今回は環境問題に強い関心を持つ少女と、そんな彼女に思いを寄せる少年の物語『ふつうの子ども』を取り上げます。
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小学4年生の上田唯士(嶋田鉄太)は、同じクラスの三宅心愛(瑠璃)が気になっています。そして、ある日の授業で、心愛が環境問題に関する作文を読み上げたのを機に、唯士も環境問題について勉強を始め、“共通の関心”から心愛と距離を縮めていきます。そんな2人の様子を見ていた橋本陽斗(味元耀大)は、環境保護を周囲に訴えかけてはどうかと提案し、3人は行動に移します。
※一部ネタバレを含みますので未見の方は鑑賞後に下記をお読みください。

上記のあらすじだけ読むと、とても良い取り組みだと感じるでしょう。でも、3人が行う環境保護への“啓蒙活動”は方法に問題があります。3人は周囲の関心を集めるために突飛な方法をとり、良からぬやり方とはいえ思惑通り注目を集めるようになります。そして、さらに方法が過激になっていきます。

この“啓蒙活動”は子ども達なりの正義が基となっていながら、間違った方向に進んでいきます。彼等の“啓蒙活動”の目的は、本来「大人に【環境問題】の深刻さを訴え、改善のためにもっと真剣になってもらうこと」であったはずです。でも、子どもが訴えても、普通の方法では大人は動いてもらえないと考えて、子ども達は過激な方法をとったのだとしたら、その気持ちも理解できなくはありません。

環境問題に関心を持つこと、そして周囲にも関心を持ってもらえるよう行動を起こすこと自体は良いことです。でも、方法に問題があります。この難しさを本作では描いていて、担任教師や保護者など大人の様子も見どころとなっています。

もう1点注目すべきは、子どもはまだ視野が狭く、物事を多面的に見ることができず、自分達がやったことがどこまで影響するかを予測しきれない点です。本作では、子ども達からすれば「そこまで大ごとになるとは思わなかった」と考えたであろう問題行動が描かれています。

本作のような事態を防ぐために特に必要になるのは、批判的思考、そして倫理観と道徳観です。環境問題に関心を持ち、環境保護活動に取り組む姿勢は良いけれど、環境破壊は誰かだけの責任なのか、今ある環境保護活動の良い点や悪い点はどこかなど批判的に考え、社会のルールに照らし合わせながら、いち個人としても、やっていいことと悪いことを判断する力が増すと、もっと上手な方法を試行錯誤していけるようになるでしょう。

本作には『ふつうの子ども』というタイトルがついているとおり、子ども達の等身大の姿が描かれていて、ホッコリする場面も多くあります。子どもらしさの良い面と、危なっかしい面が合わせて観られます。同時に大人にも気づきを与えてくれる内容です。そういう点で、親子でSELができる作品といえそうです。

『ふつうの子ども』
2025年9月5日より全国公開
murmur
公式サイト
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©2025「ふつうの子ども」製作委員会
TEXT by 武内三穂(認定心理士)
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情報は2025年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

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