REVIEW

17歳の瞳に映る世界

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『17歳の瞳に映る世界』シドニー・フラニガン/タリア・ライダー

原題が“Never Rarely Sometimes Always”なので何を指しているのかなと思いながら観ていると、途中でその真相は明かされます。そこでこの言葉が何を意味しているかを知った途端に、特に女性にとってはすごく身近なことに感じられるでしょうし、主人公達が抱える問題が誰にでも起こりえることだと認識できます。
本作は、親には言えない悩みを抱えた高校生の女の子オータムが、親友であり従姉妹のスカイラーに支えられ、ペンシルベニアからニューヨークへ向かい、自分達だけで問題を解決しようとする物語です。この旅で半分大人だけどまだ半分子どもである彼女達は、自分達だけでできることの限界を感じると同時に、不本意ながらも女性であることを利用するしかないという現実にも気付いていきます。本作ではオータムの問題の発端については具体的に語られていませんが、問題は誰が彼女にそうしたかということではなく、女性として生まれ、女性として生きていく上でどんな問題にぶつかるのかということや、女性として見られることの意味にあると思います。無力な17歳の少女2人が親に頼らずに問題を解決する姿には、女性として成長するという意味に、社会の現実を受け入れるしかないという側面も見えます。正直なところ、とても複雑な心境にさせられるストーリーですが、多くの女性が彼女達と同じような感覚に陥ったことがあるはずで、改めて女性として生きることの意味を実感させられます。
肯定するでもなく、否定するでもなく、ただありのまま社会で起こっていることを描いていると思えるストーリーと演出が見事で、説教臭くなるわけでもなく、ただただ目の前にある現実が心に突き刺さります。真逆のキャラクターといっても良いオータムとスカイラーがお互いに支え合い、認め合う姿も印象的で、そういったさりげない言動の一つひとつに、この世の中に負けずに生き抜くヒントが隠されているようにも感じました。観ているといろいろな思いや考えが巡る作品で、主人公達と同じ世代の方はもちろん大人にも観て欲しい1作です。

デート向き映画判定
映画『17歳の瞳に映る世界』タリア・ライダー/セオドア・ペレリン

内容的にデートの雰囲気が盛り上がるタイプの作品ではありません。人によってはオータムが置かれた状況の深刻さや彼女の辛さ、スカイラーの決意の重みがピンとこない可能性もなきにしもあらずで、万が一理解不足が感想に表れたりするとややギクシャクするかもしれません。でも、言葉にして伝えないと伝わらないこともあり、本気で付き合っている相手なら、敢えて感想をぶつけ合うことで理解を深めることもできるのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『17歳の瞳に映る世界』シドニー・フラニガン

小学校高学年以上、ティーンの皆さんは、これからこういった現実を目の当たりにすることがあると思うので、ぜひ観ておいて欲しいです。主人公達と同じような出来事が起こるわけでなくても、彼女達が置かれている状況は万国共通、私達の身の回りにもあります。大きくなると人それぞれの価値観、自分の選択で問題を解決していかなくてはいけなくなるので、万人に共通した正解というのはありませんが、自分ならどうするかイメージしながら観ると、自分なりの対処法は見つけられるかもしれません。

映画『17歳の瞳に映る世界』シドニー・フラニガン/タリア・ライダー

『17歳の瞳に映る世界』
2021年7月16日より全国公開
ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト

©2020 FOCUS FEATURES, LLC. All Rights Reserved.
©2020 FOCUS FEATURES LLC

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ハルビン』ジャパンプレミア:ヒョンビン、リリー・フランキー、ウ・ミンホ監督 リリー・フランキーが体験したヒョンビンの優しいエピソードとは?『ハルビン』来日ジャパンプレミア

ヒョンビン主演のサスペンス・アクション映画『ハルビン』が、7月4日より全国公開となります。その公開を記念し、ヒョンビンとウ・ミンホ監督が来日し、さらに本作で伊藤博文役を演じたリリー・フランキーが登壇するジャパンプレミアが行われました。

映画『サブスタンス』デミ・ムーア デミ・ムーア【ギャラリー/出演作一覧】

1962年11月11日生まれ。アメリカ、ニューメキシコ州出身。

映画『アスファルト・シティ』ショーン・ペン/タイ・シェリダン アスファルト・シティ【レビュー】

ニューヨークのブルックリンを舞台に救急隊員が直面する日常を描いた本作は、シャノン・バーク著「Black Flies」(2008)を原作として、『暁に祈れ』のジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督が映画化…

映画『Mr.ノボカイン』レイ・ニコルソン レイ・ニコルソン【ギャラリー/出演作一覧】

1992年2月20日生まれ。アメリカ出身。

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』綾野剛/柴咲コウ/亀梨和也 でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男【レビュー】

怖い、ものすごく怖い。いろんな意味で本当に…

映画『おいしくて泣くとき』美村里江 美村里江【ギャラリー/出演作一覧】

1984年6月15日生まれ。埼玉県出身。

映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人 ババンババンバンバンパイア【レビュー】

運命的な出会いから、銭湯に住み込みで働いている450歳のバンパイア森蘭丸(吉沢亮)は、銭湯の一人息子、李仁(板垣李光人)が童貞のまま18歳になるのを…

映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也 心理学から観る映画55:推し活がもたらす幸福感『君がトクベツ』

今や「推し活」「推し」という言葉はすっかり浸透しました。なぜ、人が推し活にハマるのかといえば、きっと幸福感があるからでしょう。そこで、今回は推し活が与える幸福感について、『君がトクベツ』のストーリーをもとに考えます。

映画『メガロポリス』アダム・ドライバー/ナタリー・エマニュエル メガロポリス【レビュー】

“ゴッドファーザー”シリーズ、『地獄の黙示録』など、映画史を語る上で欠かせない巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が、私財を投じて製作した本作は、40年もの構想を経て完成…

特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉 高畑勲展 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉 1名様 プレゼント

映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 2名様プレゼント

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  2. 映画でSEL:告知1回目
  3. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット

REVIEW

  1. 映画『アスファルト・シティ』ショーン・ペン/タイ・シェリダン
  2. 映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』綾野剛/柴咲コウ/亀梨和也
  3. 映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人
  4. 映画『メガロポリス』アダム・ドライバー/ナタリー・エマニュエル
  5. 映画『F1®/エフワン』ブラッド・ピット/ダムソン・イドリス

PRESENT

  1. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP