REVIEW

アオラレ

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『アオラレ』ラッセル・クロウ

日本でもアオラレ運転が問題視されていますが、他の国でも同じなんですね。原題は“UNHINGED”で、「精神的に不安定な」という意味ですが、アオラレ運転の背景にもっと根深い問題があることを示唆していて、それは個人の問題だけでなく、社会の問題でもあると思えて、一筋縄ではいかないなと感じます。ほんのちょっとしたきっかけで悪い相手の感情に火を付けてしまうのですが、煽られる側にも軽率な部分があります。ただ、この両者とも人生で行き詰まっているという共通点があり、日常的に穏やかな気持ちではいられないからこそ、こうなってしまうのかもしれません。“UNHINGED”は、両者のことを指しているとも捉えられ、正常な精神状態なら感情に流されずに冷静な判断をするところを、「なぜそこでそういう態度を?」という展開になるのは、両者が精神的に不安定だからだと考えられます。
正直なところ、煽られる側にも完全に共感することはできませんが、アオラレ運転は誰にでも起こる可能性があるので、他人事としては観られません。そして何といってもラッセル・クロウが演じるトムがクレイジー過ぎて、「もしこんな人に煽られたら」と思うと、まともに話ができなくなっている相手を前に何もできない無力感を味わえます。
社会問題を意識させられつつも、エンタテインメントとしてもかなり見応えがある本作。どういう視点で観ても、「安全運転が大事」「イライラを人にぶつけて良いことはない」「人生がうまくいかないからって、他人のせいにしない」といったいろいろな教訓を得られます。

デート向き映画判定
映画『アオラレ』ラッセル・クロウ

パートナーが血気盛んで運転中は特に攻撃的になるタイプ、または今何もかもがうまくいかずにむしゃくしゃしている方やパートナーがそういう状態の方も、ぜひ本作を一緒に観て、反面教師にしてください。辛い状況に立った人間がどういいう精神状態になるのか冷静に客観視できるので、ちょっと頭を冷やすことができるかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『アオラレ』カレン・ピストリアス

「マジか!」「そこまでやるか!」というシーンがふんだんに出てきて、ラッセル・クロウ演じる男がとても怖いですが、常軌を逸した大人達の姿から学べることもいろいろあると思うので、興味があれば観てみてください。ティーンの皆さんはもうすぐ車の免許を取って、自分で運転できるようになる方もいると思いますが、本作を観て、運転中にイラッとしたら本作を思い出して、安全運転してください。

映画『アオラレ』ラッセル・クロウ/カレン・ピストリアス

『アオラレ』
2021年5月28日より全国公開
PG-12
KADOKAWA
公式サイト

©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』クリスチャン・コンヴェリー THE MONKEY/ザ・モンキー【レビュー】

怖いはずなのにどこか可笑しい絶妙なバランスの本作は、スティーヴン・キングの短編を原作としています…

映画『戦争と女の顔』ヴィクトリア・ミロシニチェンコ ヴィクトリア・ミロシニチェンコ【ギャラリー/出演作一覧】

1994年5月17日生まれ。ロシア出身。

映画『ファンファーレ!ふたつの音』エマニュエル・クールコル監督インタビュー 『ファンファーレ!ふたつの音』エマニュエル・クールコル監督インタビュー

フランスで3週連続NO.1(仏映画興収/実写映画において)を獲得し、260万人動員の大ヒットを記録した話題作『ファンファーレ!ふたつの音』。今回は本作のエマニュエル・クールコル監督にインタビューさせていただきました。

映画『ひゃくえむ。』 ひゃくえむ。【レビュー】

魚豊著の『チ。 ―地球の運動について―』がすごく好きなので、絶対に本作も…

映画『お嬢と番犬くん』櫻井海音 櫻井海音【ギャラリー/出演作一覧】

2001年4月13日生まれ。東京都出身。

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』クリスチャン・コンヴェリー
  2. 映画『ひゃくえむ。』
  3. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  4. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  5. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP