REVIEW

悪の偶像

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『悪の偶像』ハン・ソッキュ

ハン・ソッキュ、ソル・ギョングが共演というだけで魅力的ですが、冒頭のナレーションの内容から、ただごとではない空気が漂い、あっという間に引き込まれます。物語は、あるひき逃げ事件が起こることで展開していきます。ハン・ソッキュが演じる市議会議員ク・ミョンフェは、将来を期待される人物で、息子がひき逃げ事件を起こしたと知った時にも冷静に対応しようとします。ただ、予想外の事情が発覚し、問題を最小化しようと画策し始めたことで、どんどん運命の歯車が狂っていきます。一方ソル・ギョングが演じる被害者の父ユ・ジュンシクは、息子が亡くなった事実を受け入れるのに苦労しながらも、事件の背後にある不可解な事柄を調べていき、彼は徐々に真相に迫っていきます。でも、ク・ミョンフェは丸く収めようと手を回し、そこから意外な方向に物語は進んでいくのですが、政治家の力に、弱い立場の庶民がねじ伏せられていく様が本当に恐ろしく映ります。これは弱肉強食の現代社会を投影するストーリーで、いつどこで起きていてもおかしくないと思えるだけに、他人事として観られません。さらにユ・ジュンシクを、世間の誤解を招きそうなキャラクター設定にしている点にも構成の巧さを感じます。人はセンセーショナルなところだけに目がいくと全体像を歪んで捉えてしまい、本性を見極めることなく、善悪を読み違えることがあるのかも知れません。そんな世間の目も、歪んだ社会を容認することに繋がっているのかと思うと、ゾッとさせられます。本作は、ストーリー、俳優の演技、演出とどれも優れていて、期待を越えるパンチ力があり、観終わった後はズッシリとしたものが残ります。これこそ映画だという充実感を味わうことができる作品です。

デート向き映画判定
映画『悪の偶像』ソル・ギョング

終始緊張感があり、テーマは重く、性的な話題も出てくるので、デートで観るのには向いていないと思います。本当に恐ろしい人物とはこういうことなんだなとわかるストーリーなのですが、それが社会的地位を持つ人だったり、一見良識ある人だったりするだけに、違う意味でゾッとさせられます。特にステータスのある人とお付き合いしていて安心しきっている人は、複雑な気持ちになるかも知れません。一人でじっくり観るか、友達と観ることをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『悪の偶像』ハン・ソッキュ

R指定はついていませんが、かなり怖いシーンが出てくるので、せめて中学生以上になってから観るのが良いと思います。政治家の裏の顔、格差社会、移民の問題、障がい者が抱える問題など、幅広く社会問題を取り上げている点で勉強になるところも多く、エンタテインメント的にも見応えがあるので、興味があればぜひ観てください。映画が好きになってきて、いろいろなジャンルを開拓している人にもオススメ。韓国映画の魅力を存分に感じられると思います。

映画『悪の偶像』ハン・ソッキュ/ソル・ギョング

『悪の偶像』
2020年6月26日より全国順次公開
アルバトロス・フィルム
公式サイト

© 2019 CJ CGV Co., Ltd., VILL LEE FILM, POLLUX BARUNSON INC PRODUCTION All Rights Reserved

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ ロストランズ 闇を狩る者【レビュー】

“バイオハザード”シリーズでお馴染みの2人、ミラ・ジョヴォヴィッチとポール・W・S・アンダーソン夫妻が再びタッグを組み、“ゲーム・オブ・スローンズ”の原作者、ジョージ・R・R・マーティンの短編小説を7年の歳月をかけて映画化…

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

映画『君の顔では泣けない』芳根京子 芳根京子【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月28日生まれ。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. 映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョヴォヴィッチ
  2. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  3. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール
  4. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  5. Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP