REVIEW
高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイがいました。戸籍は男性のままで女性として売春をするブルーボーイは売春防止法では摘発対象にはならないため、警察はブルーボーイに手術を施した赤城医師(山中崇)を逮捕し裁判にかけます。

本作は実際に起きた“ブルーボーイ事件”から着想を得て作られています。手がけたのは、トランスジェンダーである自らの経験を基に撮った『僕らの未来』をはじめ、『フタリノセカイ』『世界は僕らに気づかない』で手腕を発揮してきた飯塚花笑監督。飯塚監督は、「この物語を描くには当事者によるキャスティングが絶対に必要」という強い意志のもと、田中幸夫監督によるドキュメンタリー『女になる』に出演した中川美悠を主人公サチに抜擢しました(映画公式資料)。

本作で行われる裁判で、警察は「生殖を不能にする手術は『優生保護法』[*現在は母体保護法に改正]に違反する」(映画公式資料)という主張で戦おうとします。一方、被告である赤城医師の弁護士、狩野(錦戸亮)は手術は治療のためであったという主張で弁護しようとします。ただ、何を“治療”するのかという点で、手術を受けた人達と意見の相違が起こります。ここで何が食い違っているのかが、本作のテーマの1つとなっています。

印象に残ったのは、性別適合手術を受けた人達を女性だと思うのか、病気の男性と思うのかを問うシーンです。本作を観ると、手術が合法だと示すためだとはいえ、ここは譲れない点であることがはっきりと伝わってきます。最終的にどんな訴えがなされ、どういう判決が下されるのか、ぜひ歴史を目撃してください。
デート向き映画判定

主人公のサチは女性として生活していて恋人もいます。自分だけではなく、恋人のためにも悩むサチが、どういう決断をするのか、恋人はどういう反応をするのかも本作の見どころです。カップルで一緒に観た場合、相手の感想に人生観が垣間見えるかもしれません。
キッズ&ティーン向き映画判定

サチがどんな気持ちで日々を過ごしているかを説くシーンが、すべてを物語っています。昨今ジェンダーについて考えさせられる機会が増えたと感じる半面、わかった気になってしまう状況もなきにしもあらずと感じます(自戒も込めて)。本作を観ると、まだまだ当事者の方達の本心にたどり着けていなかったことに気づかされます。

『ブルーボーイ事件』
2025年11月14日より全国公開
日活/KDDI
公式サイト
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©2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会
TEXT by Myson
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情報は2025年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。




























