REVIEW
フランス、ブルゴーニュにある、自然に囲まれたほのぼのとした町で暮らすミシェル(エレーヌ・ヴァンサン)は、娘のヴァレリー(リュディヴィーヌ・サニエ)と孫のルカ(ガーラン・エルロス)が週末を一緒に過ごすために来るのを楽しみにしています。でも、孫のルカがミシェルとの再会を喜ぶ一方、ヴァレリーはそっけない様子です。そんななか、たまたま起きてしまったトラブルを機にヴァレリーが激怒。ミシェルとヴァレリーの心の距離はさらに離れてしまいます。

フランソワ・オゾン監督作ならばそれだけで観たいということで、毎度のことながら、あらすじや他の情報を極力知らずに本編を観ました。オゾン監督作なので、辛辣さとユーモアが入り混じる展開が出てくるだろうとは予想しつつ、のどかな風景から突如不穏な空気に転じる仕掛けの巧さはさすがです。

そして、その出来事を糸口として、なぜヴァレリーがミシェルに対して冷たいのかに関わるミシェルの過去が明かされつつ、孫のルカとのやり取りの中でミシェルがその過去についてどう捉えているかを綴っています。そこに、ミシェルの親友マリー=クロード(ジョジアーヌ・バラスコ)と息子のヴァンサン(ピエール・ロタン)のキャラクター設定、ミシェル一家との関係性が絡み合い、よりドラマチックなストーリーとなっています。

ネタバレを避けて具体的には書かずにおくとして、「良かれと思ってやったと思うことが大事」というミシェルのセリフに彼女の生き様が集約され、彼女の寛容さが表れています。さらに、ミシェルのそうした寛容さを受け継ぐ姿勢を見せるルカの態度にも共感します。登場人物は皆優しさを持ちつつ、微妙に心がすれ違う部分があり、寂しげではあるものの、その寂しさを別の人物が補っているような“循環”が見えます。失敗して落ち込んだり、何かしらの罪悪感を抱えて辛い方は、本作を観ると、包容力に癒やされるでしょう。
デート向き映画判定

世の中には、一番近い立場でも心がすれ違う人間関係もあれば、思わぬところで支えになる人間関係もあることがわかります。本作に登場するキャラクター達は家族同士の関係がこじれている部分もありつつ、逆に“身近な他人”と家族のような関係を築いています。なので、自分やパートナーが、血縁の人間関係に悩んでいる場合は、悩みを話す機会になると同時に、何かしら希望ももらえると思います。
キッズ&ティーン向き映画判定

皆さんは大人の事情に巻き込まれるルカの目線で本作を観る方が多いと思います。子どもとしてはどう受け止めたらよいかすぐにはわからないような話を聞くシーンがあり、その話は人生観に大きく関わりそうなことです。自分ならどう受け止めるか、想像しながら観てみてください。

『秋が来るとき』
2025年5月30日より全国公開
ロングライド、マーチ
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2025年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。