特集

映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚

ネタバレ注意!

一昔前、結婚のことを“ゴールイン”と表現していました。今はどうでしょうかね。独身生活の終わりいう意味ならゴールという表現もありなのかもしれませんが、カップルの人生としてはスタート地点です。婚約中や新婚の時期は幸福感があり、仲良くできたとして、結婚したからずっと安泰とはいえません。さらに、相性が良いはずの2人でも油断は禁物。今回は、どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ

1つ目に取り上げるのは、『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』です。邦題では“崖っぷちの夫婦”という副題がついている通り、夫婦関係が悪化していくのだろうと予想できます。ただ、もともとこの2人、とても仲が良くて、お互いを支え合っていたんです。だから、前半だけ観ると、夫婦関係がこじれそうには思えません。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚

『佐藤さんと佐藤さん』に登場する2人の佐藤さんも、根本的には相性が良く見えます。でも、『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』と似たような状況で夫婦関係がこじれていきます。

映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ

『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』と『佐藤さんと佐藤さん』ともに、序盤は夫のキャリアアップを妻が支えています。でも、思わぬところで妻の才能が開花し、家庭の外でも活躍し始めます。一方、夫は思うようにいかないことが続き、妻が働きに出て稼ぎ頭となり、夫は家事や子育てを担うという役割分担になります。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚

女性の社会進出が徐々にとはいえ増えてきた現代において、こういう夫婦がいても良いだろうと考える方は少なくないでしょう。2作品のキャラクター達も同じ意見だろうとうかがえます。ただ、どこかでやっぱりモヤモヤしたものが生まれてきている様子が見てとれます。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの

お互いを尊重し合っていても、各々忙しいなかで心に余裕がなくなってくると、「なぜ、自分だけ?」という不満が湧いてきてしまうのでしょう。そして、この2作品を観ていると、やっぱり当事者や周囲の人々の心の片隅にある性役割に関するバイアスが、余計な一言を生んだり、受け流せば良い言葉に反応させてしまうのだと実感します。

映画『消滅世界』蒔田彩珠/栁俊太郎

では、性役割はもちろん、ジェンダー、セックスという概念そのものが排除されたら、解決するのでしょうか。『消滅世界』では、性愛のない結婚が当たり前になっていて、さらに実験都市エデンでは、子どもを生むのは女性だけではなくなり、子どもを育てるのも血の繋がった親ではなく、“みんなの子ども”“みんなのお母さん”という概念が徹底されています。エデンでは夫婦という概念もありません。ただ主人公は秘かに外の世界で夫だった人物との子が生まれるように裏工作をし、2人でこっそり自分達の子と認識した上で育てようと目論みます。

映画『消滅世界』蒔田彩珠/栁俊太郎

2人の計画が上手くいくのかも気になるところでありながら、本当の衝撃は別の展開にあります。エデンにいる大人全員で、エデンにいる子ども全員を一緒に育てるという方法は、理想的に見える部分もある一方で、誰も個々の子どもに責任を持たなくて良い状況といえます。つまり、エデンの人間関係は全体で大きな家族のようでいて、実際はただの個の集合体でしかありません。そこにもう家族という概念は残っていません。

映画『消滅世界』蒔田彩珠

『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』『佐藤さんと佐藤さん』『消滅世界』を並べて観ると、性役割が夫婦関係を左右する要素の1つといえると同時に、『消滅世界』のストーリーから、性役割が全くなくなってしまったら、別の問題が出てくる可能性も感じます。いずれにせよ共通していえるのは、さまざまな状況を“自分だけ”に都合良く捉えることだと思います。時に割り切るのも必要とはいえ、いつも自分にとって都合の良い解釈で自分の言動を正当化していると、仲の良い夫婦にも暗雲が立ちこめるのかもしれません。ひいてはどんな人間関係にも同じことがいえそうです。

映画『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』オリヴィア・コールマン/ベネディクト・カンバーバッチ/アンディ・サムバーグ/ケイト・マッキノン

『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』
2025年10月24日より全国公開
PG-12
ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚

『佐藤さんと佐藤さん』
2025年11月28日より全国公開
ポニーキャニオン
公式サイト
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

©2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

映画『消滅世界』蒔田彩珠/栁俊太郎

『消滅世界』
2025年11月28日より全国公開
NAKACHIKA PICTURES
公式サイト
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

©2025「消滅世界」製作委員会

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

【映画学ゼミSeason2 第1回】「思考力を鍛える映画鑑賞—その仕組みの探求①オリエンテーション」参加者募集! 【映画学ゼミSeason2 第1回】「思考力を鍛える映画鑑賞—その仕組みの探求①オリエンテーション」参加者募集!

今回から、映画学ゼミSeason2として、プチリニューアルして開催します。Season2のコンセプトは、「思考力を鍛える映画鑑賞—その仕組みの探求」です。

映画『我々は宇宙人』 我々は宇宙人【レビュー】

これは大旋風を巻き起こす予感!才能溢れる傑作を目の当たりにして勝手に震えております(笑)…

映画『To Leslie トゥ・レスリー』アリソン・ジャネイ アリソン・ジャネイ【ギャラリー/出演作一覧】

1959年11月19日生まれ。アメリカ、オハイオ州出身。

映画『モネと時間旅行』アブラム・ヴァプレ/ヴァンサン・マケーニュ/ジュリア・ピアトン/ジヌディーヌ・スアレム モネと時間旅行【レビュー】

REVIEW2026年は、印象派を代表する巨匠クロード・モネ没後100年のメモリアルイヤー…

映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』マーク・マーフィー ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?【レビュー】

本作は、ベトナム戦争を経験した元兵士で帰還後もPTSDに苦しめられた、アレン・ネルソンの実話を基にした作品です…

映画『ナイトボーン -夜哭-』ルパート・グリント ルパート・グリント【ギャラリー/出演作一覧】

1988年8月24日生まれ。イングランド、エセックス州ハーロウ出身。

実写映画『ルックバック』出口夏希/蒔田彩珠 ルックバック【レビュー】

藤本タツキによる原作漫画「ルックバック」は、「2024年には劇場アニメ化され、第48回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞。2026年7月現在、発行部数は100万部を突破して」おり、「本作は、藤本タツキ作品として初の実写映画化」となります…

映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』織田裕二 踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!【レビュー】

『踊る大捜査線』は1997年に連続ドラマとして放送が開始され、「これまでに公開された映画シリーズ8作品の累計動員数は3863万人、累計興行収入は524.1億円.。映画第2弾『踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)は、興行収入173.5億円を記録」した…

映画『私たちは、ちょうどいい。』バービー・フェレイラ/ジョン・レグイザモ 私たちは、ちょうどいい。【レビュー】

普段極力前情報を入れずに観るので、本作の背景も知りませんでした。だから、とてもイイ話だなとウルウルしてたら、最後に…

映画『ナイトボーン -夜哭-』セイディ・ハーラ セイディ・ハーラ【ギャラリー/出演作一覧】

1984年1月1日生まれ。フィンランド・キルッコヌンミ出身。

【映画でSEL】にたどりつくまでの道

今のあなたに必要な非認知能力を伸ばす【映画でSEL】プログラムのご案内

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

【映画学ゼミSeason2 第1回】「思考力を鍛える映画鑑賞—その仕組みの探求①オリエンテーション」参加者募集! 【映画学ゼミSeason2 第1回】「思考力を鍛える映画鑑賞—その仕組みの探求①オリエンテーション」参加者募集!

今回から、映画学ゼミSeason2として、プチリニューアルして開催します。Season2のコンセプトは、「思考力を鍛える映画鑑賞—その仕組みの探求」です。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』ラミ・マレック 映画好きが選んだ実在アーティストの伝記映画ランキング

今回は実在アーティストの伝記映画について、正式部員の皆さんに投票してもらいました。さまざまな有名アーティストにまつわる作品がある中で上位にランクインしたのはどの作品でしょうか?

映画『ズートピア2』 映画好きが選んだ2025アニメ映画ベスト

今回は、2025年に劇場公開されたアニメ映画について、正式部員の皆さんによる投票結果ベスト30を発表!2025年のアニメ映画ベストに輝いたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画学ゼミSeason2 第1回】「思考力を鍛える映画鑑賞—その仕組みの探求①オリエンテーション」参加者募集!
  2. 【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集!
  3. 映画『四月の余白』一ノ瀬ワタル/上阪隼人

REVIEW

  1. 映画『我々は宇宙人』
  2. 映画『モネと時間旅行』アブラム・ヴァプレ/ヴァンサン・マケーニュ/ジュリア・ピアトン/ジヌディーヌ・スアレム
  3. 映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』マーク・マーフィー
  4. 実写映画『ルックバック』出口夏希/蒔田彩珠
  5. 映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』織田裕二

PRESENT

  1. ドラマ『幸せカナコの殺し屋生活2』のん/藤ヶ谷太輔
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP