学び・メンタルヘルス

これって、良いこと?悪いこと?『ふつうの子ども』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃

今回は環境問題に強い関心を持つ少女と、そんな彼女に思いを寄せる少年の物語『ふつうの子ども』を取り上げます。

【映画でSEL(社会性と情動の学習)】の簡単な解説はこちら
解説動画はこちら
約1分のショートバージョンはこちら

映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太

小学4年生の上田唯士(嶋田鉄太)は、同じクラスの三宅心愛(瑠璃)が気になっています。そして、ある日の授業で、心愛が環境問題に関する作文を読み上げたのを機に、唯士も環境問題について勉強を始め、“共通の関心”から心愛と距離を縮めていきます。そんな2人の様子を見ていた橋本陽斗(味元耀大)は、環境保護を周囲に訴えかけてはどうかと提案し、3人は行動に移します。

※一部ネタバレを含みますので未見の方は鑑賞後に下記をお読みください。

映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃

上記のあらすじだけ読むと、とても良い取り組みだと感じるでしょう。でも、3人が行う環境保護への“啓蒙活動”は方法に問題があります。3人は周囲の関心を集めるために突飛な方法をとり、良からぬやり方とはいえ思惑通り注目を集めるようになります。そして、さらに方法が過激になっていきます。

映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃/味元耀大

この“啓蒙活動”は子ども達なりの正義が基となっていながら、間違った方向に進んでいきます。彼等の“啓蒙活動”の目的は、本来「大人に【環境問題】の深刻さを訴え、改善のためにもっと真剣になってもらうこと」であったはずです。でも、子どもが訴えても、普通の方法では大人は動いてもらえないと考えて、子ども達は過激な方法をとったのだとしたら、その気持ちも理解できなくはありません。

映画『ふつうの子ども』風間俊介

環境問題に関心を持つこと、そして周囲にも関心を持ってもらえるよう行動を起こすこと自体は良いことです。でも、方法に問題があります。この難しさを本作では描いていて、担任教師や保護者など大人の様子も見どころとなっています。

映画『ふつうの子ども』瑠璃/瀧内公美

もう1点注目すべきは、子どもはまだ視野が狭く、物事を多面的に見ることができず、自分達がやったことがどこまで影響するかを予測しきれない点です。本作では、子ども達からすれば「そこまで大ごとになるとは思わなかった」と考えたであろう問題行動が描かれています。

映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃/味元耀大

本作のような事態を防ぐために特に必要になるのは、批判的思考、そして倫理観と道徳観です。環境問題に関心を持ち、環境保護活動に取り組む姿勢は良いけれど、環境破壊は誰かだけの責任なのか、今ある環境保護活動の良い点や悪い点はどこかなど批判的に考え、社会のルールに照らし合わせながら、いち個人としても、やっていいことと悪いことを判断する力が増すと、もっと上手な方法を試行錯誤していけるようになるでしょう。

映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/蒼井優

本作には『ふつうの子ども』というタイトルがついているとおり、子ども達の等身大の姿が描かれていて、ホッコリする場面も多くあります。子どもらしさの良い面と、危なっかしい面が合わせて観られます。同時に大人にも気づきを与えてくれる内容です。そういう点で、親子でSELができる作品といえそうです。

映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃

『ふつうの子ども』
2025年9月5日より全国公開
murmur
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2025「ふつうの子ども」製作委員会

TEXT by 武内三穂(認定心理士)

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『終点のあの子』當真あみ/中島セナ 終点のあの子【レビュー】

『伊藤くんA to E』『私にふさわしいホテル』『早乙女カナコの場合は』などの原作者としても知られる柚木麻子のデビュー作「終点のあの子」が映画化…

映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』ローラ・カーマイケル ローラ・カーマイケル【ギャラリー/出演作一覧】

1986年7月16日生まれ。イギリス出身。

映画『MERCY/マーシー AI裁判』クリス・プラット/レベッカ・ファーガソン MERCY/マーシー AI裁判【レビュー】

人間 vs. AIという構図になっているかと思いきや…

映画『ヒグマ!!』鈴木福/円井わん ヒグマ!!【レビュー】

『先生を流産させる会』『ライチ☆光クラブ』『許された子どもたち』等を手がけた内藤瑛亮監督作ということで、社会問題を絡めた作品だろうと予想…

映画『エクストリーム・ジョブ』リュ・スンリョン/イ・ハニ/チン・ソンギュ/イ・ドンフィ/コンミョン(5urprise) エクストリーム・ジョブ【レビュー】

本作の主人公は麻薬班の刑事5人です。彼等の登場シーンからコミカルで、一瞬で…

映画『パンダプラン』ジャッキー・チェン/フーフー パンダプラン【レビュー】

スター並みに大人気の稀少なパンダが、何者かに狙われ、パンダの里親になったばかりのジャッキー・チェン本人がパンダを守る…

映画『喝采』キャシー・ベイツ キャシー・ベイツ【ギャラリー/出演作一覧】

1948年6月28日生まれ。アメリカ、テネシー州メンフィス出身。

映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2』 ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2【レビュー】

かつて子ども達に人気だったピザレストラン“フレディ・ファズベアーズ・ピザ”で恐ろしい体験をしたマイク(ジョシュ・ハッチャーソン)と妹のアビー(パイパー・ルビオ)、警察官のヴァネッサ(エリザベス・レイル)は、あれから1年半経ち、平穏な日々を取り戻しつつあり…

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』ロムニック・サルメンタ/イライジャ・カンラス アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス【レビュー】

怖い!巧い!物語の舞台はレストランの一席、ほぼ2人の登場人物で展開される会話劇で、ここまでスリリングな作品に仕立て上げるとは…

映画『恋愛裁判』唐田えりか 唐田えりか【ギャラリー/出演作一覧】

1997年9月19日生まれ。千葉県出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
  2. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  3. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン

REVIEW

  1. 映画『終点のあの子』當真あみ/中島セナ
  2. 映画『MERCY/マーシー AI裁判』クリス・プラット/レベッカ・ファーガソン
  3. 映画『ヒグマ!!』鈴木福/円井わん
  4. 映画『エクストリーム・ジョブ』リュ・スンリョン/イ・ハニ/チン・ソンギュ/イ・ドンフィ/コンミョン(5urprise)
  5. 映画『パンダプラン』ジャッキー・チェン/フーフー

PRESENT

  1. 映画『アウトローズ』ジェラルド・バトラー
  2. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  3. 映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ
PAGE TOP