REVIEW

シモーヌ フランスに最も愛された政治家【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』エルザ・ジルベルスタイン

私はシモーヌ・ヴェイユの数々の功績を本作で知りました。これほどの功績をあげた政治家は世界中を見ても稀なのではないでしょうか。彼女には他の政治家とは比べものにならない信念と熱意があります。彼女が政策を実現しようとする背景には壮絶な過去がある点にも驚かされます。ユダヤ人のシモーヌは、10代でアウシュビッツの強制収容所に入れられ、大変苦しい経験をしたサバイバーです。生き延びた強さがあると同時に生き延びた罪悪感が彼女をずっと苦しめています。子どもの頃から聡明さを発揮していた彼女は、大好きだった母の教えに従い、自立した女性となるべく勉学に励み、社会に貢献する仕事に就きます。若かりし頃から弱い人間の尊厳、権利を守ることに使命を感じて行動する姿には並々ならぬ覚悟が滲み出ていて、本当に尊敬します。
本作はシモーヌが自身の回顧録を残そうとする過程で過去に向き合う視点で描かれています。だからかなりプライベートな内容に踏み込み、彼女にとって思い出すのも苦しい出来事が明かされていきます。ナレーションには、記憶と歴史は異質なものであるいう言葉がある点でも、彼女が政治家である前に1人の人間として、どう生きてきたかが語られていることがわかります。これは私の個人的な解釈ですが、彼女は政治家になりたかったというよりは、世界を本気で救う意志があったからこそ、それを実現するために政治家になることを選んだのだと感じます。国内外の選挙や政治家の言動を見ていると、その多くは口先では利他的であっても、実質は利己的です。世の中を変えたいというよりも自分が政治家になりたいだけの人が多いようにも思います。本作を観ると、政治家が本来あるべき姿がわかります。映画ファンはもちろんのこと、本作はぜひ政治に関わる方々に観ていただきたいです。

デート向き映画判定
映画『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』エルザ・ジルベルスタイン

今よりもっと男性社会であった時代から、周囲の無理解にひるむことなく社会問題の数々を解決していったシモーヌの物語は、現代を生きる多くの女性の心に響くでしょう。さらに彼女は3人の子どもを育てながら、多忙な日々を送っていました。そこで、シモーヌと夫のパートナーシップは、どうなっていたか気になる方もいると思います。一生添い遂げたいと考えている相手がいる方は、本作を一緒に観ると自分達のパートナーシップを客観視できるし、感想を述べあうことでお互いの人生観を知るきっかけにできそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』レベッカ・マルデール

多忙なお母さんは家に不在になりがちなので、子どもからすると寂しいのは当然です。でも、お母さんが世の中を良くするために一生懸命働いていたら、少し感じ方は変わるかもしれません。寂しいことに違いはありませんが、何もわからないよりは、お母さん目線で物事を見てみると少し気が楽になる部分があるでしょう。忙しいお母さんの日常を覗くような感覚で観てみてください。ただし、本作は時代が行ったり来たりするので集中力が必要です。内容的にも中学生以上が対象かなと思います。

映画『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』エルザ・ジルベルスタイン

『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』
2023年7月28日より全国順次公開
アット エンタテインメント
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS – FRANCE 2 CINÉMA – FRANCE 3 CINÉMA

TEXT by Myson

本ページの情報は2023年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

【東京コミコン2025】オープニング:イライジャ・ウッド、カール・アーバン、リー・トンプソン、トム・ウィルソン、クローディア・ウエルズ、ダニエル・ローガン、ジョン・バーンサル、クリスティーナ・リッチ、イヴァナ・リンチ、ノーマン・リーダス、ショーン・パトリック・フラナリー、ジャック・クエイド、マッツ・ミケルセン、浅野忠信、ピルウ・アスベック、セバスチャン・スタン、ジム・リー、C.B.セブルスキー、フランク・ミラー、クリストファー・ロイド、中丸雄一(MC)、伊織もえ(PR大使)、山本耕史(アンバサダー) 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』一行や人気アメコミ出演者達が勢揃い!【東京コミコン2025】オープニングセレモニー

年末恒例行事となった東京コミコンのオープニングセレモニーを取材してきました。今年は過去最高といえるのではないかという数のスター達が来日してくれました。

映画『ズートピア2』 ズートピア2【レビュー】

さまざまな動物達が人間と同じように暮らすズートピアを舞台にした本シリーズは…

映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル エディントンへようこそ【レビュー】

アリ・アスター監督とホアキン・フェニックスの2度目のタッグが実現した本作は、メディアの情報に翻弄される人々の様子を…

映画『愚か者の身分』林裕太 林裕太【ギャラリー/出演作一覧】

2000年11月2日生まれ。東京都出身。

映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン ペンギン・レッスン【レビュー】

『ペンギン・レッスン』というタイトルが醸し出す世界観、スティーヴ・クーガンやジョナサン・プライスといった名優がメインキャストに名を連ねていることからして…

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

映画『ナイトフラワー』北川景子 北川景子【ギャラリー/出演作一覧】

1986年8月22日生まれ。兵庫県出身。

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年11月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年11月】のアクセスランキングを発表!

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『ズートピア2』
  2. 映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル
  3. 映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン
  4. 映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平
  5. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP