REVIEW

弟とアンドロイドと僕

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『弟とアンドロイドと僕』豊川悦司

冒頭から独特の空気がシーンに充満していて、ロケーションが持つ力が伝わってきます。異世界に見えるような場所が舞台となっていて、ロケーションにすごくこだわって撮られたのではないかと思います。タイトルを聞くだけでもいろいろな想像が掻き立てられますが、弟と僕の関係が徐々に明らかになり、そこへさらにアンドロイドの存在がどんな意味を持ってくるのかが描かれると、観る側はゾワゾワっとした感覚に陥ります。
また、何かを内に秘めていて不可解な行動をとる主人公の桐生薫を豊川悦司が見事に演じていて、冒頭からこの世界観にすごく引き込まれます。さらに安藤政信が演じる弟にはつかみどころのなさと怖さのようなものが感じられ、片山友希が演じる少女にはミステリアスなところがあり、それぞれのキャラクターが持つ役割がわかった時に一気にすべてが繋がっていくおもしろさがあります。それと同時にとても切ない気持ちになり、私達の中にも主人公と同じような感覚が少なからずあるように思えて親近感も湧いてきます。
多くを語らずとも伝わる表現方法が巧みで、込められたメッセージは哲学的でありながらシンプルなので誰にでも共感できると思います。また、主人公が抱えている感情は、現代社会で多くの人が抱えているものとも思えて、SNSなどで別の人格を作る感覚と似ているのかもしれません。といった感じで、比喩的に描かれているところにいろいろな解釈をあてて観るのもおもしろい作品となっているので、思考を巡らせながら映画を観るのが好きな方にオススメです。

デート向き映画判定
映画『弟とアンドロイドと僕』豊川悦司/安藤政信

複雑な人間関係が描かれていて、暗いムードの作品なので、ウキウキして過ごしたい日のデートには向かないと思います。また、見応えはありますが世界観が独特で多少好みが分かれそうなため、相手の好みがわからない初デートなどには不向きでしょう。一方、映画好きカップルにとっては、語りたくなる要素があると思うのでデートで観るのも良いのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『弟とアンドロイドと僕』豊川悦司/安藤政信/片山友希

大人向けのストーリーなので、キッズにはまだピンとこないかもしれませんが、年齢を問わず主人公が抱いているような感覚はあると思うので、興味があれば観てみてください。ただ、ジワジワと何が起こっているのかがわかってくるように描かれているので、ある程度の観察力と理解力は必要です。そういう意味で中学生以上向けかなと思います。「この感覚わかる!」とハマる人はハマるはずです。

映画『弟とアンドロイドと僕』豊川悦司/安藤政信

『弟とアンドロイドと僕』
2022年1月7日より全国順次公開
キノシネマ
公式サイト

© 2020「弟とアンドロイドと僕」FILM PARTNERS

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

映画『ナイトフラワー』北川景子 北川景子【ギャラリー/出演作一覧】

1986年8月22日生まれ。兵庫県出身。

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年11月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年11月】のアクセスランキングを発表!

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大 兄を持ち運べるサイズに【レビュー】

原作は、村井理子が書いたノンフィクションエッセイ「兄の終い」…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  4. 映画『消滅世界』蒔田彩珠
  5. 映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP