REVIEW
同じような毎日を過ごしているだけでは出会えない人とひょんなことから出会い、それまで知らなかった世界を見る。そんな機会は望んだら簡単に得られるわけではなく、どこか運命的に得られるのかもしれません。でも、新たに出会った世界に自分が入っていけるか、その世界に生きる人の心を同じ目線で見て理解できるかは別問題。だから、相手が大切な人であっても、できることは限られていて、何かをすることが相手のためになるのかどうかすら正解はないのだと、本作を観て感じます。

本作の舞台は新宿歌舞伎町です。この町で出会った、アニメにハマっている腐女子の由嘉里(杉咲花)、キャバ嬢のライ(南琴奈)、既婚の No.1 ホスト、アサヒ(板垣李光人)は、それぞれどこか孤独感、空虚感を漂わせています。でも、由嘉里はライやアサヒに出会い、これまでとは異なる人間関係のなかで、自分と向き合うことになります。

ライが由嘉里にかける言葉は、由嘉里の本心に問いかける内容が多く、由嘉里が世間の価値観に流されずに本当の自分に気づくきっかけとなっているように映ります。ライは達観している人物であることは観ていて伝わってくると同時に、達観しているからこそ生まれてくる苦悩もあるのかなと感じます。

ネタバレを防ぐために具体的には述べないでおくとして、本作を観ると、幸せって何だろうと改めて考えさせられます。そして、相手の幸せを願うまではよいとして、何かをしてあげようとする行為は善のようでいて、それほど単純なものではないと気づきます。同時に、どういう状況であれ、手放しに「相手が望む幸せ」を理解することはいうほど簡単じゃないのかもしれません。

とはいえ、人の幸せを願うなという話ではなくて、深い部分で他者を受け入れ、ひいては自分を受け入れるには痛みを伴うけれど、そこを乗り越えて成長できれば、本当の意味で自分らしく生き、他者と共存できる人間になれるのかなという希望をもらえます。今後も節目に観返したくなる作品です。
デート向き映画判定

婚活をしている由嘉里がどういう方向に変化していくのかが見どころの1つです。だから、カップルで観ると2人の状況によっては微妙な空気になるかもしれません。周りが結婚や出産等で焦って婚活をしている方は、由嘉里に共感する部分が多いと思うので、1人で観るほうが気兼ねなく感情移入しながら観られるdしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定

友達や仲間はいるけどどこか孤独や空しさを感じているキャラクター達に共感する方もいそうです。そして、本作はそれまであまり接点を持つ機会がなかった人物同士が心を通わせるストーリーとなっています。先入観を捨てて、他者を理解し、自分も理解してもらえる出会いもあるのかもしれないと希望をもらえる作品なので、ぜひキッズやティーンの皆さんにも観て欲しいです。

『ミーツ・ザ・ワールド』
2025年10月24日より全国公開
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©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員
TEXT by Myson
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情報は2025年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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