REVIEW
2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を描く物語です。主演の前田旺志郎が好演しているほか、井浦新と窪塚愛流が親子役を演じています。思い返すと井浦新と窪塚愛流の父、窪塚洋介は『ピンポン』で共演していたなと、何だか感慨深く思いました。

序盤は回想シーンを挟みながら、前田旺志郎が演じる青年が人気の無い地域で身を潜めながら過ごす様子が映し出されています。彼がどういう状況にあるのかが徐々に明かされていくなかで、同時に彼を取り巻く人々や、彼が新たに出会う人々がこれまで抱えてきた苦悩が描かれていきます。

物語の舞台は2021年の福島ということで、2011年に起きた東日本大震災から10年後にあたるものの、閑散とした町並みや、町の人々の様子を観ると、時間が止まっているかのように感じます。そして、震災はいまだにこの土地に住む人々を苦しめているのだなとわかります。

また、原発事故による影響は健康被害だけではなく、日常生活の細部にも深く影響し、罪悪感を抱えながら生きているキャラクターもいれば、原子力発電所で働いていた人に一方的な憎しみを持つキャラクターもいて、やるせなさを感じます。震災が原因であり、誰も悪くないとしても、自分を含め誰かを責めずにはいられない状況が、苦しみの深さを表しているように感じます。本作で描かれている主人公達が抱える思いの激しさは、震災はまだ終わっていないという叫びのように響いてきます。
デート向き映画判定

ロマンチックなムードになるようなタイプの作品ではないものの、人生観を問う要素があります。メインキャラクターの中には夫婦もいて、こんな時自分達ならどうするかシミュレーションできると思います。観賞後に感想を話すことでも、お互いの人生観を垣間見られる部分がありそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定

皆さんは主人公の青年(前田旺志郎)や真一(窪塚愛流)の目線で観られるのではないでしょうか。震災から10年経ってもまだ影響が残っていて、やり場のない思いが渦巻いています。震災被害が少なかった地域はどんどん“日常”を取り戻していても、そうはいかない状況で苦しんでいる人達の姿を観ると、平穏な日々の尊さにも気づくきっかけになるのではないでしょうか。

『こんな事があった』
2025年9月13日より全国順次公開
イーチタイム
公式サイト
©松井良彦/ Yoshihiko Matsui
TEXT by Myson

- イイ俳優セレクション/井浦新
- イイ俳優セレクション/窪塚愛流
- イイ俳優セレクション/波岡一喜
- イイ俳優セレクション/前田旺志郎(後日UP)