REVIEW

Flow【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『Flow』

REVIEW

大洪水に見舞われた世界を舞台に、一匹の猫が生き残りをかけて冒険に出る本作は、2024年のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞や観客賞を含む4冠を受賞し、2025年ゴールデングローブ賞ではアニメーション映画賞を受賞しました。ラトビア出身のギンツ・ジルバロディス監督は、長編デビュー作『Away』を3年半かけて1人で制作し、長編2作目となる本作も「スタッフは50人以下、制作費は350万ユーロ(約5.5億円)という、アニメーション制作の常識を覆す極めてインディペンデントな体制」で作り、驚きと称賛を得ています(映画公式サイト)。

映画『Flow』

本作に登場するキャラクターはすべて動物です。だから、セリフはなく鳴き声だけで構成されています。それでも動物達の豊かな表情や仕草から、心の声が聞こえてきます。動物の種ごとの特性はもちろん、同じ種の中でもキャラクター設定が豊富な点も見事です。大洪水で日常が壊され、それぞれの動物が何とかして生き残ろうとするなか、普段は行動を共にしていない動物同士の出会いがどういう展開を生むのか目が離せません。
85分と短めの尺でありながら、かなりドラマチックでダイナミックなストーリーと映像に最初から最後まで魅了されます。本作が数々の賞を受賞しているのも納得です。そして、本作を観ていると、物語の力を改めて感じ、ギンツ・ジルバロディス監督のストーリーテラーとしてのセンスに圧倒されます。

ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。

映画『Flow』

本作では、非日常を機に種の違いを越えた共存が描かれています。動物界の弱肉強食の構図がなくなることはないものの、大洪水によって日常が壊された世界で、動物達はお互いに新しい関係の中で生き残ろうとします。猫は冒険の途中で、別の種に出会う度に敵か味方かを見極めていきます。動物の世界は食うか食われるかというシビアな関係なので、やむなく共存を選んだとしても油断は許されません。そんななか、恐れていた相手が実は強い味方だと気づいたり、厚意で助けても仇で返されたりします。
そんな様子はまるで人間界の投影に思えます。動物の種の違いを人種の違いとして捉えることもできるし、動物という大きな枠組みでは人間は同じ一つの種でありながら善人がいれば悪人もいるし、価値観もかけ離れていれば共存が難しいという実状とも重なります。

映画『Flow』

一方で、動物に共存ができて、なぜ人間には共存ができないのかという問題提起とも捉えられます。それはルーツや生き方が異なる人間同士の共存のことともいえるし、動物や植物など自然全体を守る生き方としての共存のこととも捉えられると思います。
本作を観ると、一匹の猫の目線を通して、多くの気づきを得られます。ぜひ、多くの方に観て欲しい1作です。

デート向き映画判定

映画『Flow』

動物がカワイイだけのほのぼの映画ではなく、サバイバルを描いているので、かなり見応えがあります。ストーリー、映像ともに壮大なので大人カップルが観ても充分満足できるはずです。セリフがない分、想像を掻き立てるので、観終わった後にそれぞれの解釈を話し合うのも楽しいでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『Flow』

85分と短めで、動物達の様子だけでストーリーがしっかり伝わってくるので、幼いキッズにも観やすいでしょう。言葉が出てこないので、自ずと表情や仕草に目が向きやすくなると思います。だから、感覚、感性で他者の気持ちを読み取る練習にもなるのではないでしょうか。異なる種の動物達がお互いを徐々に知っていく様子や助け合う様子、裏切られてしまう様子が描かれています。さまざまなキャラクターが出てくるので、どのキャラクターに感情移入していたかを振り返ると自分の価値観に気づけるかもしれません。

映画『Flow』

『Flow』
2025年3月14日より全国公開
ファインフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年3月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー 『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー

写真家、深瀬昌久の78年に渡る波瀾万丈の人生を、実話とフィクションを織り交ぜて描いた映画『レイブンズ』。今回は本作で、深瀬昌久の最愛の妻であり被写体でもあった洋子役を演じた瀧内公美さんにインタビューさせていただきました。

映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン ミッキー17【レビュー】

『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞したポン・ジュノ監督(脚本、製作を兼務)が、この度制作したハリウッド映画は…

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン マイキー・マディソン【ギャラリー/出演作一覧】

1999年3月25日生まれ。アメリカ出身。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太 BAUS 映画から船出した映画館【レビュー】

2014年、東京都、吉祥寺の映画館“バウスシアター”が閉館となりました。本作は、この映画館を親の代から運営してきた本田拓夫著…

映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー 白雪姫【レビュー】

1937年に製作されたディズニーの『白雪姫』は、世界初のカラー長編アニメーションであり、ウォルト・ディズニー・スタジオの原点とされています…

映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』 ニンジャバットマン対ヤクザリーグ【レビュー】

バットマン・ファミリーが戦国時代の歴史改変を食い止めた『ニンジャバットマン』の続編…

【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性 自分を知ることからすべてが始まる【映画でSEL】

SEL(社会性と情動の学習)で伸ばそうとする社会的能力の一つに「自己への気づき」があります。他者を知るにも、共感するにも、自己をコントロールするにも、そもそも自分のことを全く理解していなければ始まりません。

映画『悪い夏』北村匠海 悪い夏【レビュー】

染井為人著の原作小説は、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しています。映画化の際には…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 Before 高校デビュー編【レビュー】

本作は、縦スクロール形式のデジタルコミック“webtoon”で人気を博したyaongyi(ヤオンイ)作の同名コミックを原作としています…

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ 教皇選挙【レビュー】

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  2. 映画『風たちの学校』
  3. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿

REVIEW

  1. 映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン
  2. 映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太
  3. 映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー
  4. 映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』
  5. 映画『悪い夏』北村匠海

PRESENT

  1. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
  2. 映画『私の親愛なるフーバオ』
  3. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
PAGE TOP