REVIEW
香港映画に対する誇りと、香港映画や映画作りに関わる人達を守りたい気持ちが交錯するストーリー。本作の主なキャラクターは、過去に難易度の高いスタントの撮影で起きた出来事がきっかけで映画制作から身を引いたアクション監督のサム(トン・ワイ)と、現在アクション俳優として活躍するワイ(フィリップ・ン)、子どもの頃に観たアクション映画がきっかけでスタントマンを目指すロン(テレンス・ラウ)です。世代や立場が違う3人がそれぞれの立場で、アクション映画制作に携わる姿を描いています。

常識を超えるレベルでスタントマン達が体を張って撮られてきた香港のアクション映画だからこそ、その魅力、強みにこだわりたくなる気持ちもわからなくはありません。一方で、本当に命を落としたり、体が不自由になってしまうリスクを負ってまで、映画作りをするべきなのか、常に頭を悩ませてきたのだろうと思います。だから、本作でみられる、世代の違うスタントマン、アクション監督の思いのぶつけ合いは、香港映画界の等身大の姿なのかもしれません。

本作では、世代間の違いを徐々に越え、お互いに歩み寄りながら作品を作っていく姿にホッと一安心できる場面があるものの、そんなに簡単にいくはずはありません。一難去ってまた一難というように、何度もお互いがぶつかり合い、個々にも自分自身の中で葛藤を繰り返していく姿が描かれています。監督がやれといえばやるという風潮も相まって、最後の最後まで、どうなってしまうのか目が離せない展開が続きます。香港のアクション映画が大好きな身としては、香港映画に陰りを感じて焦るキャラクター達の姿にキュンと胸が締め付けられます。

本作は、映画作りへの葛藤やアクションシーンが見どころでありつつ、キャストも魅力的です。まずは『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』でソンヤッ(信一)を演じたテレンス・ラウが登場するなり目を奪われるはず。テレンス・ラウが本作で演じるロンは、何とも爽やかで健気なので応援せずにはいられません。同じく『トワイライト〜』の好演が印象深いフィリップ・ンも活躍。フィリップ・ンは『トワイライト〜』では超強い悪役でしたが、本作ではアクションスターを演じていて雰囲気がガラッと違います。サム役のトン・ワイは『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』(1992)などに出演し、アクション監督として香港電影金像奨最優秀アクション設計賞を7度も受賞したベテラン俳優で、世代を代表する俳優が揃っています。

香港のアクション映画といえば、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、サモ・ハン、ジェット・リー、ドニー・イェンなど多くのアクションスターを排出してきました。特に1980年代には、無謀ともいえる危険なアクションを取り入れた作品が隆盛し、香港のアクション映画を支えてきたスタントマンの実態はドキュメンタリー映画『カンフースタントマン 龍虎武師』で詳しく知ることができます。良かったら合わせて観てみてください。
デート向き映画判定

恋愛要素は描かれていないものの、結婚を間近に控えた娘と父の物語も重要な要素となっています。同時に、仕事か家族かというテーマも含まれているので、カップルとしては深く関心が持てる要素があるといえます。状況は全く異なるとはいえ、映画に絡めてざっくばらんに仕事観、家族観について話す機会にできるかもしれません。
キッズ&ティーン向き映画判定

普段カッコいいなと思いながら観ているアクション映画の制作の裏側を覗くことができる内容です。憧れだけでは耐えられない過酷な仕事だということがわかるでしょう。価値観は異なるけれど、それぞれにプロ意識を持った人達が、食い違いをどう乗り越えるのかを観ると、何かしら学べるところがあると思います。

『スタントマン 武替道』
2025年7月25日より全国公開
ツイン
公式サイト
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映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも
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TEXT by Myson
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情報は2025年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
