REVIEW

人数の町

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『人数の町』中村倫也

借金で首が回らなくなった主人公は、借金取りから暴行を受けていたところを黄色のツナギを着た見知らぬ男性に救われ、ある町につれていかれます。そこでは衣食住が保障されていて、自由で平和な生活が送れると言われていましたが…。主人公が連れていかれた町と、その住人、そこを管理する者達の姿を、日本の社会問題にまつわる数字とともに綴った本作は、新型コロナウィルス感染症が流行した今では、ますますリアリティが増して感じられます。貧困や危険にさらされた生活を送ることを余儀なくされている人々が、とにかく生き延びることが大事という価値観になるのは否定できないし、他に生きる術がない人々にとって、そこはある意味ユートピアなのかも知れません。でも、“自由”という名の無責任が蔓延り、上っ面だけの人間関係でそれぞれが都合良く生きているこの町は実際はディストピアで、本作はそんなディストピアでの疑似体験をする機会を観客に与えることで、人生を他人に委ねてしまう恐ろしさを痛感させてくれます。観終わった後にズシンとしたものが残る作品ですが、エンタテインメントとしても見応えがあるので、こんな世界を体験するのが映画だけで済むように、ぜひご覧ください。

デート向き映画判定
映画『人数の町』中村倫也/石橋静河

ラブストーリーの要素もありつつ、カップルで観て気まずいということはないでしょう。人生観を問う内容なので、観終わった後の会話から、自然に自分達の相性がわかると思います。気楽に付き合っているうちは多少人生観が違っても合わせられるかも知れませんが、結婚を考えて付き合っている人は、敢えて相手を見極めるためにも、一緒に観て感想を聞いてみると良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『人数の町』中村倫也/立花恵理

小学生でも内容にはついていけると思いますが、人生観を意識するようになってから観たほうが見応えがあると思うので、せめて中学生くらいになってから観るほうが良さそうです。人の価値観はそれぞれなので、楽して暮らせるこの町に住みたいと思う人がいても仕方がないですが、人生が一生縛られてしまうという怖さを本作から知ってもらえたら嬉しいです。衣食住は大切ですが、それ以外にも人間らしい生き方に必要なものを考えるきっかけになるでしょう。

映画『人数の町』中村倫也/石橋静河/立花恵理/橋野純平/植村宏司/菅野莉央/松浦祐也/草野イニ/川村紗也/柳英里紗/山中聡

『人数の町』
2020年9月4日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト

©2020「人数の町」製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  2. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  3. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  4. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  5. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP