取材&インタビュー

『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

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映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

2020年に「感動シネマアワード」で大賞を受賞した映画『はざまに生きる、春』。今回は、本作で主人公に恋する小向春役を演じた小西桜子さんにお話を伺いました。春とご自身とで似ている点や、本作の恋愛模様についてどう捉えていたのか聞いてみました。

<PROFILE>
小西桜子(こにし さくらこ):小向春 役
1998年3月29日生まれ。埼玉県出身。応募総数3,000人のオーディションを勝ち抜き、映画『初恋』(2020)のヒロイン役に選ばれ、一躍話題となる。主な出演作に、『映像研には手を出すな!』 (2020)『猿楽町で会いましょう』(2021)、ドラマ『死にたい夜にかぎって』『ふろがーる!』などがある。今後の公開作として『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』(2023年秋)が控えている。

相手のことを考えて、わかり合えるように真っ直ぐ向き合うことが大切

映画『はざまに生きる、春』宮沢氷魚/小西桜子

シャミ:
最初に脚本を読んだ時に春に対してどんな印象を受けましたか?

小西桜子さん:
物語にすごく引き込まれて気がついたら春の気持ちになりながら読み進めていました。途中予想のつかない展開もあり、私自身春と同じように気持ちが揺れ動きました。春は、あまり自分に自信のあるタイプではありませんが、自分の好きなものや、屋内(宮沢氷魚)に対する好意はすごく真っ直ぐで、芯のある女の子だと感じました。それと同時に少しアンバランスな部分があるのも春の魅力だと思います。

映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

シャミ:
春の一生懸命な姿勢がとても魅力的でしたよね。ご自身で春を演じる上で、どのように表現したいと思いましたか?

小西桜子さん:
春は監督自身の気持ちが投影されたキャラクターだったので、監督にたくさん質問をしてディスカッションを重ねて作っていきました。春は少し突飛な行動をしたり、仕事とプライベートの分別がついていないところもあるので、観てくださる方が不快に感じず共感していただけるキャラクターにしたいと思いました。

シャミ:
映画の資料に「春を演じる上でたくさん悩みました」というコメントがありましたが、どんな点が1番大変でしたか?

映画『はざまに生きる、春』小西桜子

小西桜子さん:
監督がおっしゃっていたことでもあるのですが、屋内は発達障がいの特性として感情的になることがほとんどなく、相手の言葉をそのまま受け取る人物で、逆に春は感情が高ぶることもあるすごくわかりやすいタイプの人物なんです。監督は繊細な屋内と対比になる春を描きたいということだったので、1シーンごとに監督と細かく擦り合わせをして演じました。そのさじ加減がとても難しかったです。

シャミ:
なるほど〜。春とご自身とで似ているところや、共感できたところはありますか?

小西桜子さん:
春は編集者として経験を積んでいるけど、まだ半人前なんです。この映画は2年前くらいに撮影したのですが、当時の私も新人ではないもののまだ安定していない時期だったので、そういう意味で春とすごく重なる部分がありました。それから春の少し幼く見える部分も、当時の自分と似ていると思います。

映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

シャミ:
そういう時期に演じたからこそ出来上がったキャラクターということですね。

小西桜子さん:
もし今の私が春を演じるとしたら、また違った感じになると思います。それくらい当時の自分が春に残っているなと感じます。

シャミ:
本作を通して発達障がいに対する見方で変化した部分はありますか?

映画『はざまに生きる、春』宮沢氷魚/小西桜子

小西桜子さん:
すごく変わりました。劇中、屋内が障がい者手帳を持って制度を受けている描写などもあり、そういった意味でもより理解が深まりました。発達障がいではなかったとしても一人ひとり違う部分は誰にでもあるので、きちんと想像力を働かせて相手のことを考えて、わかり合えるように真っ直ぐ向き合うことが大切だと感じました。

シャミ:
春が屋内に想いを寄せるも、屋内は発達障がいの特性により気持ちを汲み取ることができず、春は翻弄されていました。小西さんは2人の恋愛模様についてどのように捉えていましたか?

映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

小西桜子さん:
春は最初屋内の真っ直ぐなところに魅力を感じて惹かれていくのですが、発達障がいの特性上あまり相手の気持ちを汲み取れないところもあり、春が「こんなに感情を出しているのに、全然察してくれない」と感じてしまい、どんどん2人の関係に亀裂が入ってしまいます。これは屋内が発達障がいであるかどうかに関わらず、人と人であれば同じようなことが起きると思いますし、わかり合うことの難しさを感じました。でも、春が行動することで、屋内の言葉の汲み取り方に変化が生まれていき、そういった部分はどんな人でも当てはまると思います。

シャミ:
春のように気を揉んでしまう心情はとてもわかるなと思いました。もし小西さんの周りに春のような人がいて恋に悩んでいたら、どんなアドバイスをしますか?

映画『はざまに生きる、春』宮沢氷魚/小西桜子

小西桜子さん:
自分の想いを相手に察して欲しいとかではなく、相手に自分の気持ちを真っ直ぐに伝えることがすごく大切だとこの作品から学んだので、あまり探り合いはせずにストレートに想いを伝えることが1番だとアドバイスすると思います。

シャミ:
ストレートが1番ですよね!本作で春はさまざまな“狭間”で揺れていましたが、小西さんが最近何かの狭間で揺れたことは何かありますか?

小西桜子さん:
少し前に誕生日だったのですが、お寿司を食べるか焼肉を食べるか、その狭間で揺れていました(笑)。

映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

一同:
ハハハハハ(笑)!

小西桜子さん:
結局、前日にお寿司を食べて当日に焼肉を食べました。

シャミ:
良い狭間ですね(笑)!では、小西さんご自身のお話も伺わせてください。最初に俳優のお仕事に興味を持ったのはいつ頃ですか?

映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

小西桜子さん:
大学で映像系の勉強をしていて、その時にこのお仕事に興味を持ちました。それまではあまり具体的に自分の将来について考えたことがなかったのですが、初めてすごくやりたいと思ったのがお芝居でした。

シャミ:
俳優のお仕事を始めてから映画の観方が変わったり、変化があったことはありますか?

小西桜子さん:
すごく変化がありました。前はあまり観ていなかったタイプの作品も好きになったり、観る作品のジャンルの幅が広がりました。

映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

シャミ:
では、最後の質問です。これまでで1番影響を受けた作品、もしくは俳優や監督など人物がいらっしゃったら教えてください。

小西桜子さん:
すごくたくさんあるので悩みます。私は韓国のドラマや映画が好きでよく観ています。韓国は実力主義で、無名の新人の方が抜擢されて良いお芝居をしていることも多くて、すごくカッコ良いなと思います。私もデビューしていきなり『初恋』のヒロインに選んでいただけたのですが、当時は反省することもたくさんありました。なので、韓国の作品からは、影響というよりも刺激を受けていて、また頑張ろうと力をもらっています。

映画『はざまに生きる、春』小西桜子さんインタビュー

シャミ:
本日はありがとうございました!

2023年3月17日取材 PHOTO&TEXT by Shamy

映画『はざまに生きる、春』宮沢氷魚/小西桜子

『はざまに生きる、春』
2023年5月26日より全国公開
監督・脚本:葛里華
出演:宮沢氷魚/小西桜子
配給:ラビットハウス

雑誌編集者として働く小向春は、仕事も恋も上手くいかない日々を送っていた。ある日、春は取材で画家の屋内透と出会う。屋内は、思ったことをストレートに口にし、感情を隠すことなく嘘がつけない性格で、その純粋さは発達障がいの特性でもあった。そんな屋内の姿はとても新鮮で魅力的に映り、春は次第に惹かれていき…。

公式サイト

©2022「はざまに生きる、春」製作委員会

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PRESENT

  1. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
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