REVIEW
ずっとセリフを浴びていたいと思える作品です。本作を観て、ヴィルジニー・エフィラが演じるマリー=ルー・フォンテーヌと、岡本多緒が演じる森崎真理の間で繰り広げられる対話に混ざりたいと思う方は少なくないでしょう。それくらい引き込まれるので、尺の長さも全然気になりません。

本作は、宮野真生子、磯野真穂著の往復書簡「急に具合が悪くなる」を原作としています。劇中で繰り広げられる対話は、こうしたルーツからきていると知ると納得です。ただ、映画化は大変難しかったようです。

映画公式資料によると、濱口竜介監督はオフィス・シロウズの松田広子プロデューサーからこの書籍の映画化の話をもらった時から、往復書簡の形のままで映画にすることはできないのでは、という考えがあったそうです。一方で、『ドライブ・マイ・カー』以降にもらった企画提案の中で「『急に具合が悪くなる』だけが私を衝き動かす何かを持っているように思え」たと語っています。そうして、最初は良い方策が見つからず、気づけば企画を提案されてから2年ほど経っていたといいます。それでも、こうして完成したのは嬉しいですね。

物語の舞台は、パリ郊外の介護施設です。施設長を務めるマリー=ルー・フォンテーヌは、施設内で理想とするケアを定着させようとするものの、人手不足等の問題もあり、思い通りにできません。そんななか、ひょんなことから森崎真理という日本人の演出家に出会います。

キャラクター達の日常を淡々と描いているようでいて、心が大きく揺らいでいくシーンがいくつも描かれています。第79回カンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒はもちろん、長塚京三、黒崎煌代が名演を披露しています。

資本主義と少子高齢化そして介護の繋がり、「内と外」という捉え方、生きているという定義など、本作には見応えがあり、思考を楽しめるテーマが豊富に詰まっています。

また、生きる勇気をかき集め、死を迎える準備ではなく残った命を使う手伝いをするという姿勢に共感を覚えます。とにかく、良いエキスをたくさん浴びられる作品です。これからも何度も観返したい秀作です。
デート向き映画判定

長尺かつ、観終わった後にアレコレ話したくなるので、時間がゆったりとれる日のデートで観るのが良いでしょう。カップルで観て気まずいシーンはないので、安心して観られます。ただ、一見静かな日常を淡々と描いているので、映画を観慣れていない方を誘うと反応が読めません。一方、会話劇が好きな方ならすごく喜んでくれるでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定

哲学的な話や、社会構造についての話が出てくるので、キッズには少々難しいかもしれません。自分から社会問題や社会構造に興味を持ち、考えることが好きな方にはうってつけの作品です。1人でじっくり観るのも良いですが、同じ好みの友達か家族などを誘って一緒に観ると、鑑賞後の会話まで楽しめそうです。

『急に具合が悪くなる。』
2026年6月19日より全国公開
ビターズ・エンド
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2026年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。





























