REVIEW

動物界【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『動物界』ロマン・デュリス/ポール・キルシェ

REVIEW

日本で観られるフランス映画としては、どこか新鮮味を感じる作品です。物語の舞台は近未来のフランス。そこでは、原因不明の突然変異で人間が動物に変化していく奇病が流行しています。フランソワ(ロマン・デュリス)は、妻のラナが奇病にかかり、息子のエミール(ポール・キルシェ)と2人暮らしをしています。2人はラナと再び一緒に暮らすことを望み、新天地へ引っ越します。そんな矢先、近所で“新生物”を移送中の車両事故があり、複数の“新生物”が逃げ出します。
映画公式資料によると、本作の企画の発端は、トマ・カイエ監督が審査員として参加していたラ・フェミス(国立高等映像音響芸術学校)の学生ポリーヌ・ミュニエのオリジナル脚本だといいます。そして、カイエ監督はミュニエをチームに引き入れ、本作を作ったそうです。カイエ監督は、突然変異という題材は含まれるものの、終末ものの映画には関心がなく、「現在の生態系問題に関する緊急性を念頭に置きつつ、世界に現生している人間以外のものとの交流を、新しい切り口によって探りたかった」と述べています。そうした背景は、本作のリアリティに通じているのがわかります。

映画『動物界』ロマン・デュリス/ポール・キルシェ

動物に変化していく過程や、完全に動物化した人達のルックスはとてもリアルで、変化に伴う痛みも生々しく描かれています。少しずつ動物的な仕草や態度になっていく様を演じる俳優達の演技も見事です。世界観としては、ファンタジーの要素もありながら、良い意味で派手さが鼻につかず、現実世界で起こっているように見せる演出が効いています。

映画『動物界』ロマン・デュリス/アデル・エグザルコプロス

健康な人間の中には、奇病にかかり“新生物”と化していく人達を忌み嫌ったり、恐れたりする人もいれば、共生しようとする人もいます。だから、健康な人間同士でも分断が起こり始めます。こうした光景は、新型コロナウィルスが流行した時の混乱を想起させます。でも、本作のストーリーでは、人間が動物に変わり、意思の疎通が難しくなり、場合によっては凶暴化する点で、さらに複雑な状況が描かれています。こうした状況が他人事ではなく、自分や自分の家族に起こったら、人はどんな判断を下すのでしょうか。それが本作の1番の見どころとなっています。
クライマックスはハラハラドキドキ感が高まる、最後まで結末が読めない展開が続きます。家族を思う心はどんな決断を下すのか。ぜひ自分ならどうするか考えながら、この世界に浸ってください。

デート向き映画判定

映画『動物界』ポール・キルシェ

メインストリームではないものの、ラブストーリーの要素もチラッとあります。描かれているのは初々しい恋愛なので、デートで観て気まずくなるほどではないでしょう。逆に一部痛々しいシーンがあるので、そうした描写に免疫があるかどうかで、誘って大丈夫か判断したほうが良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『動物界』ロマン・デュリス/ポール・キルシェ

本作の宣伝では“アニマライズ・スリラー”とあり、確かに怖い部分はあるといえます。一方で、あの動物になったらどんな感覚になるんだろうとか、一瞬ならなってみたいと思えるシーンもあります。皆さんと同世代のエミールは、そうした揺れる感覚を持つキャラクターです。家族や友達との関係に悩む姿にも共感できるところがあるでしょう。

映画『動物界』

『動物界』
2024年11月8日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2023 NORD-OUEST FILMS – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINÉMA – ARTÉMIS PRODUCTIONS.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ひゃくえむ。』 ひゃくえむ。【レビュー】

魚豊著の『チ。 ―地球の運動について―』がすごく好きなので、絶対に本作も…

映画『お嬢と番犬くん』櫻井海音 櫻井海音【ギャラリー/出演作一覧】

2001年4月13日生まれ。東京都出身。

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ セレステ・ダッラ・ポルタ【ギャラリー/出演作一覧】

1997年12月24日生まれ。イタリア出身。

映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ ブロークン 復讐者の夜【レビュー】

『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』などを手掛けたサナイピクチャーズが贈る本作は…

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ Dear Stranger/ディア・ストレンジャー【レビュー】

真利子哲也監督(脚本も担当)による西島秀俊主演作という情報のみで、毎度ながら前情報をほぼ入れずに観て、いろいろ良い驚きが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『ひゃくえむ。』
  2. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  3. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  4. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流
  5. 映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP