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『Eggs 選ばれたい私たち』川崎僚監督インタビュー

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映画『Eggs 選ばれたい私たち』川崎僚監督インタビュー

子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)に志願した主人公達の姿を描いた映画『Eggs 選ばれたい私たち』の川崎僚監督にリモートインタビューさせていただきました。ご自身もエッグドナー登録会に参加された監督に、ご自身の経験や体験を含めてお話を伺いました。

<PROFILE>
川崎僚(かわさき りょう):監督・脚本
1986年11月17日生まれ。大分県出身。早稲田大学第二文学部卒業。在学中に演劇、映像の理論を学び、卒業後に俳優の道へ進んだ後、シナリオライターに移行し、プロットライターとして映画やドラマの企画開発に携わる。2013年4月に映画制作を学ぶためニューシネマワークショップを受講。その後、短編映画の監督を続け、数々の国内映画祭に参加。2018年には初長編映画『Eggs 選ばれたい私たち』にて、国際映画祭連盟登録のタリン・ブラックナイツ映画祭に参加。『万引き家族』とともに日本映画代表作として紹介され、海外映画祭デビューを果たした。2019年は、文化庁委託業務“ndjc2019:若手映画監督育成プロジェクト”にて製作実地研修の参加監督に選抜された。35mフィルムにて撮影された短編映画『あなたみたいに、なりたくない。』は2020年2月に劇場公開された。

エッグドナーを題材にした話というより、自分で選ばれるという意識の話にしたかった

映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵

シャミ:
すごく興味深い内容で、知らなかったことも多く、勉強にもなりました。そもそも監督が、子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナーというテーマに興味を持った理由を聞かせてください。

川崎僚監督:
最初に卵子提供で子どもを授かって子育てをしているご夫婦の新聞記事を拝見したんです。それについて私自身は、お2人が選んだ道だし、社会が子どもを持ちましょうと言っている時代ですし、良いことだなと捉えていたんです。でもニュース記事のコメント欄には、「血が繋がっていないから親子じゃない」とか、第三者がバッシングしているコメントもあって、すごくビックリしました。なぜ人の価値観を否定するのか不思議だったんです。それと同時に、卵子提供をする側にもとても興味を持って、調べていくうちにエッグドナーという卵子提供をするドナー登録があるということを知りました。私は当時、純子と同じように30歳手前で、結婚をするつもりはなかったのですが、10〜20歳上の先輩が「結婚しなかったことは後悔していないけど、子どもは産んでおけばよかった」って皆さん言っていたんです。だから、「私もいつかそういう気持ちになるのかな?」と、ちょっと不安もあって、そういう時にドナー登録をすることで、相手のご夫婦にもプラスになるし、私も気持ち的に成し遂げられなかったことを成し遂げられるような感じがしたんです。それでドナー登録説明会に行き、こうして映画の企画になりました。

シャミ:
女性の体の性質の問題もあると思うのですが、エッグドナーの登録は29歳までで、純子も30歳になる直前にドナー登録をしていましたが、20代でエッグドナー登録の決断をすることは結構難しいのかなと思いました。そういった年齢制限があるなかでドナー登録の決断をすることに対して、監督ご自身はどう思いますか?

川崎僚監督:
すごく勇気のあることだなと思います。私の場合は勇気が持てなかったのでドナー登録ができなかったんです。私のお母さんが、自分の血が繋がった子がどこかにいるということをどう感じるのかと思って。ドナー登録説明会の時は担当の方が1対1で時間をかけて「こういう方もいますよ」とか丁寧に説明してくださいました。やっぱり両親に言わない人もいるようですが、私の性格的にお母さんに言わないで登録することはできないと思ったんです。だから、主人公の純子と葵は、私の理想というか、もし決断していたらどういう道に進んだのかというものを描いています。それから、タイムリミットも来るんですけど、これまで淡々と生きてきたなかで何か1つ前に踏み出したいというもどかしさも描きたかったんです。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』川崎僚監督インタビュー

シャミ:
なるほど〜。本作ではドナー登録をするところから始まっていて、ドナーに選ばれるor選ばれないという部分が描かれているのがおもしろいなと思いました。監督はどうしてそこを描こうと思ったのでしょうか?

川崎僚監督:
今は多様性について言われる時代で、好きなことを選んで良いはずなのに、なぜか“選ぶ”より“選ばれる”という意識が日本人の中に強い気がするんです。就職でも“自分が企業を選ぶ”ではなく、“企業が自分を選ぶ”だし、婚活とか恋愛も相手に“選ばれる”みたいな、何かネガティブですよね。20代後半や30歳を過ぎてもまだまだ人生では若いはずなのに、なぜか女性としての何かが変わってしまう劣等感を無意識に社会から植え付けられている気がするんです。だから、エッグドナーを題材にした話というより、自分で選ばれるという意識の話にしたかったんです。

シャミ:
エッグドナーの制度自体についても伺いたいのですが、卵子を摘出して謝礼金がもらえることだとか、あとは30歳という年齢制限があるなど、具体的なことを本作で初めて知りました。監督的にはこの制度についてどんな考えをお持ちでしょうか?

川崎僚監督:
まず、海外に行って卵子の摘出をすることが本当に意味がわからないなと思います。日本できちんと法整備がされていないので、わざわざコストをかけて海外まで行って、しかも2〜3週間滞在して、毎日自分で卵子を誘発するための注射を打つそうです。でも、もし日本でできたら、普通に働いているなかで、お休みを合わせれば良いだけなので、今はすごく幅が狭まっていると思うんです。これだけ社会が子どもを産む人を増やそうという状態なのに、ナンセンスですよね。あと、30歳という年齢制限は、厳密に法整備されていないので必ずそうとは限らないようです。例えば、30代前半だけど子どもを2回産んでいますという出産経験がある人だと、逆にちょっと有利らしいです。ドナー登録をして海外で卵子を摘出して、それが受精卵になるのかはやってみないとわからないんですよね。賭けみたいなところもあるので、だから出産経験のある方だと、提供される側も少し安心されるようです。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵/川合空

シャミ:
子どもの有無や、子を持つにしても自ら産んで育てるのか、エッグドナーや養子縁組など、さまざまな選択肢があると思います。監督ご自身は、こういった選択肢や子を持つことの意味についてどうお考えですか?

川崎僚監督:
正直、20代後半はすごく焦っていたのに、30代に入ると私自身も子どもを産むとか結婚をするということに良い意味で執着しなくなったんです。本来は年齢制限がないもので、結婚なんて60歳になってからしたって良いわけだし、子どもは確かに自然妊娠をするなら年齢も関係してきますが、だからといって自分が取った選択肢を人に押し付けることはしなくて良いと思うんです。だから新聞記事の夫婦が納得してエッグドナーを使おうと思ったならそれで良いんですよ。養子縁組や代理出産でも、それで幸せな人が増えるんだったら良いじゃないですか。自分自身と自分の家族が幸せだったら良いと思うんです。結婚しているから偉いわけでもないし、結婚しているから幸せということもないので、価値観や生き方に優劣を付けないでフラットに生きられたら良いなとすごく思います。

シャミ:
本当にそうですよね。20代後半くらいから「結婚しないの?」「子どもは産まないの?」とか、次から次へと言われることはどうしてもあるなと思いますし、昔からどうしてこんなに変わらないのかなとも感じます。

川崎僚監督:
そうなんですよね。女性は結婚、出産、子育てをして幸せなんだという価値観の根付き方がすごくて、特に両親や親戚にプレッシャーをかけられることがありますよね。私自身、従姉妹のお姉ちゃんの結婚式に出席した時に、あちらのおばあちゃんに「何で結婚しないの?」って聞かれたことがあって、「しなきゃいけないものなの?」って思いました。やっぱりそういう時代に生きていて、結婚をお見合いですることが今よりも多かった方達だから難しいのかなと思います。でも少しずつお互いに歩み寄りたいし、私が年を重ねた時に若い子に同じように思うかもしれないので、常に価値観をアップデートしていけたら良いなと思います。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』川合空

シャミ:
監督ご自身のお話も伺いたいのですが、大学卒業後、俳優の経験を経てシナリオライター、プロットライター、監督へというキャリアをお持ちですが、映画を作ることに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

川崎僚監督:
大学時代にミュージカルのサークルに入りまして、戯曲が好きでそれでストレートプレイがしたいなと思って俳優として事務所に入りました。でも、全然売れなくて、「私は何をやっているんだろう?」と思って、その時に、脚本家になりたかったことを思い出して、脚本家志望に戻ったんです。その時はシナリオセンターというスクールに通っていました。私は映画が好きで脚本家をやりたかったんですけど、脚本家志望の人達はドラマ好きが多かったんです。それでちょっと違うのかなと思っていた時に、『横道世之介』という映画が公開されて、その時に沖田修一監督がシナリオセンターで講座をされていたので参加しました。そしたら沖田監督が学生時代にハンディカムで撮った短編映画を見せてくださって、『横道世之介』は昭和の新宿を再現していてすごく規模の大きい豪華な映画だったので、私にはあれは撮れないなと思っていたんですけど、ハンディカムでなら撮れると思ったんです。沖田監督が「ぜひ一度撮ってみてください」とおっしゃっていて、それがすごく印象的で、やらないよりやったほうが良いなと思ってやってみました。

シャミ:
映画にまつわるいろいろなお仕事に携わってきているので、映画作りにその経験が役立つことも多そうですね。

川崎僚監督:
その通りです。20代前後の良い時期に俳優業を一生懸命やったことが何にもならなかったと、当時はショックだったんですけど、あの時に演出を付けてもらって自分で演じたからこそ今演出でわかることもあります。私は人生でいろいろなことをしてきたけど、何一つ無駄になっていないんだなって。とりあえずやらないよりはやろうと思って動いていたので、それが正解だったなと思います。

シャミ:
本当ですね。年齢や性別などで自分に制限をかけるのではなく、いろいろなことにチャレンジしていくことは本当に大切なことだなと思います。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵

川崎僚監督:
人生はずっと健康的にいられたら、90歳、100歳まであるじゃないですか。今はまだ30歳、40歳で、何をそんなに制限をかけて決めないといけないのだろうと思います。私が今決めているのは、60歳になったら社交ダンスをやって、75歳くらいから友達と一緒に劇団をやろうって言っていて、俳優の友達に逆に演出を付けてもらおうと思っています。

シャミ:
じゃあまた俳優もやろうということですか?

川崎僚監督:
そうです。老後の楽しみで。

シャミ:
素敵ですね!監督のお話を聞いていると、自分のやりたい方向に進んでいくことの大切さをすごく感じるのですが、何か悩んでいたり、これから何かやろうと思っているけど、年齢や周りの声を気にして動き出せない人も多いと思います。そういう方に向けて何かメッセージがあればお願いします。

川崎僚監督:
周りの目は気にしないで良いと思います。それと自分のネガティブな気持ちも気にしなくて良いと思います。難しく考えないでまずは第一歩を踏み出すことで、自分が変わる大切なきっかけになると思うので、やらないよりはやったほうが良いということを覚えておいて欲しいなと思います。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』川崎僚監督インタビュー

シャミ:
では最後に皆さんに定番で聞いている質問なのですが、これまで影響を受けた映画もしくは俳優・監督などがいたら教えてください。

川崎僚監督:
伊丹十三監督が大好きです。『マルサの女』が好きで、情報映画でこんなことをやっていたんだという驚きがあって、私もそういう驚きのある映画が作りたいなと思いました。今回の『Eggs 選ばれたい私たち』は、エッグドナーの情報映画になっていますが、『マルサの女』は正義と悪の男女に恋愛でもなく、何とも言えない独特なパートナーシップが描かれたお話なんです。それがすごく魅力的で、内縁感情とか家族愛とも違う友情とも何とも言えない人と人との関係って一言じゃ表せないと思うんです。だから、この映画の場合、純子と葵って従姉妹ではあるけど、友達なのか、どういうパートナーなのかというのは表さなくて良いと思ったんです。人と人との繋がりみたいなものや、その人特有のものを描きたかったんです。だから全然作風は違うんですけど、そういう部分は『マルサの女』から影響を受けています。

シャミ:
本日はありがとうございました。

2021年2月1日取材 TEXT by Shamy

映画『Eggs 選ばれたい私たち』寺坂光恵/川合空

『Eggs 選ばれたい私たち』
2021年4月2日より全国順次公開
監督・脚本:川崎僚
出演:寺坂光恵/川合空/三坂知絵子/湯舟すぴか/新津ちせ/みやべほの/見里瑞穂/斉藤結女/荒木めぐみ/鈴木達也/生江美香穂/高木悠衣/森累珠/加藤桃子/すズきさだお/松井香保里
配給:ブライトホース・フィルム

子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)に志願した独身主義者の純子は、ドナー登録説明会に参加し、偶然、従姉妹の葵に再会し、彼女がレズビアンであることを知る。恋人に家を追い出された葵は、純子の家に転がり込み、2人はどちらがエッグドナーに選ばれるかという期待と不安を感じながら、いつしか「遺伝子上の母になりたい」という同じ目的に向かって新たな生活を始め…。

公式サイト  REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会
監督写真:西田幸司

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