REVIEW

メインストリーム

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『メインストリーム』アンドリュー・ガーフィールド

アンドリュー・ガーフィールドが強烈なキャラクターを怪演し、また一皮むけたといえる本作。ほめ言葉として、いろいろな意味でとっても気持ち悪いキャラクターを見事に体現しています。この主人公リンクは思わぬきっかけからだんだんユーチューバーとして人気を得ていき、やがてモンスターのようになっていきます。人気に乗じて我を忘れていくというような展開はある程度読めるのですが、それだけではないから本作はおもしろいんです。
もともとリンクは多くの人が目をそらす現実を突きつけるような心に刺さる言葉を発し、それが人気の基になっています。最初から終わりまで一貫してそこは変わりませんが、同じポリシーを持ちながらも同じ人物がこれだけ変化してしまうのかということにまず驚かされます。また、彼が言っていることには正しいことがあって、それが人を鼓舞するだけなら良いですが、人を打ちのめすという一面も描いていて、知らず知らずのうちに私達も皆リンクと同じようなことをやってるんじゃないかと気付かされます。というわけで、観ているこちら側にも複雑な感情がこみ上げてくるので、前述の“気持ち悪い”という表現の中には、リンクに対するものだけでなく、私達自身の中にあるものに対する気持ち悪さもあることにハッとさせられます。
人間の中身ってこんなにカオスに満ちているんだなと思い知らされる内容ですが、なかなかこうして皆に伝わるストーリーにするのは難しかったはず。でも、それを監督のジア・コッポラは見事に作り上げました。彼女は、フランシス・フォード・コッポラの孫かつソフィア・コッポラの姪で、本作では監督、脚本を務めています。やっぱりコッポラ一族の環境と遺伝子は最強ですね。でもそれだけでなく、ジア・コッポラの個性として、他の親族の作品とは違う味ももちろんあって、今後の作品もとても楽しみです。
劇中の中ではまるで“ジャッカス”というシーンがあると同時に、ホンモノのジャッカスメンバーであるジョニー・ノックスヴィルが逆にお堅い役で出ているところにもシャレが効いていたり、ローラもちらっと出ています。見どころがたくさんあり、映画好きの皆さんにうってつけの作品です。

デート向き映画判定
映画『メインストリーム』アンドリュー・ガーフィールド/マヤ・ホーク/ナット・ウルフ

ラブストーリーの要素もありますが、人間の狂気、人間の本質にフォーカスが当てられた作品なので、特別デート向きという感じではありません。また、いろいろな意味で「それはモザイクかけなくて大丈夫なの?」と思えるシーンも出てきたり、クレイジーなテンションが特徴でもあるので、普段あまり映画を観慣れていない方はちょっとビックリするかもしれません。ということで初デートは避けたほうが良さそうですが、映画好きカップルのデートには良いのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『メインストリーム』アンドリュー・ガーフィールド

SNS、YouTubeを使っていて当たり前の現代人にビビッとくる内容です。どんな関わり方をしているかに関わらず、自分を振り返る意味でも観ると良いと思います。一旦こういう視点を得た上で、自分はどんなポリシーを持つのか、どうこの社会で生きていくかを考えると、何となく周りに流されたまま毎日を過ごすということは少し避けられるかもしれません。とてもシニカルな内容で、結末の捉え方も人それぞれになると思いますが、信頼のおける友達と一緒に観て話し合うのも良さそうです。

映画『メインストリーム』アンドリュー・ガーフィールド

『メインストリーム』
2021年10月8日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

© 2020 Eat Art, LLC All rights reserved.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『愚か者の身分』北村匠海/林裕太/綾野剛 愚か者の身分【レビュー】

闇ビジネスに関するニュースが増えてきた日本において、本作で描かれているような出来事は…

映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平 次元を超える【レビュー】

キービジュアルとタイトル、「人はどこから来て、どこへ行くのか」という意味深なキャッチコピーだけで観たくなったのは…

映画『見はらし世代』黒崎煌代 黒崎煌代【ギャラリー/出演作一覧】

2002年4月19日生まれ。兵庫県出身。

映画『ヒポクラテスの盲点』 ヒポクラテスの盲点【レビュー】

新型コロナウイルスワクチンの被害が起こっている現実に着目した、中立した立場の取材に基づくドキュメンタリー…

映画『ファンファーレ!ふたつの音』ピエール・ロタン ピエール・ロタン【ギャラリー/出演作一覧】

1989年6月20日生まれ。フランス出身。

映画『トロン:アレス』ジャレッド・レト トロン:アレス【レビュー】

本シリーズ1作目『トロン』(=『トロン:オリジナル』)は1982年、『トロン:レガシー』は2010年に作られ、本作はシリーズ3作目となります…

映画『層間騒音』イ・ソンビン 層間騒音【レビュー】

冒頭から不可解な現象が映し出され、観る側はゾワゾワさせられながら騒音の原因を想像することになるわけですが…

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ミア・スレアプレトン ミア・スレアプレトン【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月12日生まれ。イギリス出身。

韓国ドラマ『TWELVE トゥエルブ』マ・ドンソク/パク・ヒョンシク/ソ・イングク/ソン・ドンイル/イ・ジュビン/コ・ギュピル TWELVE トゥエルブ【レビュー】

マ・ドンソク、パク・ヒョンシク、ソ・イングクなど人気俳優が出演する本作は、十二支をモチーフにした守護神達…

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion ファイナンシャルプランナーから学ぶ【明るい未来のための将来設計とお金の基本講座】女性限定ご招待!

本セミナーでは、「NISA・iDeCoなどの資産形成」「子どもの教育資金」「将来受け取る年金」「住宅購入・住宅ローン」「保険」など、将来に役立つお金の知識や情報、仕組みやルールについて、ファイナンシャルプランナーの先生が初めての方でもわかりやすく優しく教えてくれます。

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion
  2. 映画学ゼミ:アイキャッチ1/本の上の犬と少女
  3. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃

REVIEW

  1. 映画『愚か者の身分』北村匠海/林裕太/綾野剛
  2. 映画『次元を超える』窪塚洋介/松田龍平
  3. 映画『ヒポクラテスの盲点』
  4. 映画『トロン:アレス』ジャレッド・レト
  5. 映画『層間騒音』イ・ソンビン

PRESENT

  1. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  2. AXA生命保険お金のセミナー20251106ファイナンシャルプランナーversion
  3. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
PAGE TOP