REVIEW

冬薔薇(ふゆそうび)【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『冬薔薇(ふゆそうび)』伊藤健太郎

ゼロからの再スタートといえる伊藤健太郎が主演の本作は、阪本順次監督が彼からじっくり話を聞き、彼のために書き下ろしたオリジナルの脚本によって作られました。彼が演じた主人公は、親のすねをかじり、学費も出してもらいながらも専門学校にろくに通わず、不良仲間と連み、何もかもが中途半端な渡口淳。淳は過去に兄を亡くしており、ぎくしゃくした家族関係の中で居場所を見失っています。そんな淳の周りである大きな出来事があり、そこから淳は自分の現実を見つめ直すことになります。
本作は伊藤健太郎にとって、俳優としての再スタートをきる重要な作品というのは誰もが思うところでしょう。イメージアップを意図するような要素を入れたくなってもおかしくありません。でも、何ともいえない後味が残るストーリーで、少しゾッとするものがあります。それは彼の物語として、というのではなく、人は何かを一歩踏み間違えた時にどうしようもない孤独に陥り、そこで誰が手を差し伸べるのかによって運命が大きく変わることを描いているからです。本作を観ると、優しさと冷たさは紙一重で、他人と自分の優しさと冷たさの間で人間は迷子になるのだなと思えてきます。
罪を犯した人を無条件に擁護するわけではありません。でも、人間なら間違えることはあります。一方で、間違いを起こす前に周囲がどんなに心配してくれていても気付かない人、そのことに感謝できない人もいます。本作は人間が抱える愚かさと弱さと同時に、社会の歪みも描いています。1度足を踏み外して孤独に陥っている方、自暴自棄になっている方にとっては胸が苦しくなるストーリーではありますが、自分を見つめ直し、正しい選択ができるようにするために観て欲しい1作です。

デート向き映画判定
映画『冬薔薇(ふゆそうび)』小林薫/伊武雅刀/石橋蓮司

重い内容なので、初デートや交際ホヤホヤのカップルのデートには向いていないと思います。ただ、自分のことはもちろん、周囲の人の心の内を想像させられるストーリーで、表面的には見えない人間の複雑な面を知ることができます。もし、お互いに言えずに悶々としていることがあったら、本作を観た後で打ち明けてみると少し心の距離が近づくかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『冬薔薇(ふゆそうび)』永山絢斗/毎熊克哉

いろいろなキャラクターが登場するので、誰かしら感情移入できる人が見つかると思います。家族関係、友達関係が重要な鍵となっていて、思春期の皆さんでも感覚として共感できる部分があるでしょう。本当の孤独を味わう前にできることがないか、本作を観て考えてみてはどうでしょうか。

映画『冬薔薇(ふゆそうび)』伊藤健太郎/小林薫/余貴美子

『冬薔薇(ふゆそうび)』
2022年6月3日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ
公式サイト

©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『夢の中』山﨑果倫/櫻井圭佑 夢の中【レビュー】

本作は、『蝸牛』でMOOSIC LAB 2019短編部門グランプリほか4冠を達成した都楳勝監督による最新作です。主人公のタエコ(山﨑果倫)の…

『ウォーレン・バフェット氏になる』ウォーレン・バフェット 本物かペテン師か【ビジネスの巨人】映画特集

儲け話というよりも人生訓として、良いお手本、悪いお手本の両方で、どのエピソードにも参考になる要素があります。

映画『無名』トニー・レオン 無名【レビュー】

第2次世界大戦下の1940年代上海で、中国共産党、国民党、日本軍のスパイが…

映画『FARANG/ファラン』ナシム・リエス 『FARANG/ファラン』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『FARANG/ファラン』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『ミセス・クルナス vs.ジョージ・W・ブッシュ』メルテム・カプタン ミセス・クルナス vs.ジョージ・W・ブッシュ【レビュー】

トルコ移民のラビエ(メルテム・カプタン)は、ある日、長男のムラートが旅先のパキスタンでタリバンの一員だと疑われて拘束されたことを知り…

映画『弟は僕のヒーロー』フランチェスコ・ゲギ フランチェスコ・ゲギ【プロフィールと出演作一覧】

2002年8月19日イタリア、ローマ生まれ。2022年、Netflix映画『僕らをつなぐもの』での演技が…

映画『異人たち』アンドリュー・スコット/ポール・メスカル 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2024年4月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2024年4月】のアクセスランキングを発表!

映画『アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~』アン・ハサウェイ/ニコラス・ガリツィン アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~【レビュー】

ロビン・リーによる人気小説「The Idea of You」を映画化した本作は、アイドルグループに属する24歳の青年ヘイズ・キャンベル(ニコラス・ガリツィン)と、一人娘がいる40歳のシングルマザー、ソレーヌ(アン・ハサウェイ)を…

映画『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』ワールドプレミア、セレステ・オコナー セレステ・オコナー【プロフィールと出演作一覧】

1998年12月2日ケニア生まれ。2019年、映画『セラとチーム・スペード』で俳優として…

映画『人間の境界』 人間の境界【レビュー】

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』で、ロシア政府が隠していた事実を暴いたアグニェシュカ・ホランド監督が、再び社会の事実を伝える作品を撮りました…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『MIRRORLIAR FILMS Season5』横浜流星 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内20代編】

今回は、国内で活躍する20代(1995年から2004年生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で70名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ティモシー・シャラメ 映画好きが選んだ2023洋画ベスト

正式部員の皆さんに2023年の洋画ベストを選んでいただきました。どの作品が2023年の洋画ベストに輝いたのでしょうか?

映画『テルマ&ルイーズ 4K』スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス あの名作をリメイクするとしたら、誰をキャスティングする?『テルマ&ルイーズ』

今回は『テルマ&ルイーズ』のリメイクを作るとしたら…ということで、テルマ役のジーナ・デイヴィスとルイーズ役のスーザン・サランドンをそれぞれ誰が演じるのが良いか、正式部員の皆さんに聞いてみました。

REVIEW

  1. 映画『夢の中』山﨑果倫/櫻井圭佑
  2. 映画『無名』トニー・レオン
  3. 映画『ミセス・クルナス vs.ジョージ・W・ブッシュ』メルテム・カプタン
  4. 映画『異人たち』アンドリュー・スコット/ポール・メスカル
  5. 映画『アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~』アン・ハサウェイ/ニコラス・ガリツィン

PRESENT

  1. 映画『FARANG/ファラン』ナシム・リエス
  2. 映画『猿の惑星/キングダム』オリジナルTシャツ
  3. 映画『九十歳。何がめでたい』草笛光子
PAGE TOP