REVIEW
本作の原題は“Love Lies Bleeding”で、「愛は血を流す」と直訳されます。一方,邦題は『愛はステロイド』と付けられています。本作を観ると、原題も邦題も比喩的な表現を上手く使いながら、この物語の特徴を盛り込んでいると感じます。
物語の舞台は1989年、ニューメキシコ州の⽥舎町です。パッとしない日々を過ごしていたルー(クリステン・スチュワート)は、勤め先のトレーニングジムで異彩を放つジャッキー(ケイティ・オブライアン)に目を奪われます。ひょんなことから一気に心の距離を縮めた2人は、やがて恋仲になるものの、思わぬ事態に巻き込まれてしまいます。

まず、クリステン・スチュワートが本当にカッコイイ!彼女が演じるルーの愛情深さと誠実さが、すごくリアルに伝わってきて、改めて演技力の高さにも圧倒されます。そして、ボディビルダーとして大会での優勝を目指すジャッキーを演じるケイティ・オブライエンの役作りも見事です。一目でボディビルダーとわかるくらい体を作り上げていてキャラクターに説得力をもたらしていると同時に、ジャッキーの多面性を体現しています。

脇を固めるキャラクター達も灰汁が強いです。デイヴ・フランコ演じるJJは、相当なダメンズで、デイヴ・フランコ自身のイメージとはギャップがあるからこそ新鮮味があります。エド・ハリスが演じるルー・シニアは凄みがスクリーンから伝わってきます。何を考えているのかわからない怖さも相まってかなり不気味です。アンナ・バリシニコフが演じるデイジーも負けじと不気味です。デイジーが醸し出す不気味さというか怖さは普遍的だからこそゾッとさせられます。そして、ジェナ・マローンが演じたベスは、男性社会の犠牲となりながらも耐え忍ぶ女性の象徴として映ります。また、ジェナ・マローンとクリステン・スチュワートはどことなく面影が似ていて、姉妹役にハマっています。

ルーとジャッキーのキャラクター設定もユニークです。肉体的にはジャッキーのほうがマッチョでありながら、精神的にはルーのほうがマッチョで、2人で一つといえる関係性がとてもロマンチックです。同時にこのキャラクター性がとんでもない事態を招いていき、衝撃的な展開が繰り広げられます。クライマックスは別の意味でも衝撃的なシーンがあり、目が点になりますよ(笑)。枠にハマらない世界観はA24作品という感じがします。監督、脚本ともに手掛けたローズ・グラスの今後の作品にも期待が膨らみます。
デート向き映画判定

性的描写、暴力描写があり、初デートや交際ホヤホヤカップルの映画デートには向いていないと思います。一方で、苦手な方がいそうなレベルの過激な描写があるものの、すごくロマンチックなストーリーでもあるので、いろいろなジャンルの映画を観慣れているカップルにはオススメです。
キッズ&ティーン向き映画判定

本作は多面的で、一つのジャンルに収まらないおもしろさがあります。根底にラブストーリーがあり、愛の深さ、激しさからスリラーへと発展していきます。ロマンチックであり、スリリングでもあり、映画特有の描写が効いていて、映画の醍醐味を感じられるでしょう。映画好きを自覚し始めた方は15歳になったらぜひ観てください。

『愛はステロイド』
2025年8月29日より全国公開
R-15+
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
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TEXT by Myson
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