学び・メンタルヘルス

心理学から観る映画29:右脳と左脳ってそれぞれどんな働きをしてるの?

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ホムンクルス』綾野剛/成田凌

映画『ホムンクルス』を観ていたら、「あれ?右脳と左脳ってそれぞれどんな働きをしているの?」と気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は右脳と左脳の働きについて簡単にご紹介します。ただ、『ホムンクルス』そのものの解説というわけではなく、あくまで現実的な脳についてのお話です。

大脳半球は左右で形態は対称的だけど、機能は別々

右脳と左脳で働きが異なることは周知のことですが、具体的にそれぞれどんな働きをしているかというところから見ていきましょう。人間のみが持つ特殊な能力といえば言語機能ですが、失語症の治療、研究が左脳の特定の部位の働きを解明する糸口になりました。

岡田他(2015)によると、1861年、フランスの外科医ブローカは、失語症患者の死後の解剖によって、左大脳半球の前頭葉後部に脳梗塞による損傷を見出し、発話できない症例の脳損傷部位の検討を重ねた結果、人間は左半球で喋っているとの見解を1865年に発表しました。このような失語症をブローカ失語または運動失語と呼び、発話に重要な前頭葉後部領域をブローカ領域といいます。また、精神科医のウェルニッケは、饒舌に話すことができるが聞いた内容を理解できないタイプの失語症について、左半球の側頭葉上部に損傷があることを見出しました。このような失語症はウェルニッケ失語あるいは感覚失語と呼ばれ、発話の理解に重要と考えられている側頭葉上部はウェルニッケ領域と呼ばれています。

一方、右脳の機能は何かというと、視覚的には顔や複雑な幾何学パターン、聴覚的には非言語的環境音、音楽、体性感覚としては、複雑なパターンの触覚的再認、点字の認識、その他、非言語的記憶、方向感覚などを司るとされています。視覚において左脳は文字や単語を理解すると言われており、左視野からの信号は右脳へ、右視野からの信号は左脳へ送られるので、刺激方法を工夫することによって、左右の脳に別々の視覚刺激を提示することができます(岡田他,2015)。

映画『ホムンクルス』綾野剛

映画『ホムンクルス』で主人公は、右目を隠して左目で相手を見ようとします。左目で見たものは右脳へ信号が送られるということになります。映画のように、同一人物があそこまで全然違う姿で見えることは現実的にはあり得ませんが、脳の働きの構造を意識した設定ということはできるのかもしれませんね。でも頭蓋骨に穴を開けて何が起こるのかは、また別の話です(苦笑)。

<参考・引用文献>
岡田隆・宮森孝史・廣中直行(2015)「生理心理学 第2版―脳のはたらきから見た心の世界―」サイエンス社

映画『ホムンクルス』綾野剛/成田凌/岸井ゆきの/石井杏奈/内野聖陽

『ホムンクルス』
2021年4月2日より期間限定公開
PG-12

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

頭蓋骨に穴を開けるトレパネーションという手術をしたことにより、今まで見えていなかったものが見えるようになった主人公のお話。手術を受けた主人公ではなく、主人公が接する相手の心の病が取り除かれていくという設定がユニークです。

©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

Netflixオリジナルドラマシリーズ『ラチェッド』サラ・ポールソン

『ラチェッド』
Netflixにて配信中

ドラマREVIEW

ジャック・ニコルソン主演の名作『カッコーの巣の上で』に登場する看護師ラチェッドを基に描いたドラマで、物語の舞台は精神病院です。本作でも頭蓋骨に穴を開ける手術が出てきます。

『ハンニバル』
Amazonプライムビデオにて配信中(レンタル、セルもあり)
ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

ハンニバル・レクター博士は人肉を食べますが、まだ生きて話している相手の脳を開いて、調理する場面は衝撃的ですよね。でも、あのシーンを観ると脳の部位がそれぞれに違う働きをしているからこそ、あんな状態になるのだとわかります。

ハンニバル (字幕版)

TEXT by Myson(武内三穂・認定心理士)

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』 映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~【レビュー】

プペルを探しに行く話なのかなと予想していたものの、ストーリーの軸は意外な…

映画『鬼の花嫁』永瀬廉/吉川愛 鬼の花嫁【レビュー】

2020年に刊行された原作者クレハによる小説を映画化した本作は、あやかし(鬼、天狗、河童、九尾の狐など、超越した能力を持つ種族)と人間が共存する世界を舞台に…

映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』山田杏奈 山田杏奈【ギャラリー/出演作一覧】

2001年1月8日生まれ。埼玉県出身。

「宮﨑駿のパノラマボックス」メディア取材会、宮崎吾朗監督、鈴木敏夫プロデューサー スタジオジブリの新作映画は!?宮崎吾朗監督&鈴木敏夫プロデューサーが本音で語る宮﨑駿監督の近況【宮﨑駿のパノラマボックス】メディア取材会

スタジオジブリにて、このパノラマボックスに関する記者会見が開かれました。和やかな雰囲気のなか、パノラマボックスのお話、最近の宮﨑駿監督の様子など、貴重なお話をたくさんお聞きしました。以下、ほぼフルバージョンで掲載します。

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』峯田和伸/若葉竜也/吉岡里帆 ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。【レビュー】

写真家、地引雄一の自伝的エッセイ「ストリート・キングダム」を、田口トモロヲ監督が映画化した本作は…

映画『決断するとき』キリアン・マーフィー/エミリー・ワトソン 決断するとき【レビュー】

主演はキリアン・マーフィー、監督はベルギー出身のティム・ミーランツが務め、製作総指揮はベン・アフレック、製作にはマット・デイモンも名を連ねています…

映画『カミング・ホーム』ベン・キングズレー/ハリエット・サンソム・ハリス/ジェーン・カーティン カミング・ホーム【レビュー】

シニア世代の静かな日常を描いたホッコリかわいいストーリーでありながら、意外にも大きなスケールで、ある意味ぶっ飛んでいる奇想天外な…

韓国ドラマ『愛の不時着』ソン・イェジン ソン・イェジン【ギャラリー/出演作一覧】

1982年1月11日生まれ。韓国、ソウル出身。

映画『グッバイ・クリストファー・ロビン』ドーナル・グリーソン 未公開映画活性課カ行

未公開作品のなかから、当部が気になる作品、オススメしたい作品をご紹介。

映画『全知的な読者の視点から』イ・ミンホ/アン・ヒョソプ/チェ・スビン/シン・スンホ/ナナ/ジス/クォン・ウンソン 全知的な読者の視点から【レビュー】

原作を知らず、タイトルのみ見ると、現実世界の日常を描いた作品だと思う方もいるでしょう。でも、本作はファンタジー・アクション映画で…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『国宝』吉沢亮 映画好きが選んだ2025邦画ベスト

今回は、正式部員の皆さんに投票していただいた2025年邦画ベストの結果を発表!2025年の邦画ベストで上位にランクインしたのはどの作品でしょう?

ショートドラマ『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』 私ならこうする!『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』を観た女子の本音

ショートドラマ『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』をトーキョー女子映画部正式部員の皆さんに観ていただき、感想や「私ならこうする!」を聞いてみました。

映画『ユージュアル・サスペクツ』ガブリエル・バーン/スティーヴン・ボールドウィン/ケヴィン・スペイシー/ケヴィン・ポラック あの名作をリメイクするとしたら、誰をキャスティングする?『ユージュアル・サスペクツ』

今回の「勝手にキャスティング企画!」では、『ユージュアル・サスペクツ』のリメイクを作るとしたら?と…

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画学ゼミ第6回】「鑑賞者のローカス・オブ・コントロールと、映画鑑賞における着眼点・感想の関係」参加者募集!
  2. 【映画学ゼミ第5回】「登場人物にみる人間の非合理性」参加者募集!
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス

REVIEW

  1. 映画『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』
  2. 映画『鬼の花嫁』永瀬廉/吉川愛
  3. 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』峯田和伸/若葉竜也/吉岡里帆
  4. 映画『決断するとき』キリアン・マーフィー/エミリー・ワトソン
  5. 映画『カミング・ホーム』ベン・キングズレー/ハリエット・サンソム・ハリス/ジェーン・カーティン

PRESENT

  1. 映画『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』イ・レ
  2. 映画『キング・オブ・キングス』
  3. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP