REVIEW

タイトル、拒絶

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『タイトル、拒絶』伊藤沙莉

すごくエネルギッシュな作品で、それぞれのキャラクターがもがきながらも生きる本能をたぎらせています。本作は、雑居ビルにある店でデリヘル嬢達の世話係をしている主人公のカノウ(伊藤沙莉)が、金とセックスにまみれた世界に紛れ込み、何を思うのかを描いています。人間は金とセックスに溺れるものだとよく言いますが、本作を観ると、本当は溺れきることなんかできなくて、浸かってみると違うものが見えてきてしまうんじゃないかということを強く感じます。それはそれですごく怖い!つまり、もしそこを逃げ場だと考えたとしても、そこにさえ逃げ場はないということ。そんなブラックホールのようなところに入り込んでしまったキャラクターの中には、無理矢理折り合いをつけようとする者もいますが、内面では何かが壊れていっている様子も描かれています。
一方で、カノウのように一歩引いた立場からこの世界を観るとどう見えるのかと考えるわけですが、一般社会では理想に届かない、だからといって絶望も仕切れない、とはいえとことん落ちぶれる勇気もなくて、半殺しにされたような心境になります。それでも、皆に同じように新しい日がやってくるわけですが、何があっても生きていかなければいけないという現実を目の当たりにさせる結末に、一種の厳しさと優しさを感じます。女性として見られること、女性として生きることについても、観る側に問題を投げかけてくる内容なので、女子の皆さんは特に感情移入できる作品だと思います。

デート向き映画判定
映画『タイトル、拒絶』恒松祐里

デリヘル嬢達の日常を描いてはいるものの、それほど濡れ場は出てきません。でも、そもそもこの映画を観ようと合意する時点で、そういうシーンがあるかもしれないとお互いにわかった上で観るはずなので、気まずいことはないように思います。デートの雰囲気が盛り上がるような内容ではないですが、逆に好きでもない相手と関係を持たなければいけない状況を観て、自分達が好きな相手と普通に付き合えることが幸せだと感じられるのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『タイトル、拒絶』伊藤沙莉/恒松祐里/佐津川愛美

だんだん大人になると、お金や性的な問題が身近になってきます。それは自分で責任をもてるようになったということでもあるし、単純に周囲の人の悩みやトラブルに巻き込まれることも増えるということでもあります。人間関係がどんどん複雑になっていくのは避けられませんが、そこで直面するいろいろな問題をどう対処するのかは、皆さんの価値観次第です。そこで手っ取り早い解決策だと思って、金やセックスで解決しようとしても、さらなる問題に発展することもあります。そんなことをいろいろとシミュレーションさせてくれるストーリーです。15歳未満の人は観られませんが、高校生になったら観てみてください。

映画『タイトル、拒絶』伊藤沙莉/恒松祐里/佐津川愛美/片岡礼子

『タイトル、拒絶』
2020年11月13日より全国順次公開
R-15+
アークエンタテインメント
公式サイト

©DirectorsBox

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

映画『君の顔では泣けない』芳根京子 芳根京子【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月28日生まれ。

映画『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー 『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー

今回は『白の花実』に出演する美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんにお話を伺いました。撮影前に準備されたことや、本編を観た感想を直撃!

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  2. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  4. Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック
  5. 映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP