REVIEW

アイアンクロー【レビュー】

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映画『アイアンクロー』ザック・エフロン/ジェレミー・アレン・ホワイト/ハリス・ディキンソン/スタンリー・シモンズ

REVIEW

本作は1980年初頭にプロレス界で名を刻んだ“鉄の爪(アイアンクロー)”フォン・エリック一家の物語です。父フリッツ(ホルト・マッキャラニー)は元AWA世界ヘビー級王者で、息子達にも自分の夢を託します。息子達も父の期待に応えようと必死です。プロレス界で最強になるという同じ夢を持って歩み続ける親子は強い絆で結ばれ、異常なまでの執着心で強くなっていきます。一方で、息子達が追い詰められても自虐的に強くなろうとする姿を見ると、父子の間にある愛が呪縛のようにも見えます。実はフォン・エリック家には呪われた一家という異名もあり、本作は立て続けに起きた不幸な出来事に翻弄される一家の姿を描いています。
どんな出来事が起こるのかは本編でご覧いただくとして、この物語の救いは兄弟同士が本当に仲が良く支え合っている点です。本作は次男ケビン(ザック・エフロン)を軸に物語が展開していき、ケビンが父への期待に応えたい気持ちと、弟達を守りたい気持ちで葛藤する様子が描かれています。なぜそこまでするのかと思うほど、父の期待に応えようとする心情は、演技はもちろん、ザック・エフロンの鍛え上げられた肉体によって表現されています。また、印象に残ったのは母親ドリス(モーラ・ティアニー)の言葉です。母に頼りたいケビンを突き放しているのか、息子達を強くするためなのか、どこか疎外感があったのか、真相はわかりません。ただ、家族の唯一の女性としての立場をいろいろと想像させられます。
価値観が変容してきた現代では、親の意志を継ぐ職業に就く方も減ってきているでしょう。とはいえ、家族の縁が切れることはなく、家族が抱えてきた悲しみや苦しみから逃れるのも難しいと同時に、それが家族を繋いでいるといえる部分がありそうです。本作は、家族の絆と家族の呪縛の両方を描いている点で、家族観を見直すきっかけになると思います。

デート向き映画判定

映画『アイアンクロー』ザック・エフロン/リリー・ジェームズ

ケビンの恋愛模様も描かれていて、自分が好きな人の家族がフォン・エリック家みたいな家族だったら…と想像させられる部分があるでしょう。家族の縛りがきつい方と交際中の方は、敢えて一緒に観て相手の考え方を聞く機会とするか、自分だけでじっくり観て将来を想像するか、状況次第で決めてはどうでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『アイアンクロー』ザック・エフロン

兄弟揃って同じスポーツで最強になれたら素敵だなと思う半面、何かに取り憑かれたように自分を犠牲にしてしまうキャラクター達の様子を観ていると、いろいろな気持ち、考えが浮かんでくるでしょう。似たような状況に置かれている方は、客観的に自分の状況を見つめ直すために本作を観るのもアリだと思います。

映画『アイアンクロー』ザック・エフロン/ジェレミー・アレン・ホワイト/ハリス・ディキンソン

『アイアンクロー』
2024年4月5日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト

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© 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

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