、限られた文字数で訳さないといけないし、意訳を好まないファンもいるし、気の利いた訳だったら話題になることもありますが、翻訳のセンスって、ある人とない人の違いってどういうところにあるんでしょうか?

菊地さん:違いはあることはあるかもね。何を上手いとするかは時代とともに変わると思うけど、ダメな場合もある。つまんないというか、言葉が巧みな人の翻訳と、真面目な人の翻訳の違いかな

局長:正しい日本語に忠実な方と、ちょっと意訳をしてでも雰囲気を伝えられる方の違いって、どういうところですか?

菊地さん:忠実な人ってあまりいないと思う。英語に忠実ということは、意味をきちんと訳すということにはならないから、あたかも辞書通りの訳は、言葉としては言葉足らずでだめなんだよね。英語のニュアンスをどのくらい残すのかってことと、その雰囲気、そのセリフの持つ気持ちっていうか。そういうのをどう出していくかは、人によってさじ加減はありますよね。

局長:それは作風で「この作品だとあの人が合いそう」とか、頼む側の方もだんだんわかってくるんですか?

菊地さん:映画の配給会社が「この作品はこの人だろう」って思って仕事を出すこともあるけど、映画会社によって違うから必ずしもそうではない。ただ、俺なんかだとラブストーリーを頼まれることはなかったの。「俺もラブストーリー大丈夫だよ」って言ったけど、「嘘つけ!」って言われた(笑)。

局長:ハハハハ。これまで担当された作品は、アクションが多いですよね。

菊地さん:アクションばっかり。

局長:ご自身でやっていておもしろいジャンルや、作品の傾向はありますか?

菊地さん:う~ん。でも、ラブストーリーは自分でやっていても、わかんなくなっちゃうの(笑)。

らいらい:アクションとラブストーリーとで、翻訳の難しさってどう違うんですか?

菊地さん:アクションにもいろんなアクションがあって、特に最近のものはSFが多いでしょ。例えば“スター・ウォーズ”は実在しないから、それはそれで、新たな言葉を考えなきゃいけない。有名なところだと“フォース”って言葉があるでしょ。この言葉を昔、岡枝慎二先生が“理力”って訳した。そしたらそんな日本語はないって週刊誌で散々叩かれて、今はカタカナで“フォース”って書くし、それでわかるようになったけどね。

一同:確かに!!

菊地さん:ラブストーリーは日常を描いている作品が多いから、言葉を新たに作ることはあまりなくて、そういう意味ではラブストーリーのほうが生活に近いのかも知れないね。

局長:このセリフの女心がわからないとかって、ないですか(笑)?

菊地さん:もうね、そんなのばっかり(笑)。1回だけね、ジェーン・オースティンっていうイギリスの19世紀の作家の名作で『いつか晴れた日に(原題:Sense and Sensibility)』っていうタイトルがあってね。何を間違えたか、僕に依頼がきたの。イギリスの18世紀か19世紀かを舞台にしていて、主人公が三姉妹。それに、男が一人。三姉妹だから、僕には女性皆同じ言葉になっちゃうわけ。でも、3人ともキャラクターが違うから、それじゃ本当はだめなわけで、一人ひとりしゃべり方も違わなくちゃいけない。男だったら、3人出てきたら3人全部違う言葉を使えるだけど、残念ながら、三姉妹はわからない(笑)!

局長:たしかにそうですよね。

菊地さん:逆に女性の翻訳家だったら、男3人皆同じような言葉になっちゃうんだよね。

mo:難しい。

菊地さん:日本語は特にそういうところがあって、主語も日本語は山ほどあるでしょ。英語は全部“I(アイ)”って言うけど、日本語は“私”“僕”“俺”って、全部雰囲気で変えていかなきゃいけないから、それは英語だけ読んでもわからない。“猿の惑星”の時は、この猿のIは、“俺”なのか“僕”なのか、“私”なのかって、猿の顔を見ながらすごく悩みました(笑)。

一同:あははは(笑)。

mo:そういう時は、映画制作会社の方と話し合ったりせず、翻訳家の方が決めるんですか?

菊地さん:とりあえずはね。でもそれを観て、「これはこうじゃないですか」っていうのが出てくれば、また考えるけど、基本は翻訳者が決める。

一同:へ〜。

局長:ちょっと演出家の要素が必要ですね。

菊地さん:ハハハハ。でも逆にいうと、その雰囲気を読み取ることだよね。

局長:となると、どっちの文化もわかってないと訳せないですよね?

菊地さん:うん。翻訳者っていうのは、例えばアメリカと日本があって、間に橋があるとすると、そのどこに立っているか、つまり橋の真ん中なのか、アメリカ側なのか、日本側なのかによって訳し方が全然変わってくるわけ。橋の真ん中に立っているっていうのはあんまりなくて、実はどっちかに立ってる。今は日本と外国のギャップがすごく少なくなってきて、いろんなものが大体わかる。だけど、例えば“ルートビア”って、って日本で聞くとビールかなって思うけど、向こうだと子ども向けの炭酸飲料なんだよね。で、その時にどう訳すか。カタカナでそのまま“ルートビア”って訳すと自分勝手になっちゃうし、固有名詞だけじゃないけど、そういうことって年中あって、そのたびに悩むわけだよ。でも、その時点で日本人にはわからないかも知れないけど、とりあえず輸入する。輸入することに意味がある。
例えばね、『歴史は夜作られる』っていう名作があって、『タイタニック』みたいな話なんだけど、アメリカからフランスに初航海をする船上の物語で、主人公が名シェフなわけ。この人の得意料理がブイヤベースなんだけど、この映画が公開された時代(1937年公開)に、誰もブイヤベースなんて知らないんだよね。これは清水俊二先生が翻訳したんだけど、先生は“ブイヤベース”ってそのまま翻訳したの。でも映画で「あ~、こういうのなんだ」って皆が観て、ブイヤベースが有名になったの

mo:そこからなんですね。

菊地さん:だから映画は文化を輸入するっていう役割がある。

 

今回の記事担当:らいらい
■取材しての感想
いつも洋画を観る時は字幕派で、翻訳家の方ってすごいなと漠然と感じていましたが、菊地さんのお話を聞いて本当に様々な試行錯誤をして、文字をあててるんだなと思いました。貴重な裏側のお話が聞けてとても楽しかったです。ありがとうございました。

取材日:2018年7月6日

知って得したと思えるお話がたくさん飛び出し、私達は「へ〜」「なるほど」の連発でした(笑)。次回も映画ファン必見のお話がギッシリです!→【後編を読む】

 

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映画『十年 Ten Years Japan』杉咲花/太賀/川口覚/池脇千鶴/國村隼

映画業界人インタビューVol.8株式会社フリーストーンプロダクションズ 代表取締役 高松美由紀さん(海外セールス&宣伝)【後編】

海外セールスをやりたいなら、就職先は日本だけじゃない

サン:今までで一番楽しかったのはどんなお仕事でしたか?

高松さん:全部楽しいんですよ。だから何とも言えないですけど…。映画の宣伝だと、『あん』っていう河瀨直美監督の、樹木希林さんと永瀬正敏さんを起用して撮られた映画があって、宣伝的にもすごく転機になったし、あの作品に携わったことで、 “宣伝でカンヌに行く作品を手掛ける”っていうことが、会社の目標になりました。私達が手掛ける作品をレッドカーペットにのせるっていうのが目標だったんですけど、やっぱり河瀨さんの作品ということもあって、カンヌに行かせていただいて、樹木希林さんのような素晴らしい女優さんにいろいろ助けていただいて、ものすごく勉強になりました。興行収入1億円いったら御の字だねって言われていたのが、7億以上までいったので、そういう点でも結果が出せました。河瀨さんのような、世界の舞台で百戦錬磨に働いて、自分の好きなものを追求して、身を削っってエネルギーを注げる環境を作っている女性を目の当たりにして、すごく感激しました。そういう意味で映画って優劣はないですけど、映画祭の頂点であるカンヌ国際映画祭を経験できているのは、すごく大きかったです。あとセールスで言うと、TBSに入って1年目に、『NANA』という作品をアジアで公開させた時に、香港や韓国でもプレミアをやって、現地でレッドカーペットを敷いて、現地のメディアの取材も受けてっていう仕事をやったんです。現地の配給会社とコラボレーションして、ちゃんとお金をかけてプロモーションしたっていう経験のなかで、すごく大事なことを叩き込まれたなって。血尿が出たんですけどね(笑)。売るだけじゃなく、権利を管理するだけでもなく、海外の人と一緒に「いかに映画を当てるか」というローカライゼーションに取り組むっていう点で、いろいろな段取りで涙が出るくらい交渉して、仕事の難しさ、海外の方とのやりとりの難しさとかを目の当たりにしました。ただ、それがあったから、今回『十年 Ten Years Japan』っていう映画が実現できたんです。この作品に関わっているメンバーには当時出会った香港のメンバーもいて、それこそ香港のメンターみたいな方とも、その頃からずっと同じ業界でお仕事ができているっていうのは、すごくありがたいなと思います。

局長:本当にすごいですね!やっぱりいろんな国の方とそこまでの関係を築くには英語がかなり話せないとダメですよね?

高松さん:そうですね。でも万国共通で英語は必要なんですけど、それ以前に、たぶんキャラクターじゃないですかね(笑)?物怖じせずに、「これは嫌だ」「これはこうしたい」とはっきり言える人が強いですよね。私とかはまだ全然弱いですけど、こっちの要求を聞いてもらうための交渉をしつつ、向こうの意見も聞くっていう交渉力は、たぶん海外の方と話して培われたのかなって思います。

サン:では、学生の頃にしていて今の仕事に役に立っていることはありますか?

高松さん:そうですね。いろいろな言語を勉強するようにしてました。英語だけでなく、スペイン語もそうなんですけど、やっぱり相手が自分の国の言葉をしゃべってくれると、ちょっと安心するじゃないですか。だからそういうのもお返しとして、ちょっとでも言語ができるといいなと思って、機会があれば言語をまめに勉強するようにしています。

サン:それは高校生の頃からですか?

高松さん:そうなんですよ。親に言われたんですけど、高校生の時に、本屋さんとかに行っても、私一人だけ英語でしゃべってたらしいです(笑)。覚えてないんですけど。

サン・局長:え〜!

高松さん:完全におかしいですよね。塾にも行ってましたが、高校3年生の時なんかは、授業を抜けてアメリカ大使館とかにも行ってました。図書館とかがあったので、本を見たり、留学生との交流会に積極的に参加したりっていうのは受験勉強の代わりにずっとしてました。

局長:常に、“思ったらすぐ行動!”なんですね。学生の頃にアルバイトはされてましたか?

高松さん:アメリカ留学時に、日本料理屋さんで働いてたんですけど、ボストンだったので、ミック・ジャガーやアントニオ猪木さんとかが来てましたよ。

サン・局長:めっちゃ高級店(笑)!

高松さん:あと小さい大学だったんですけど、寮長をやってました。外国人初の寮長だったらしくて、言語の問題とか大丈夫なのかなっていうのはあったんですけど、酔っぱらって吐いた人の後始末をしたり、AEDの使い方を学んだり、夏に寮長チームが集まって合宿に行ったり。それで寮費がタダになったりして。寮では毎週末パーティーがあって、非常ベルが鳴って皆外に出されるんですけど、毎回それを写真に撮ったり、かなりいい加減にやってました(笑)。

サン・局長:楽しそう(笑)。

高松さん:だから学生のうちは、ほんとに好きなことやったほうがいいと思いますよ。

局長:考えるより行動ですね。

高松さん:そう、考えるより行動です。

サン:私はやる前に考えてしまうタイプなので、挑戦していける人が羨ましいです。

高松さん:挑戦とは思ってないんですよ、私とかも。選択肢が自分の中にあまりなくて、逆に悩んでる方っていろいろ選択肢が見えてるから悩めるんだと思うんですね。私の場合は選択肢が二択しかない。だから、AかBかに向かって突っ込んでいって、ドロまみれになることもある(笑)

局長:たぶん目的があって、そこにたどり着くまでに何回失敗するかだけの話で、早く正解にたどり着ければラッキーけど、失敗を選び続けても、最終的にたどり着ければ良いんですよね。とりあえず数こなすっていうかね。

高松さん:数をこなすと選択の仕方も磨かれてくるから、こっちで失敗したから、今度はこっちかなみたいに、選択の精度が高まってきますよね。

サン:失敗したくないから、挑戦するのもなるべく効率よく目的にたどり着くようにと思っていたら、結局すごく遠回りをしちゃったり、最初からあっちに突き進んでおけば良かったなって思うことは結構あります。

高松さん:学生の方に今私が言えることって、オールマイティーじゃなくても良いと思うんですよ。失敗しても、やったらやった分だけ、得意不得意って見えてくるんですね。得意なところは集中的に伸ばしたら良いし、不得意なところはそれを得意な人を自分の仲間につけるっていうのはすごく大事です。

局長:もし日本で海外セールスのお仕事に就くとしたら、どんな方法がありますか?

高松さん:うち以外にもセールスカンパニーはいくつかあるし、配給会社の国際部に入るとか、海外のセールスカンパニーに入るっていうのも全然ありだと思うんですよね。是枝監督、河瀨監督、黒沢清監督などの作品って、日本のセールスカンパニーでは扱ってなくて、フランスの会社が全部海外の権利を持っていっちゃうんですよ。そういう会社で人脈だったり、映画業界のビジネスルートをきっちり持っているところで勉強して、日本に戻ってくるっていうのもありかもしれません。

局長:日本の映画は日本の会社が売るってわけじゃないんですね。

高松さん:そうなんです。映画は国籍があるようでないので、就職先も日本にこだわらなくても良いのかなと。もともと映画は海外国内関係なく楽しみますよね。なのに就職先が日本だけっていう考え方自体がおかしくて、視野を広げるほうが道は開けると思います。

局長:あと海外セールスを仕事にするなら、こういう性格、こういう人が向いてるというポイントはありますか?

高松さん:出張が多いので、体力勝負というのがまず一つ。あと、セールスって契約とかお金の計算とかもやらなきゃいけないので、緻密な部分と、大胆に動いて判断するっていう二面性があるんです。その場で金額を聞いて、そのままシェイクハンド(契約締結)ってこともあるんですよ。カンヌでも、現地で盛り上がって、「この映画を買います」って言ってくれる人がいたら、セールスカンパニーはその人を捕まえたいがために、契約書を明日準備するんじゃなくて、その場にある紙ナプキンに作品名と日にちとサインを書いて、相手にもそこにサインをもらうっていうくらいの瞬発力が必要だったりします。そういう大胆さを持っている人のほうが、成功しやすいというか、楽しめるんじゃないかと思いますね

サン:私は今大学三年生で、就職先としては映画業界にも興味があるんですけど、新卒は募集自体が少なくて、でも興味がある人は多くて、狭き門になっていて。英文学科で英語にも興味があるので、海外も選択肢としてはあるのかなって。

高松さん:絶対あると思います。映画業界って、すごく閉塞してるんですよね。さっき言ったみたいに縁故じゃなきゃ入りづらいとか、中途採用しかないとか。それって結構映画業界の怠慢で、忙し過ぎて人を育てられないんですよ。だから新卒から入れちゃうと、会社の負担になっちゃうんです。映画の仕事って、なんだかんだですごく感覚的なところ、クリエイティブなセンスが重要だったりするので、そういう意味で一回社会人を経験して、人間の幅が広がっている人のほうが、映画しか知らない!という人よりも我々映画業界の人は興味があります。だから違うフィールドで勉強してから映画業界に入るっていうのはアリだと思います。

局長:感覚が違う方とか、新しい風を求める風潮もありますよね。キャラがおもしろいだけで重宝される場合もありますしね(笑)。

高松さん:そう!個性上等なんですよ。

サン:では最後に、好きな映画ベストワンは何ですか?

高松さん:ベストワンか。難しいですが、『クレイマー、クレイマー』かな。ダスティン・ホフマンが主演で、メリル・ストリープと共演しているんですけど、若い男女が離婚して、シングルファーザーになった主人公が子どもを育てていくっていう、ストーリー自体はそんなに起伏がないんですけどね。役者さんの演技だったり、すべてが胸に響くんです。あと『存在の耐えられない軽さ』は素晴らしい映画です。ジュリエット・ビノシュとダニエル・デイ=ルイスが主演なんですけど、それも役者さんが素晴らしくて、総合芸術としてとてもバランスが取れていて、そういう映画を観ると、気持ちが良いなと思います。

サン・局長:ありがとうございました!

今回の記事担当:サン
■取材しての感想
高松さんの行動力溢れるパワフルなエピソードをたくさん聞くことができ、楽しかったです!自分も負けていられないなと感じました(笑)。
これから就職活動をする上で、こだわりすぎないこと、選択肢を広く持つことというお話を聞けたので、どんどん自分からアクションを起こして、ぶつかっていけるようになりたいなあと思いました。がんばります!

取材日:2018年8月3日

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★フリーストーンプロダクションズが企画、製作から携わり、配給・宣伝する作品

『十年 Ten Years Japan』

映画『十年 Ten Years Japan』杉咲花/太賀/川口覚/池脇千鶴/國村隼2018年11月3日より全国劇場公開
公式サイト
エグゼクティブ・プロデューサー:是枝裕和
監督・脚本:早川千絵、木下雄介、津野愛、藤村明世、石川慶
出演:杉咲花/太賀/川口覚/池脇千鶴/國村隼
配給:フリーストーン

香港で社会現象となったオムニバス映画『十年』をもとにした、“十年 Ten Years International Project”の日本版。日本、タイ、台湾、各国5名の新鋭映像作家が独自の目線で10年後の社会、人間を描く国際共同プロジェクト。『万引き家族』で、日本人監督として史上4人目、21年ぶりのパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督が、初めてオムニバス映画の総合監修を務める。
©2018 “Ten Years Japan” Film Partners

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映画『フィフティ・シェイズ・フリード』ダコタ・ジョンソン/ジェイミー・ドーナン

映画業界人インタビューVol.8株式会社フリーストーンプロダクションズ 代表取締役 高松美由紀さん(海外セールス&宣伝)【前編】

【映画業界の方にインタビュー】第8弾は、エージェントのサンが担当。今回も2回に渡ってお届けします。

留学中に大好きな日本人監督の作品が観られなくて、今の仕事を志した

サン:海外セールスのお仕事の具体的な内容を教えてください。

高松さん:簡潔にいうと、日本映画を海外に広める仕事なんですが、世間一般的には、弊社はセールスカンパニーって言われる会社になります。日本では、セールスカンパニーっていう名称はあまり広まってはいないんですけど、海外では、映画業界の中で一番重要なポジションを占めていて、彼らがいなければ、映画は世界に配給されることもないですし、映画祭に出品することもできません。そういう意味では、なぜ日本ではセールスカンパニーがそれほど大々的にビジネスとして成り立たないんだろうって、不思議でしょうがないのですが、それがきっかけで会社を作りました。

局長:確かに日本では、セールスカンパニーって言われる会社はあまり表に出てきていないですね。

高松さん:そうなんですよ、それこそ是枝裕和監督、河瀨直美監督、北野武監督、黒沢清監督など、名だたる監督がいらっしゃるなか、昔は海外ではそういう日本映画へのアクセスが無かったんです。私はもともと伊丹十三さんの作品がすごく好きなんですが、『たんぽぽ』以外は普通のDVDショップ等でDVDを見たことがなく、海外留学をしていた時は最新の日本映画なども観られなかったんですよ。アメリカの片田舎には全然情報が入ってこなくて、日本映画を海外に出していくっていう仕事をやりたいなと思いました。海外の経験を日本に持ってきたという形です。

局長:いつ頃からいつ頃まで留学されてたんですか?

高松さん:高校を卒業して2週間後にはもう海外に渡って、語学学校を経て大学に行ったんですけど、その間にもアメリカからスペインやイギリスへ留学したり、留学システムにポーンと入ったので、寄り道して合計5年くらいいました。

局長:留学を決めたのは、何がきっかけだったんですか?

高松さん:ベトナムのベトちゃんとドクちゃんっていう、枯葉剤の影響で、身体がくっついたまま生まれてきた双子がいて、彼らが成長するにあたり、手術しなきゃいけなくなったんです。その手術ができる高度な技術を持っているのが日本の医療と言われており、確か日本とベトナムの医療機関の国交がちゃんと結ばれておらず、日本の医者が現地で施術できなかったんです。「なんじゃそりゃ!」と。それだけの問題で人の命が左右されるのかと思うと不思議な気がしていて、高校の頃に外務省に直接連絡して「おかしいと思います!」って訴えたことがあります。そこから、国連の職員になったら、そういうことが変えられるのかなと思って、高校の頃からはずっとアメリカに行きたいなとは思っていました。映画とは全然関係ない仕事を最初はしたいと思ってたんです。

局長:でもやっぱり日本と海外を繋ぐっていうところが、最初からあったんですね。

高松さん:そうですね。大学を卒業して、大学院のクラスを取っていた時に、学校帰りにボストンの小さな映画館で黒澤明監督の『羅生門』を観たんですね。周りのアメリカ人がすごく喜んで感動している姿を見て、「ああ、国境ってこんな風にすぐ超えられるんだ」って思って、映画の仕事をしようとすぐ切り替えて、東京FMが出版していた、エンタメ業界の名簿本を親から送ってもらいました。当時は個人情報の扱いも緩かったので(笑)。

局長:そうそう。企業がずらっと載った本、昔は売ってましたね!

高松さん:今となっては…なんですけど、その本に載っている映画業界の企業を一から全部あたりました。

局長:すごーい!

高松さん:留学中だったので、日本の就職戦線を全く知らないまま、アポなしで20枚くらいの履歴書持って、神戸の実家から帰国早々新幹線に乗って、全部映画会社を回ったんです。

サン:すごい…!

高松さん:その時に出会った、ある会社の人事の方に、「映画業界に入るんだったら、末端の宣伝を勉強したほうが良いよ」って言われて、その日に神戸に戻ってすぐに宣伝会社を全部当たって、全滅して。その方に「映画業界って縁故が多いから、君みたいな若い子は入れないよ」とも言われて、もう一周したので無理かなと思いましたが、宣伝会社をもう一回あたって、それでも空きがなければ諦めようって連絡したら、たまたま一か所、「今日、実は退職願を出した人がいるから、来週会いに来てくれますか?」って言われたんです。それで次の週にまた新幹線に乗って、その宣伝会社に行って面接して、その翌週から働き始めたんです。

局長:ドラマチック!

高松さん:ほんとに右も左もわからない状況でしたが、今考えたらよくやったなって思います。

局長:でも何も知らなかったからこそ、逆に良かったのかも知れないですね。

高松さん:そうなんですよ!人の意見を純粋に聞いていたので、迷いはなかったです。宣伝会社の社長に「君はガンダムが好きか?」って聞かれて、「シャアが好きです」って言ったら、「じゃあ採用!」って。入ったらすぐにガンダムの宣伝が待っていたっていう(笑)。失うものがないから、できたのかも知れないですよね。

局長:じゃあ最初は宣伝だけをやってたんですね。

高松さん:そう、でもその頃もやっぱり将来的には海外セールスをやりたいと思っていたので、その後いろいろ宣伝をやらせて頂いてから何年後かに、ちょうどTBSさんが『世界の中心で、愛を叫ぶ』っていう映画で約75億円の興行収入を記録したんです。日本の映画界でも、ちょっとした激震が起こって、その辺りから、日本映画も海外で売れるんじゃないかという機運が生まれて、(TBSの)今までテレビ番組を売ってた部署に、映画を売るチームを特別編成することになって、そこに入らせて頂いて。宣伝をやっていたことは、セールスの仕事にもすごく役立ったし、就活の際に言われたアドバイスは本当だったなと思いました。

サン:「宣伝から入って」っていうところですね。

高松さん:そう、間違ってなかった。その経験があるので、うちのスタッフには必ず全員一度宣伝をやらせるんですよ。

局長:なるほど。『世界の中心で愛を叫ぶ』をきっかけに転職されて、海外セールスも手掛けるようになったんですね。

高松さん:そうですね。その頃ちょうど、いわゆるテレビ映画って言われる作品の全盛期だったんです。それこそ『NANA』『日本沈没』『木更津キャッツアイ』とか、テレビから派生した映画を、テレビ局がお金をかけて作って、それがアジアでどんどん売れていたんです。一年後くらいに、日テレさんが本格的に『デスノート』『20世紀少年』などをバンバン海外に売るという時期があったので、その頃が一番アジアで日本映画のバブルがありました。

局長:その頃から、他にも海外セールスをやっていた会社はあったんですか?

高松さん:ありました。海外セールスって、実はずっと昔からあるんですよ。ただ、大手の映画会社さんでは、国際部がその役目を担っていて、例えば東宝さんの国際部が『ゴジラ』の権利とか、黒澤明監督作品の権利とかを管理しているんです。TBSさんが民放で初めてカンヌ国際映画祭の展示会で単独のブースを立ち上げて、そこからどんどん、いろんな会社さん、テレビ局さんが単独ブースを出すようになって、自身の映画を売るっていう仕事が本格化してきたという感じです。

取材日:2018年8月3日

本当にすごい行動力で、たくさん刺激を頂きました。まだまだ、濃厚なお話を聞いています。ぜひ続きをお読みください。→【後編を読む】

★高松さんが宣伝担当の作品

『フィフティ・シェイズ・フリード』

映画『フィフティ・シェイズ・フリード』ダコタ・ジョンソン/ジェイミー・ドーナン

2018年10月5日より全国劇場公開
公式サイト
監督:ジェームズ・フォーリー
出演: ダコタ・ジョンソン/ジェイミー・ドーナン/エリック・ジョンソン/リタ・オラ/マーシャ・ゲイ・ハーデン
配給:東宝東和

全世界で累計発行部数1億冊を越え、世界中の女性を虜にしたE L ジェイムズのデビュー小説を映画化した、“フィフティ・シェイズ”シリーズの最終章。本作は北米を含む世界54地域で初登場1位を記録し、全世界シリーズ累計興収は13億1900万ドル(約1500億円=1ドル113円換算)という大記録を樹立。超豪華なセレブ生活のキラキラと、王道ラブストーリーの究極版が楽しめる。
©2017 UNIVERSAL STUDIOS

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映画業界人インタビューVol.7 ぴあフィルムフェスティバル(PFF) ディレクター 荒木啓子さん【後編】

皆と同じことをやってたら絶対ダメ

局長:今年の作品にトレンドを感じる部分はありましたか?

荒木さん:応募作品を拝見する過程で、今年はこういう題材が多いねっていうのはありますけど、トレンドになるほど力のある映画はなかなかありません。ヒットするものって一つ突出してるんですよ。極端に言えば、人と違うことをやらない限り、良いものは生まれません。皆と同じことをやってたら絶対ダメ。どんな世界でもダメ。あ、それは過去の名作の名シーンをコピーしちゃダメとかのレベルの話ではないですよ。コピーは創作の基本ですからね。自分にしかできないことをやる、ってことです。そのことを、どうしてちゃんと皆はっきり認識してないのかなって思います。誰もが褒めるものは、創作においては、誰もがどうでもいいと思っているのと同義語なんですよ。それは本当に確かなことなので、皆さんも誰もが良いってものは、意識的に避けたほうが良いですよ。人生の毒になります(笑)。

局長:深い。

らいらい:では学生の頃にやっていて、今仕事に役立っている経験はありますか?

荒木さん:何もないですね。というのも、基本的に0から何かを作らなきゃいけない仕事なので、毎日毎日考えなきゃいけいないことがあって、過去のことで役に立つことはなくなっていくんですよ。常に何かを作るというのはそういうことで、映画監督も同じだと思います。毎日料理を作っていたら段取りがうまくなるとか、カンが育つとか、そういう慣れはあると思いますが、構築するってことに関しては、学生時代にこれをやっとけばということはないですね。ただ、今の学生ってがんじがらめじゃないですか。出欠や課題やカリキュラムや、息つく間がない。ただ学割があるとか、友達が見つけやすいとかそのくらいじゃないですか、学生の利点。本当に気の毒だと思います。例えば、入選した大学生からの「講義を抜けられないから出れません」とかの言葉に触れると、今の学生は全然自由じゃないと思うし、学生を自由にさせない空気がありますよね。

ミミミ:その言葉に救われます(笑)。

映画業界の方にインタビュー:ぴあフィルムフェスティバル(PFF) ディレクター 荒木啓子さん荒木さん:学生だからこそできることって言っても、現実的に日本ではレンジが狭いから、世界との競争力がない。あまりにも常識が違うから、世界に出た時に勝負ができない。そこの危機感を持ったほうが良いと思います。一体自分はどこの分野でどんな生活がしたいのかっていうイメージを独自に描いていくためにも、映画はたくさん観たほうが良いです。映画って、世界の状況がかなりダイレクトに伝わるから、将来官僚になるような学生は年間100本映画を観なくちゃいけないってなればいいと思ってます(笑)。想像力がない人はせめて映画を観ないとって。

らいらい:このお仕事は続けたいと思いますか?

荒木さん:続けたいっていうのはないですね。でも、「今回これがやれなかったから、次これをやらなくちゃ」って思っているあいだは続けていると思います。PFFという映画祭は「続ける」ってことが使命ですが、PFFディレクターという仕事は、続けることが目的じゃない。やりたいこととか、アイデアがないのに、このポジションにいたらすごく迷惑じゃないですか。あ、話変わりますが、そういう状況でも続ける上司のために、会社の人間関係で悩んでるとか、学校の人間関係で悩んでるとか、そんな悩みはすぐ捨てたほうが良いです。逃げればいいんだから。

らいらい:やりたいことをやるべき?

第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)最終審査員:佐藤公美/大九明子/佐藤信介/冨永昌敬/生田斗真

荒木さん:そう。絶対理解者がいるから。あらゆる人が“嫌なことを我慢しない”って決めた時に、そこにちゃんと自分の理想があれば、世の中はダメにならないと思ってます。理想がないから、こうなってる。

ミミミ:今まで出会った方で印象に残っている方はいますか?ずっとその方の言葉が残っているとか、ふとした時に言葉を思い出すとか?

荒木さん:ホウ・シャオシェンっていう台湾の巨匠がいて、『悲情城市』という映画があるんです。ぴあも制作に一部関わっている作品です。その作品のアフタートークでのホウ・シャオシェンの話がすごく素晴らしくて。そこに一つの物語ができあがっているというか、それを聞いた時に映画監督ってすごいなと思いました。監督は映画を作るだけで充分。さらに話さなくてもいいじゃないか、という方もおられますが、さらに話せるとどんなに素晴らしいかって言い続けてます。映画監督って素晴らしい人間で、並外れてるっていうことを、全身で表現する人であって欲しい。ホウ・シャオシェンはそれをすごく具体的に見せてくれたかなと思います。

 

今回の記事担当:らいらい
■取材しての感想
とてもカッコ良い女性で、お話していても興味深いお話ばかりでした。ぴあフィルムフェスティバル(PFF)もさまざまな視点で楽しめそうです。自分の将来についても考えさせられました。荒木さんのようにバリバリ仕事がこなせるような女性になりたいです!!貴重なお時間をありがとうございました!

取材日:2018年7月18日

【前編に戻る】

第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)

★ 第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)

会期:2018年9月8日(土)~22日(土)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ→こちら
公式サイト 
学生当日券は500円!

■今までの主なPFFアワード入選監督
黒沢清、園子温、成島出、塚本晋也、橋口亮輔、中村義洋、佐藤信介、熊切和嘉、李相日、石井裕也など

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学生映画宣伝局:2018プロジェクト打合せ

学生が主役のイベントを実施します!

実は、今年夏から秋に向けて実施のつもりで、この春から企画を練ってきましたが、いろいろな壁にぶつかり、「このままではいかん!」ということで、当初の内容からガラッと変えて、原点回帰し、イベントを実施することに決めました!

詳細はこれから急ピッチで決めて、準備を進めていきますが、イベント名や内容、日程、場所などは追って、随時情報を発信していきます。

ぜひ、応援よろしくお願いします!

学生映画宣伝局:2018プロジェクト打合せ

たまたま女子ばっかり(笑)。このプロジェクトには他に2名のエージェントがいます。


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第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)最終審査員:佐藤公美/大九明子/佐藤信介/冨永昌敬/生田斗真

映画業界人インタビューVol.7 ぴあフィルムフェスティバル(PFF) ディレクター 荒木啓子さん【前編】

【映画業界の方にインタビュー】第7弾は、エージェントのらいらいと、ミミミが担当します。今回も2回に渡ってお届けします。

目標は、満員電車に乗らなくて良い生活(笑)

ミミミ:この業界に入ろうと思ったきっかけと、どういう経緯で入られたのかを教えてください。

荒木さん:ある女性の映画プロデューサーから、女性だけで映画を作りたいので、アシスタントプロデューサーになってくれないかと言われたんです。で、「良いですよ」って。その仕事をやっている時に、映画の現場に来た方が、PFFの方達とすごく親しくって、なぜだか「絶対PFFに向いてるから、紹介するから会いに行け」って言われたんです。それまで、ぴあフィルムフェスティバルに熱心に通っていたわけではありませんでしたが、好きな監督の石井聰亙(現在の名称:石井岳龍)って確かPFF出身だったなと思って、彼に会えるかもってことで。ってのは冗談です(笑)。

一同:ハハハハ。

荒木さん:それで会いに行ったら、一緒に仕事をやりましょうという話になって、2年後にディレクターになりませんかと言われて、今日に至ります。ディレクターというのは映画祭の役職の専門用語で、やっていることはプロデューサーなんです。企画運営して、構築していくっていう。完成形をイメージして具体的にしていくっていう仕事ですよね。

局長:こういう映画祭の仕事が最初からしたいという若者がいた場合、そこに直接入るって方法はあるんですか?

荒木さん:どんな仕事も入りたい人はすぐ入れると思いますよ。別に全然敷居は高くないと思います。残念ながら衰退産業ですから(笑)。

ミミミ:ビッグネームになるかは置いておいてってことですよね?

荒木さん:というか、それが想像した仕事と同じかどうか。自分に向いた仕事かどうかっていうのはすごくあると思いますけどね。仕事内容の具体的なイメージがないでしょ?

ミミミ:確かに。

荒木さん:映画の仕事をしたいって言ったときに、何がしたいのかって実はよくわかってなかったりするでしょ(笑)?何がしたいですか?

らいらい:私は映画宣伝がしたいと思っているんですけど。

荒木さん:映画宣伝ね、本当に人がいないから、今日からでも仕事はありますよ。

らいらい:ほんとですか!?

荒木さん:いっくらでもありますよ。それで食べていけるかは置いておいて、今日からでも手伝ってくださいっていう人はいっぱいいます。って、今日はそんなインタビューじゃないですね(笑)。

一同:(笑)。

ミミミ:アシスタントプロデューサーをやっていらっしゃった頃は、プロデューサーを目指してましたか?

荒木さん:いいえ(笑)。私は求められる所には断らず行くんです。知らない世界だし、誰かの助けになるならやってみよっかなと思って、入った感じです。

ミミミ:気の向くままという感じだったんですね(笑)。当時、何か目標はありましたか?

荒木さん:目標はありましたよ。満員電車に乗らなくて良い生活(笑)。

局長:そこは大事ですね(笑)。

一同:(笑)。

第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)最終審査員:佐藤公美/大九明子/佐藤信介/冨永昌敬/生田斗真

第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)最終審査員:佐藤公美/大九明子/佐藤信介/冨永昌敬/生田斗真

局長:実際にこのPFFで荒木さんがやってらっしゃるお仕事の内容って、ざっくり言うとどんなことなのでしょうか?

荒木さん:すべてです(笑)。ざっくり言うと、PFFはどうあるべきか、そのために何をするかを考えて、実行することですね。

局長:今回で40回目とのことですが、変化したことはありますか?

荒木さん:変化っていうのは、時代や社会状況と共に起きることなので、自ら変化させようって思うのではなく、今この時にはこれが必要だっていう風にやっていくことだと思います。たぶん、意図的に今年はこうだからこうしましょうってものではなくて、10年くらい前を振り返れば、変化がわかる、という感じですね。映画ってその時代に根ざしてないと全く魅力が無くて。でもそれを超えて、強い力を持つものだけが歴史的に残るわけで、私達が欲しいのは、普遍的な力を持つ映画なんですけど、そういう映画ってどんなものなのかなって考えながら、同時に今しかできないことは何なのか、今必要なことは何なのかを考えていきます。PFFは自主映画のために始まったんですが、昔は映研(映画研究会)っていうのがあったんですよ。噂によると、映画研究会は、大学、高校、中学にもあったんですが、60年代から80年代くらいまでは、映画を作ることは一つの活動としてすごくかっこ良かったんでしょうね。だから、皆8ミリフィルムで映画を作ろうとしていたわけで、あらゆる大学に、映画を作る、観る、あるいは上映するっていう映画研究会が山のようにあった中で、天才的って言われる人達が出てきたんです。そういう時代には「映画監督」はもう、かつてのように映画会社での雇用はなくなっていた、つまり「職業」としての保証はないのに、映画を作ることに夢中になっていた人がたくさんいました。ぴあという会社は、そういう映画研究会にいた大学生5人が作ったんです。

一同:そうなんですか!

荒木さん:そうなんですよ。彼等は自分達も映研で映画監督を目指してたけど、どうやらあまり才能がないらしいということで…(笑)。だけど、映画がすごく好きで、毎日でも映画が観たいと思っていた時に、最初に東京中の映画と演劇とコンサートのスケジュールが載っている「ぴあ」という雑誌を作りました。想像するのは難しいと思いますが、当時はインターネットもなくて、新聞にすごく小さく、何の映画がどこでやっているかが載っているくらいで、あとは映画館に直接電話して聞くしかなかった時代です。その時に、「ぴあ」という雑誌が爆発的にヒットして、つまり、大学生起業家として成功して、このお金をどうしましょうっていった時に、映画祭をやりたいと思ったわけです。そこで自分達が天才だと思っている映画監督の8ミリフィルムで撮った映画を、映画館でちゃんと上映して、ちゃんとそれを多くの人に見せたいと考えて、ここからどんどんデビューしていって欲しいという映画祭を始めたんです。それが今も続いていて、最初のスピリッツは全く変わっていません。それを絶対にぶらさないで、いわゆる大成功している“スター・ウォーズ”のような映画も、無名の学生が作った映画も完全に平等で、映画は映画、映画を作る人は皆同じだっていうベースがあるんです。ベースが変わらないところが、PFFがこれだけ続いてるっていうことで、こんな映画祭は世界中どこを探してもありません。

 

今回の記事担当:ミミミ
■取材しての感想
PFFに去年一般審査員として参加してみて、商業映画じゃない映画でもこれだけ力があり、見応えがあるのかと感動したのは忘れられません。今回荒木さんに取材をして、ノミネート作品を全部観た時のあの感動は、PFFの方の熱い映画への思いや地道に丁寧に選考をしていくという手間のかかったものが、生み出している要因でもあったのかと、とても胸が熱くなりました。大学生が裸一貫から立ち上げた“ぴあ”という会社、PFFという映画祭がこうして今もなお映画制作に情熱を注ぐ若い人達に受け継がれているというのは、とても素晴らしいことだとも思いますし、これからもずっと続いていって欲しいと思いました。今回は「新人発掘」という視点での映画の話を聞けたことはとても興味深く、一つの経験にもなりました。荒木さん、たくさんの有意義なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。私も「満員電車に乗らない生活」目指したいです(笑)。

取材日:2018年7月18日

 

「ぴあ」創設のお話から、PFFの成り立ちまでお聞きして、映画を直接作るわけではなくても、映画に携わる道はいろいろあるのだなと思いました。とても豪快で明るいお話ぶりが印象的な荒木さん。後編も荒木さん節が炸裂です。→【後編を読む】

 

★ 第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)★第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)

会期:2018年9月8日(土)~22日(土)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ→こちら
公式サイト
学生当日券は500円!

■今までの主なPFFアワード入選監督
黒沢清、園子温、成島出、塚本晋也、橋口亮輔、中村義洋、佐藤信介、熊切和嘉、李相日、石井裕也など

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海外ドラマ『glee/グリー シーズン1』マシュー・モリソン/コーリー・モンテース/リー・ミッシェル/ジェーン・リンチ/ジェイマ・メイズ/ディアナ・アグロン

映画業界人インタビューVol.6 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン株式会社 マーケティング本部 山本一成さん【後編】

名だたる監督とすごく近い距離で仕事をしているという実感も

おこめとパン:今までのお仕事で一番楽しかった事は何ですか?

海外ドラマ『glee/グリー シーズン1』マシュー・モリソン/コーリー・モンテース/リー・ミッシェル/ジェーン・リンチ/ジェイマ・メイズ/ディアナ・アグロン

『glee/グリー』 全シーズン好評発売中&レンタル中 ©2011 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

山本さん:自分が担当したものでいうと『glee/グリー』かな。

一同:お〜〜!

山本さん:映画じゃなくてごめんなさい(笑)。以前は劇場公開後の新作も担当してたんですけど、海外ドラマ担当に変わった時、初めてに近い担当作品が『glee/グリー』だったんです。知識も経験もほとんど無いから、自分がどこまでチャレンジできるか、ずっと突き詰めながら取り組みました。当然、周囲の協力があったからこそ結果が残せたのだと思うんですけど、やっぱり思い出深い作品です。担当していて楽しかったし、今でも好きな海外ドラマに『glee/グリー』を挙げてくださる方も多いですし。

一同:確かに。

おこめとパン:では、今やっていらっしゃるお仕事全般的にいうと、どんなところにやりがいを感じますか?

山本さん:自分が携わったものが世の中にあって、それに対して良くも悪くも反応を見られることかな(笑)。そういう反応を少しでも良くしようと志して取り組むので、すごく良い反応があると、やって良かったって思います。

おこめとパン:反応を見るのって、ちょっと怖いと思う時もありませんか(笑)?

山本さん:アハハハ(笑)。ありますけど、だからこそ毎回自分の経験を思い出して、ちゃんとベストの環境を作ろうと考えられるんじゃないかなって思います。どんどん作品がリリースされるので、経験が積めるんですよ。ここは映画配給の方達と違うところだと思いますが、映画のDVDだと、毎月3作品というペースで同時進行していたり、海外ドラマでも、ちょっとタイトルを絞っても、1人で月2本を担当する状況もあります。

一同:大変そう。

海外ドラマ『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』スティーヴン・モイヤー/エイミー・アッカー/ナタリー・アリン・リンド/パーシー・ハインズ・ホワイト/ショーン・ティール/ジェイミー・チャン/ブレア・レッドフォード/エマ・デュモン/コビー・ベル

海外ドラマ『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』

山本さん:あとは、ホームエンターテイメントのおもしろさみたいなものはあります。特に外資系だと、世界各国の中で自分達のレベルをすごく意識できるんです。他の国の成績をシェアされるので、改めて日本ってすごいって思います。他国はほとんどDVDレンタルがなくなっていますが、日本にはまだあって、だからこそすごくおもしろい。あとは、企画を立てて、説明して、承認をもらってっていう、本国(アメリカ)の人達とのやりとりもすごくおもしろいです。それに海外ドラマって、本国のもとのビジュアルから、日本用のビジュアルに変えることが多いんですが、大物監督の作品は、承認をもらうために本人まで話が行くこともあるんです。自分で直接プレゼンをするわけではないですけど、直接やりとりをしているんだって感覚があります。最近だと、新しい“X-MEN”のテレビシリーズで『ギフテッド 新世代X-MEN誕生』という作品があるんですが、僕等がアメリカの本社に提出して、本社の人達がマーベル(“X-MEN”の著作元)にプレゼンして、承認をもらってくるんです。

一同:スゴい!!

海外ドラマ『X-ファイル 2018』ジリアン・アンダーソン

20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン最新作『X-ファイル 2018』

山本さん:それって、嬉しくないですか!スピルバーグが携わる作品なら、彼まで話が届くんです。“X-ファイル”だって、クリス・カーターまで話が行ったりね。そう思うと、なんだかすごく距離が近く感じるし、自分の存在がグローバルに感じますよね(笑)

おこめとパン:次に皆さんにお聞きしているのですが、それほど好きではない作品を担当される場合、どういう風にモチベーションを持っていきますか?

山本さん:難しいですよね。でも、好きになる努力はします。でも、一旦自分の中で好きじゃないと認めます。やっぱり、コンテンツホルダーにいて、作品に携わる立場としては、そこって必ずつきまとうところなんです。でも、何か好きになるポイントを1つだけでも見つけて、まずそれをもう1から100くらいの好きに変えていく。それは職種柄ではあるんですけど、いろんな違う要素を足して、なるべく自分も含め何万人という方が好きになるように仕上げるという感じですかね。あと、基本的に嫌いって言わないです(笑)。

局長:ですよね(笑)。

山本さん:だから、いろいろな方と話すと、「毎回良いって言ってるよね」って言われますけどね(笑)。でも、その時に、推しのポイントを明確にしておくと「ここがやばいんです」って言えますから。

TAKE:逆に、「なぜ自分は好きじゃないんだろう?」を突き詰めていくのもアリですよね?

山本さん:アリだと思います。ただ、そういう場合も必ず客観的になるように注意しています。主観で、強く周りを動かせる方ももちろんいますが、僕はそういう能力は長けていないと思うので(笑)。

一同:いやいや(笑)。

山本さん:毎回自分の頭の中でいろいろな方の考え方を想像するし、その作品を自分が気に入った時も同じです。「すごく好き!」って愛情が溢れすぎちゃうと、絶対空回りするんです。好きだからこそ見えない部分もできちゃうのが一番ダメなので、何度もいろいろやってきた経験上、俯瞰して見たほうが良いなって思ってやっています。

一同:なるほど。

TAKE:それでは、最後にずっと好きな映画ナンバーワンは何ですか?

山本さん:ナンバーワンは、『ノッキング・オン・ヘブンズ・ドア』です。男同士のロードムービーで、ドイツの映画なので文化の違いはありますが、自分としてはすごく感じることがありました。もっとわかりやすい作品でいえば、『君の名は。』にハマって、3回も観ちゃいました(笑)。スクリプトがしっかりしていて、自分が持ってないものに憧れるという感じで、音楽も良かったですしね。

一同:ありがとうございました!

今回の記事担当:おこめとパン
■取材しての感想
『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』の企画でお世話になった山本さんにインタビューさせて頂けたことが、すごく嬉しいです!企画中、迷っている私達にくださったご助言は、「こういう経験があったからなのか!」と感銘を受けるばかりでした。情熱を支える冷静さと、客観的に視点を変えることのできる姿勢はまさにプロフェッショナルです。何より、お仕事に対する自信がひしひしと伝わりました。単に「できる!」と思うのではなく、積み重ねてきた過程があってこそ自分を信じられる。それがすごく心強い存在になるんだと思いました。

取材日:2018年5月16日

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★20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 海外ドラマ最新作

海外ドラマ『X-ファイル 2018』デイビッド・ドゥカブニー/ジリアン・アンダーソン『X-ファイル 2018』
2018年7月18日よりDVD発売&レンタル中
公式サイト
製作総指揮:クリス・カーター
出演:デイビッド・ドゥカブニー/ジリアン・アンダーソン/ミッチ・ピレッジ
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

完全復活から2年。前作で世界記録を樹立した”X-ファイル”新シーズンが日本初上陸!FBI捜査官モルダーとスカリーが真実を求めて再び未解決事件に挑む、世界的メガヒット超常現象サスペンスの続編。
©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 

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『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』がきっかけでできたご縁に感謝