REVIEW

リモノフ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『リモノフ』ベン・ウィショー

REVIEW

1943年生まれのエドワルド・リモノフは、ウクライナ出身で、「詩人、作家、反体制派、亡命者、執事、ホームレス、兵士、活動家、革命家、といくつもの顔」を持っています。彼は作家として活動していた20代に、ソビエト連邦に対する反体制活動で国外追放処分を受けてアメリカに亡命、その後ヨーロッパへ渡りました。ソ連が崩壊した1991年にモスクワへ戻った彼は、1993年に国家ボリシェヴィキ党を共同設立し、反プーチン・反統一ロシア党を掲げ活動していたものの、2020 年にこの世を去りました(映画公式資料)。本作では、20代から晩年までの彼の半生を描いています。

映画『リモノフ』ベン・ウィショー

彼は自身の体験を小説に綴ったと劇中でも述べています。最初からそうした手法をとろうとしていたのかは不明であるものの、愛に飢え、自虐的で破滅的な彼の生き方はまさに小説の主人公のようだし、前述したとおり「詩人、作家、反体制派、亡命者、執事、ホームレス、兵士、活動家、革命家」とさまざまな顔を持っているので、生きることが仕事という印象です。また、生活のために堅実な仕事に就くこともあったり、社会の低層で生きる人々の暮らしを彼自身もしていたことが小説にも政治にも繋がっていったのだなと想像すると、複数の顔を持った生き方に必然性を感じます。

映画『リモノフ』ベン・ウィショー

そして、彼から見たロシアという国は、私達海外の人間が持つステレオタイプのロシア像から印象を変える部分があります。リモノフはアメリカやフランスにも住み、社会主義と資本主義の両方を実際に体験している点で、どちらか一方からしか見ていない人達とは視点の違いがあるのでしょう。だから、リモノフが暮らしたアメリカ、フランスで交わされる会話のシーンは一層興味深く映ります。そうしたシーンは、それぞれの国の人が世界史をどう受け止めて生きているのか、そして各国の立ち位置をどう解釈しているかを象徴していて、軋轢が絶えない世界の縮図を観ているような感覚になります。

映画『リモノフ』ベン・ウィショー

映画公式資料によると、本作はロシアのウクライナ侵攻で撮影が難航し、完成までに5年かかったそうです。そして、キリル・セレブレンニコフ監督は以下のように語っています。

今日起こっているすべては、リモノフが書いたことに端を発している。彼は戦争を望み、ソビエト連邦の再来を望んだ。ロシア政府は、彼やアレクサンドル・ドゥーギンの著作をそのまま実行に移しているのではないかと思うほどだ……昨今の情勢を踏まえ、より一層この暴挙にいたった過程を探る必要性を痛感した。ロシアのファシズムがどこから来たのか、理解するためだ。 (映画公式資料)

映画『リモノフ』ベン・ウィショー

本作を観ると、ロシアという国の成り立ちに興味がさらに湧くとともに、長らく続く外交問題の複雑さを一層感じます。政治への関心が高い方にオススメであるのはもちろん、キリル・セレブレンニコフ監督が描く独特の世界観とリモノフ役を務めたベン・ウィショーの見事な演技は映画ファンにも観て欲しいです。

デート向き映画判定

映画『リモノフ』ベン・ウィショー

ヌードや性描写がやや多めで、過激なシーンも含まれるため、正直なところデートには不向きかなと思います。政治的な話ばかりではなく、ラブストーリーの要素も意外に多いので、夢を追いかけている途中の方と交際中の場合は、考えさせられるところがあると思います。そういう意味でも1人でじっくり観るほうが良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『リモノフ』ベン・ウィショー

エドワルド・リモノフは1943年生まれで、彼の20代あたりからが描かれているので、ソビエト連邦からロシアに変わる過程も含めて振り返ることができます。違った角度で世界史を眺める機会にできそうなので、興味があれば15歳になったら観てみてください。

映画『リモノフ』ベン・ウィショー

『リモノフ』
2025年9月5日より全国公開
R-15+
クロックワークス
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© Wildside, Chapter 2, Fremantle España, France 3 Cinema, Pathé Films.

TEXT by Myson


関連作

「リモノフ」 エマニュエル・キャレール 著、土屋良二(翻訳)/中央公論新社
Amazonで書籍を購入する

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』 ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー【レビュー】

スーパーマリオは、2025年に40周年を迎え、世界中で長らく愛されてきたキャラクター…

映画『これって生きてる?』ウィル・アーネット これって生きてる?【レビュー】

なんとも生々しい夫婦の現実を描いているなと思って観ていたら…

映画『90メートル』山時聡真 山時聡真【ギャラリー/出演作一覧】

2005年6月6日生まれ。東京都出身。

映画『霧のごとく』ケイトリン・ファン/ウィル・オー 『霧のごとく』一般試写会 3組6名様ご招待

映画『霧のごとく』一般試写会 3組6名様ご招待

映画『人はなぜラブレターを書くのか』綾瀬はるか 人はなぜラブレターを書くのか【レビュー】

タイトルから想像する範囲を超える、深い人間ドラマが描かれている本作は、実話を基にして…

映画『君と僕の5分』シム・ヒョンソ/ヒョン・ウソク 『君と僕の5分』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『君と僕の5分』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『フィフス・エステート:世界から狙われた男』ベネディクト・カンバーバッチ 未公開映画活性課ハ行

未公開作品のなかから、当部が気になる作品、オススメしたい作品をご紹介。

映画『五月の雨』安川まり 『五月の雨』【レビュー】

本作は、DV被害者の実状を、ドキュメンタリーにドラマを織りまぜた構成で訴えかけています…

映画『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』イ・レ/チン・ソヨン 大丈夫、大丈夫、大丈夫!【レビュー】

不幸な状況が前提とされているにもかかわらず、ユーモアに溢れ…

映画『OCHI! -オチ-』ヘレナ・ツェンゲル ヘレナ・ツェンゲル【ギャラリー/出演作一覧】

2008年6月10日生まれ。ドイツ出身。

【映画でSEL】にたどりつくまでの道

今のあなたに必要な非認知能力を伸ばす【映画でSEL】プログラムのご案内

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集! 【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集!

感情はまだまだ謎が多く、本当に複雑で深い概念だからこそおもしろい!感情について少しでも知ることで、自分自身の情動コントロールにも少し役立つはずです。

映画『国宝』吉沢亮 映画好きが選んだ2025邦画ベスト

今回は、正式部員の皆さんに投票していただいた2025年邦画ベストの結果を発表!2025年の邦画ベストで上位にランクインしたのはどの作品でしょう?

ショートドラマ『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』 私ならこうする!『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』を観た女子の本音

ショートドラマ『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』をトーキョー女子映画部正式部員の皆さんに観ていただき、感想や「私ならこうする!」を聞いてみました。

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集!
  2. 【映画学ゼミ第6回】「鑑賞者のローカス・オブ・コントロールと、映画鑑賞における着眼点・感想の関係」参加者募集!
  3. 【映画学ゼミ第5回】「登場人物にみる人間の非合理性」参加者募集!

REVIEW

  1. 映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』
  2. 映画『これって生きてる?』ウィル・アーネット
  3. 映画『人はなぜラブレターを書くのか』綾瀬はるか
  4. 映画『五月の雨』安川まり
  5. 映画『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』イ・レ/チン・ソヨン

PRESENT

  1. 映画『霧のごとく』ケイトリン・ファン/ウィル・オー
  2. 映画『君と僕の5分』シム・ヒョンソ/ヒョン・ウソク
  3. 映画『オールド・オーク』デイヴ・ターナー/エブラ・マリ
PAGE TOP