特集

映画に隠された恋愛哲学とヒント集68:アリかナシかは相互関係で決まる

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『もっと超越した所へ。』前田敦子/菊池風磨

ネタバレ注意!

今回は、『もっと超越した所へ。』『耳をすませば』を例に考えてみました。

“クズ男”であるか否かは、視点による

『もっと超越した所へ。』は、“クズ男(公式サイトで使われている表現)”に翻弄される女性4人の恋模様を描いた映画で、実写版『耳をすませば』は、読書が大好きな少女と、チェロを弾く少年の10年越しの恋愛を描いた映画です。この2作品で語られる恋愛は一見全く異なるものに思えますが、見方を変えれば共通しているところがあるように感じます。

この2作品を比較する上で、まずはそれぞれの作品に登場するキャラクターの関係をご紹介しましょう。

『もっと超越した所へ。』※計4組が登場
1:押しに弱い女子と、いつの間にかヒモ化した男子
2:何でもお気楽なノリでやり過ごすバカップル
3:お互いに恋愛感情はないと思いながら仲良く同居する2人
4:店員と客という関係でありながらお互いが気になる2人

『耳をすませば』
子どもの頃から本が大好きで作家を夢見る女子と、チェリストになるためにイタリアに渡った男子。10年間、遠距離恋愛中。

『もっと超越した所へ。』に登場する男性陣は“クズ男”の事例として描かれています。一方『耳をすませば』に登場するチェリストの天沢聖司は10年間離れていても月島雫を思い続ける好青年として描かれています。『もっと超越した所へ。』の“クズ男”達は本性が見えてくると、その言動には難ありで、確かに世間一般でいう“クズ男”です。『耳をすませば』の天沢聖司は、チェロに打ち込み、月島雫への思いもぶれず、好青年であることは間違いないように見えます。

映画『もっと超越した所へ。』伊藤万理華/オカモトレイジ

でも、彼等の姿が私達の目にそう映るのは、映画の中のキャラクターとして俯瞰して見られるからです。現実世界では、相手が見えないところで何をしているかはわかりません。だから、自分が相手を信じるか信じないかで見え方は変わってきます。

『もっと超越した所へ。』に登場する男性陣は、見えるところでも難ありなので、別れるか、受け容れて交際を続けるか、選択できます。そういう意味では、相手の欠点をわかった上で関係を続けると決めた側にも責任があり、合意の上での交際といえるでしょう。一方、難しいのは『耳をすませば』の2人の関係です。10年間ものあいだ、日本とイタリアで離ればなれというのはかなりのハードルです。でも、好きなら待ち続けるしかなく、ある意味選択肢はない状態ともいえるでしょう。

映画『耳をすませば』清野菜名/松坂桃李

ネタバレになるので具体的な内容は控えますが、こういう前提で『耳をすませば』の天沢聖司というキャラクターの言動を見ると、物申したいことが出てきます(笑)。10年間の中身が描かれていないので何ともいえない部分はありますが、現実的に考えて10年間は待たせ過ぎ。これは捉え方によって、もしくは、結局別れることになった場合は、“私の10年間を返せ”事例になります。どちらに転んでもお互いに若いから救いようがあるのかもしれませんが、高校生から20代前半のキラキラした時期を会えない相手に費やしたと考えると、その10年間の重みはかなりあります。

そうなると、『もっと超越した所へ。』の関係、『耳をすませば』の関係の両方にメリット、デメリットはあるわけで、結局はお互いに幸せかどうかが重要ではないかと思います。だから、必ずしも片方だけの問題ではなく、アリかナシかを選ぶ側の問題でもあります。“クズ男”を擁護するわけでは決してありませんが(笑)、“クズ男”かどうかは、世間一般が定義するものではなく、付き合う人が決めることであって、その相手を選んだ本人が幸せなのであればそれで良いのではないでしょうか。ただし、『もっと超越した所へ。』『耳をすませば』のような状況はいずれも、幸福を妥協と混同しないようにしなければいけないように思います。

映画『もっと超越した所へ。』前田敦子/菊池風磨前田敦子/菊池風磨/伊藤万理華/オカモトレイジ/黒川芽以/三浦貴大/趣里/千葉雄大

『もっと超越した所へ。』
2022年10月14日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

映画『耳をすませば』清野菜名/松坂桃李

『耳をすませば』
2022年10月14日より全国公開
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、松竹
公式サイト

©2022『もっと超越した所へ。』製作委員会
© 柊あおい/集英社 © 2022『耳をすませば』製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『デューン 砂の惑星PART2』ティモシー・シャラメ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】

今回は、海外10代、20代(1995年から2014年生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で50名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『バティモン5 望まれざる者』アンタ・ディアウ/アリストート・ルインドゥラ バティモン5 望まれざる者【レビュー】

『レ・ミゼラブル』で移民や低所得者が多く住む町の警察の腐敗問題を訴えかけたラジ・リ監督が、本作では…

映画『胸騒ぎ』 心理学から観る映画48:なぜ悪人を見抜けないのか【対人認知】

今回は、主人公一家が1つの出会いをきっかけに思いもしない事態に巻き込まれていく『胸騒ぎを題材に、対人認知の視点でキャラクター達の心理を考察します。

映画『からかい上手の高木さん』永野芽郁/高橋文哉 からかい上手の高木さん【レビュー】

こりゃピュア過ぎて、もどかし過ぎて…

韓国ドラマ『7 人の脱出』オム・ギジュン/ファン・ジョンウム/イ・ジュン/イ・ユビ 韓国ドラマ『7人の脱出』オリジナルQUOカード(500円分) 3名様プレゼント

韓国ドラマ『7人の脱出』オリジナルQUOカード(500円分) 3名様プレゼント

映画『QUEEN ROCK MONTREAL』フレディ・マーキュリー 音楽関連映画まとめ2024年5月16日号

今回は近日公開or配信予定(一部公開or配信中の作品も含む)の『ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ』『アイ・アム セリーヌ・ディオン ~病との戦いの中で~』『プリンス ビューティフル・ストレンジ』他、音楽関連映画をまとめてご紹介!

Netflixドラマ『マスクガール』 マスクガール【レビュー】

どんな話なのかは知らず、調べず、直感的に…

映画『ブラックバード 家族が家族であるうちに』スーザン・サランドン スーザン・サランドン【プロフィールと出演作一覧】

1946年10月9日アメリカ、ニューヨーク生まれ。1970年、『ジョー』でデビュー。以降、『ロッキ…

映画『ハピネス』山崎まさよしさん&篠原哲雄監督インタビュー 『ハピネス』山崎まさよしさん&篠原哲雄監督インタビュー

今回は映画『ハピネス』に出演している山崎まさよしさんと篠原哲雄監督にお話を伺いました。『月とキャベツ』や『影踏み』などでもお仕事をされているお二人に改めてご一緒された感想など直撃。

映画『湖の女たち』福士蒼汰/松本まりか 湖の女たち【レビュー】

物語の主な登場人物は、100歳の寝たきり老人が不可解な死を遂げたことで疑惑を向けられる人達と…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『デューン 砂の惑星PART2』ティモシー・シャラメ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】

今回は、海外10代、20代(1995年から2014年生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で50名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『MIRRORLIAR FILMS Season5』横浜流星 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内20代編】

今回は、国内で活躍する20代(1995年から2004年生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で70名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ティモシー・シャラメ 映画好きが選んだ2023洋画ベスト

正式部員の皆さんに2023年の洋画ベストを選んでいただきました。どの作品が2023年の洋画ベストに輝いたのでしょうか?

REVIEW

  1. 映画『バティモン5 望まれざる者』アンタ・ディアウ/アリストート・ルインドゥラ
  2. 映画『からかい上手の高木さん』永野芽郁/高橋文哉
  3. Netflixドラマ『マスクガール』
  4. 映画『湖の女たち』福士蒼汰/松本まりか
  5. 映画『ありふれた教室』レオニー・ベネシュ

PRESENT

  1. 韓国ドラマ『7 人の脱出』オム・ギジュン/ファン・ジョンウム/イ・ジュン/イ・ユビ
  2. 映画『FARANG/ファラン』ナシム・リエス
  3. 映画『猿の惑星/キングダム』オリジナルTシャツ
PAGE TOP