REVIEW

HOW TO HAVE SEX【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『HOW TO HAVE SEX』ミア・マッケンナ=ブルース

REVIEW

仲良し3人組のタラ(ミア・マッケンナ=ブルース)、スカイ(ララ・ピーク)、エム(エンヴァ・ルイス)は、卒業を前にしてギリシャのクレタ島にある、パーティーが盛んなリゾート地、マリアを訪れます。この旅行で初体験を果たしたいタラが出会いを期待して胸を膨らませていたところ、ホテルの隣の部屋のグループと交流の機会が巡ってきます。
序盤はティーンエイジャーの元気な様子が映し出され、3人とも強気な発言をしています。でも、経験のないタラはいざとなるとしおらしくなります。大人目線では、そのしおらしさに逆にホッとするのも束の間、不穏な空気が漂ってきます。初体験をしたいと考えていたとしても、タラが望む初体験とはどのようなものだったのか、本作はその解釈を一旦観客に委ねてきた上で、最後にタラの心情を明かします。

映画『HOW TO HAVE SEX』ミア・マッケンナ=ブルース/エンヴァ・ルイス/ララ・ピーク

本作は性的同意について問う内容となっています。同意は果たして言語のコミュニケーションだけで確認、確信して良いのでしょうか。そもそも性的同意を確認された時、拒否できる状況にあるといえるでしょうか。拒否のサインは見落とされていないでしょうか。本作の同じシーンを観て、同意していないとわかる方もいれば、同意したと受け取る方もいらっしゃると思います。だから、この性的同意の問題は解決が難しいと本作を観て改めて感じます。
「はっきり拒否すればいい」「その場を立ち去ればいい」という意見もきっとあるでしょう。そうできるならそうしたほうが良いと私も思います。でも、怖くて硬直してしまうこともあるでしょうし、知人ならその後の人間関係を考えてしまうこともあるでしょう。この場にいる状況を作ってしまった自分自身に非があると感じて動けなくなっていることもあると思います。だから、身体的、心理的に強い立場にある人間は、相手にそうした心理が働いて拒否できないのかもしれないという想像力を持つ必要があります。

映画『HOW TO HAVE SEX』

そして、本作では周囲の人間の態度も思わぬ事態を招く可能性を持っていると示しています。友達なのだから本心を言えば良いのでしょうが、特にティーンエイジャーの友人関係は複雑です。当事者からすれば心配させたくないという思いもあれば、見栄をはってしまうこともあるでしょうし、逆の立場からすると嫉妬が入ったり、単に理解が浅くて友達の本心が読めないままでいることもありえます。そんなティーンエイジャーの複雑な心情も本作は丁寧に繊細に描いています。
デジタル社会になり、ますます言語のコミュニケーションに偏ってきました。だからこそ、本作で描かれているような表情や仕草、声のトーンというような非言語コミュニケーションの重要性を感じます。若者だけではなく大人も含め、本作がそういったことを考える機会になることを期待します。

デート向き映画判定

映画『HOW TO HAVE SEX』ミア・マッケンナ=ブルース

性的同意を問う内容なので、シリアスな空気になると思いますが、カップルだからこそ身近な問題です。直接言葉では説明できませんが、逆に本作を観ることで一緒に考える機会になると思います。感想を述べ合うのは気まずいとしても、一緒に観て共有するだけでも意味があると思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『HOW TO HAVE SEX』ミア・マッケンナ=ブルース/エンヴァ・ルイス

ティーンの皆さんは等身大でキャラクター達の心情を感じられると思います。自分自身の身を守るためにもぜひ観て欲しい作品です。友達同士のやり取りにも考えさせられるところがあるので、仲の良い友達と観ると良いでしょう。困った時に本心を明かして相談できる友達はとても重要です。

映画『HOW TO HAVE SEX』ミア・マッケンナ=ブルース

『HOW TO HAVE SEX』
2024年7月19日より全国公開
PG-12
カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『キノ・ライカ 小さな町の映画館』アキ・カウリスマキ キノ・ライカ 小さな町の映画館【レビュー】

本作は、フィンランドを代表する映画監督アキ・カウリスマキが共同経営者のミカ・ラッティと一緒に、地元である鉄鋼の町カルッキラに初めての映画館“キノ・ライカ”を作り、開業するまでの日々…

映画『雪の花 ―ともに在りて―』松坂桃李/芳根京子 『雪の花 ―ともに在りて―』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『雪の花 ―ともに在りて―』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『クレイヴン・ザ・ハンター』アーロン・テイラー=ジョンソン クレイヴン・ザ・ハンター【レビュー】

主人公のクレイヴンは、原作コミックではスパイダーマンの宿敵として、ヴェノムに匹敵する強さを持つ…

映画『太陽と桃の歌』アイネット・ジョウノウ/ジョエル・ロビラ/イザック・ロビラ 太陽と桃の歌【レビュー】

REVIEW第72回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で見事金熊賞を受賞した本作は、…

映画『お坊さまと鉄砲』ケルサン・チョジェ お坊さまと鉄砲【レビュー】

かつてブータンは「世界一幸せな国」といわれていました。本作は、その理由や、民主主義、文明とは何かを改めて考えさせられる…

映画『ビートルジュース ビートルジュース』キャサリン・オハラ キャサリン・オハラ【ギャラリー/出演作一覧】

1954年3月4日生まれ。カナダ出身。

映画『インサイド・ヘッド2』 心理学から観る映画51:“インサイド・ヘッド”シリーズを感情研究の理論にあてはめて考える

「感情」はとらえ方が大変難しい概念です。専門家による感情に関する研究でも、さまざまな理論があります。そこで、今回は「感情」のとらえ方について代表的な理論を取り上げます。

映画『はたらく細胞』永野芽郁/佐藤健 はたらく細胞【レビュー】

シリーズ累計発行部数1000万部を超えるベストセラーコミックを実写化した本作は、まず…

映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』天海祐希/大橋和也/伊原六花/上白石萌音 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂【レビュー】

REVIEW累計発行部数1100万部を突破した「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズ(作:廣嶋…

映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』ジェシー・アイゼンバーグ/キーラン・カルキン “サーチライトプレミア試写会-シネマラウンジーvol.1”『リアル・ペイン〜心の旅〜』15名様ご招待

“サーチライトプレミア試写会-シネマラウンジーvol.1”映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』15名様ご招待

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『グランツーリスモ』オーランド・ブルーム 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】雰囲気部門

イイ俳優ランキング【海外40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。錚々たる俳優が揃うなか、総合と比べてどのようにランキングが変化したのでしょうか?

映画『マイ・インターン』アン・ハサウェイ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】総合

今回は、海外40代(1975年から1984生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で80名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。今回はどんな結果になったのでしょうか?

映画『淪落の人』アンソニー・ウォン/クリセル・コンサンジ 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.2

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

REVIEW

  1. 映画『キノ・ライカ 小さな町の映画館』アキ・カウリスマキ
  2. 映画『クレイヴン・ザ・ハンター』アーロン・テイラー=ジョンソン
  3. 映画『太陽と桃の歌』アイネット・ジョウノウ/ジョエル・ロビラ/イザック・ロビラ
  4. 映画『お坊さまと鉄砲』ケルサン・チョジェ
  5. 映画『はたらく細胞』永野芽郁/佐藤健

PRESENT

  1. 映画『雪の花 ―ともに在りて―』松坂桃李/芳根京子
  2. 映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』ジェシー・アイゼンバーグ/キーラン・カルキン
  3. 映画『モアナと伝説の海2』Tシャツ
PAGE TOP