REVIEW

コンセント/同意【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『コンセント/同意』キム・イジュラン/ジャン=ポール・ルーヴ

REVIEW

文学という大義名分によって見過ごされていた有名作家の大罪を、被害者の少女が大人になり小説という形で告発した「同意」。本作はその小説を原作として映画化されました。告発されたのは、芸術文化勲章を受賞した経歴を持つガブリエル・マツネフ。大人になってから彼の大罪を告発したのは、当時14歳で50歳のマツネフと性的関係を持っていたヴァネッサ・スプリンゴラです。本作は、小児性愛者であるマツネフが、少年少女達と実際に行った性的行為を小説に書き、それが文学として認められてきた実話を基にしており、本国フランスで大きな反響を呼びました。

映画『コンセント/同意』キム・イジュラン

本作を観ると、マツネフが小児性愛者だということを周囲に隠していない点、周囲の大人がそれを放置している点にまず驚きます。受け流しているとはいえ大人なら彼の危険性をわかるはずのところ、大人びていてはいてもまだ14歳で読書が大好きなヴァネッサにとっては、有名作家であるマツネフは憧れの人に見えてもおかしくありません。そして、無垢な少女がどんどんマツネフの術中にハマり操られていきます。大人なら、マツネフの身勝手さ、不誠実さ、幼稚さ、狡猾さはすぐに見抜けるものの、相手が子どもなだけにそれが通用してしまう様子に腹立たしい気持ちでいっぱいになります。ただ、当時のフランスの法律では、性的同意ができるとする下限が13歳だったようです(今は下限が15歳)。じゃあ、同意って何なんだという話になるわけで、原作、本作に“同意”というタイトルがついている点に大きな意味があることがわかります。
本作では、社会的な地位のある大人が、子どもを相手にふるった性暴力と精神的な暴力が赤裸々に描かれています。観ていると本当に心苦しく、憤りを感じます。本作自体もただ映画として消費、消化されるのではなく、本作を機にしっかりヴァネッサ・スプリンゴラ氏の意が世の中に伝わることを願います。

デート向き映画判定

映画『コンセント/同意』キム・イジュラン

1人で観るほうが向いている作品です。現在交際中かこれから交際が始まるかもしれない相手との関係が、本作の2人の状況に似ていたり、好きな人との話をすると周囲からやたらと心配される方は、本作を観ると自分の状況を客観的に観られるかもしれません。また、どんなカップルに起きても許しがたい行為も行われているので、相手の言いなりになりがちな方は自分の身を守るために参考にできるところがあるでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『コンセント/同意』ジャン=ポール・ルーヴ

性的同意はもちろん、そもそも同意とはどういうことなのかを考えるきっかけになります。15歳未満の方はまだ観られませんが、そもそも本作が14歳の少女の辛い経験を語ったものなので、自分を守るための知識として、R指定がつかない編集をした、大人の指導のもと15歳未満の方も観られるバージョンもあれば、15歳未満の方にも観て欲しいところです。一方、15歳になったからといって無縁の問題でもありません。若い皆さんに観て知っておいてほしい実態が描かれているので、せめて観られる年齢になったら観てみてください。

映画『コンセント/同意』キム・イジュラン

『コンセント/同意』
2024年8月2日より全国公開
R-15+
クロックワークス
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2023 MOANA FILMS – WINDY PRODUCTION – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE – FRANCE 2 CINEMA – LES FILMS DU MONSIEUR

TEXT by Myson


関連作

書籍「同意」ヴァネッサ・スプリンゴラ著/中央公論新社
Amazonで書籍を購入する

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智 ナイトフラワー【レビュー】

『ミッドナイトスワン』で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督が、“真夜中シリーズ”と銘打つ本作は…

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン 『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『新解釈・幕末伝』山下美月 山下美月【ギャラリー/出演作一覧】

1999年7月26日生まれ。東京都出身。

映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作 もういちどみつめる【レビュー】

「18・19歳の厳罰化を目的とした、2022年の少年法改正に対して抱いた疑問から制作を始めました」(映画公式サイト、佐藤慶紀監督)とあるように…

映画『喝采』ジェシカ・ラング 『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『ヒックとドラゴン』メイソン・テムズ メイソン・テムズ【ギャラリー/出演作一覧】

2007年7月10日生まれ。アメリカ生まれ。

「Kodansha Studios 設立発表会見」野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)、 クロエ・ジャオ(Kodansha Studios 最高クリエイティブ責任者)、 ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO) 映画業界に新風を吹かせられるか?2025新レーベル発足および官民の取組みまとめ

今回は近日発足された新レーベルと、官民の取組みについてまとめて紹介します。

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智
  2. 映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作
  3. 映画『果てしなきスカーレット』
  4. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  5. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉

PRESENT

  1. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  2. 映画『喝采』ジェシカ・ラング
  3. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
PAGE TOP