REVIEW

ビバリウム

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ビバリウム』ジェシー・アイゼンバーグ/イモージェン・プーツ

「新居を探しに行ったらエライ目に遭ってもうた!」というストーリーで、ビジュアル的な気持ち悪さや怖さもありつつ、何より心理的に怖くて、さらに元を辿って考えてみると、私達人間もそう変わらないことを普段やっているのだと気付かされて、改めてゾッとさせられます。ビバリウム(vivarium)の意味を調べてみると、動物をペットまたは研究対象として入れておく入れ物(Cambridge Dictionaryより)とされていますが、本作はまさにそのスケールを大きくした世界を描いていて、観る者がこの世界での生活を疑似体験することで、普段人間は逆の立場で無神経に過ごしていることを自覚させられる内容となっています。主演のジェシー・アイゼンバーグ、イモージェン・プーツの他、登場人物はごくわずかで、それがまた不気味なのですが、ビバリウムという空間が自然から隔離された環境であることを象徴しているようにも受け取れます。まるで感情がない不気味なキャラクターも印象的ですが、彼らもある意味私達人間の一面を投影しているのかもしれません。
ビバリウムという言葉は今インテリア業界やガーデニング業界でよく聞かれるようですが、本作を観てしまうとイメージがガラッと変わってしまうかもしれません。単純にスリラーとして楽しむだけでも良いですが、解釈によっては動物保護を訴える内容にも取れたり、弱肉強食の社会を風刺したものにも受け取れたり、いろいろな解釈を楽しんでください。

デート向き映画判定
映画『ビバリウム』ジェシー・アイゼンバーグ/イモージェン・プーツ

精神的苦痛が続く日々のなかで、恋人同士のトムとジェマの意見のぶつかり合いが出てきます。そんなシーンは環境の変化によってカップルが受ける影響として参考にできるかなと思いつつ、ストーリーはそれどころではない方向に向かっていくので、良い意味で映画だと割り切って観られるでしょう。ただ、新居を探そうとしているカップルで心配性な人は、こんな不動産屋にあたることはなくても、2人で暮らすにあたり関係性の変化について余計な想像をしてしまう可能性はあるので、新居で落ちついてから観るほうが良いかもしれません(苦笑)。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ビバリウム』ジェシー・アイゼンバーグ/イモージェン・プーツ

15歳以上のティーンは観られます。設定がユニークで、強烈なキャラクターも登場し、ゾクゾクする映画なので、観終わった後に誰かと話したくなると思います。1人でじっくり観るのも良いですが、友達と観るとなお盛り上がるでしょう。いろいろな解釈を楽しめる作品ですが、最初は難しく考えずに、フラットな気持ちで楽しむということで良いと思います。

映画『ビバリウム』ジェシー・アイゼンバーグ/イモージェン・プーツ

『ビバリウム』
2021年3月12日より全国公開
R-15+
パルコ
公式サイト

© Fantastic Films Ltd/Frakas Productions SPRL/Pingpong Film

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大 兄を持ち運べるサイズに【レビュー】

原作は、村井理子が書いたノンフィクションエッセイ「兄の終い」…

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『見はらし世代』井川遥 井川遥【ギャラリー/出演作一覧】

1976年6月29日生まれ。東京都出身。

映画『WEAPONS/ウェポンズ』 WEAPONS/ウェポンズ【レビュー】

ある町から突然17人の子どもが同時に行方不明になるところから始まる本作は、“IT/イット”“死霊館”シリーズなど、傑作ホラーを多数世に送り出してきた…

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  2. 映画『消滅世界』蒔田彩珠
  3. 映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚
  4. 映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大
  5. 映画『WEAPONS/ウェポンズ』

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP