REVIEW

消滅世界【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『消滅世界』蒔田彩珠

REVIEW

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作としています。本作は、現代社会に既にある状況を極限化した世界を想像させます。子どもは人工授精で作られるのが当たり前で、夫婦の営みによる自然妊娠で生まれた子どもは異質といわれます。性欲を満たす相手が必要なら家庭の外に恋人を作り、アニメのキャラクターを恋愛対象とするのも“普通”になっています。つまり、結婚から恋愛と性生活は切り離されています。

映画『消滅世界』栁俊太郎

主人公の雨音(蒔田彩珠)は、愛し合った両親から生まれた“異質”な存在です。そんな雨音は、アニメのキャラクターに恋をし、両親とは異なり、性愛のない結婚生活を送り、“普通”になれたことに安堵しているように映ります。そんななか、家の外に恋人を持つ夫の朔は、恋人との関係に悩んでいました。そうして、2人は千葉に新設される、エデンと呼ばれる実験都市に移り住もうと考えます。

映画『消滅世界』蒔田彩珠/恒松祐里

本作の前半は、雨音の高校時代から朔と結婚して少し経った頃までを描いています。自然妊娠をして雨音を生んだ母のキャラクターなどにも触れられていて、“異質”とされ悩み続けながら成長した雨音の背景がわかります。後半は、主にエデンでの生活が描かれています。前半の内容だけでもかなりインパクトが強いものの、後半はさらに刺激的な内容となっています。

映画『消滅世界』蒔田彩珠/結木滉星

このエデンという実験都市では、「住民全体で計画的に人工授精、出産、管理を行い、住民みんなで子育てをする」(映画公式サイト)ことになっています。ネタバレになるのでここでは具体的に言及しないでおくとして、エデンでは性差をなくすという概念は徹底されていて、女性特有の役割すら男性も担える研究が進められています。映像としては淡々と静かに描かれているものの、とんでもない世界を目の当たりにします。

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和

本作で描かれる世界では、私達が生きている現実世界では少数派だったり、タブー視されている事柄が“普通”になっています。つまり、現実世界で堂々といいづらいことが、もし堂々とできる社会なったとしたら、こういう世界になるのではないかという大胆なシミュレーションを披露しています。皆さんはこの世界を覗いてみて、結局どちらが良いと思うのでしょうか。最後は、雨音の本心に迫る強いセリフが印象に残ります。どこまでが“異常”で“正常”なのか。今私達が生きている現実世界は、正気を保てる世界なのか、本作の問いかけに対して、さまざまな方の意見を聞きたくなります。

デート向き映画判定

映画『消滅世界』蒔田彩珠/栁俊太郎

まさに、恋愛観、結婚観を問う内容なので、お互いに正直な意見をぶつけ合える関係なら、一緒に観ると有意義でしょう。性別がほぼ無の状況になったら、2人の関係はどうなるのかを話し合うと、お互いがどういう点に価値を置いているのかにも気づけそうです。ただし、赤裸々に語ることで価値観の違いが明確になり、将来共に過ごせる相手かどうかを良くも悪くも知ることになるかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『消滅世界』蒔田彩珠/栁俊太郎

大人と子どもで注目点は異なるかもしれないとはいえ、皆さんも当事者感覚で観られる部分はあるでしょう。雨音の高校時代からを描いていて、同級生や親友との考え方との比較もリアルです。本作で描かれている世界のほうが都合が良いと感じる方もいるかもしれませんが、かなり極限の状況までシミュレーションしているので、自分の価値観を改めて考える機会になりそうです。

映画『消滅世界』蒔田彩珠/栁俊太郎

『消滅世界』
2025年11月28日より全国公開
NAKACHIKA PICTURES
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2025「消滅世界」製作委員会

TEXT by Myson


関連作

「消滅世界」村田沙耶香 著/河出文庫
Amazonで書籍を購入する

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『サリー』エスター・リウ 『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン THE END(ジ・エンド)【レビュー】

REVIEWいつも通り観賞前にほぼ何も情報を入れず、登場人物はいつの時代にどこに住んでいる…

映画『シェルビー・オークス』 シェルビー・オークス【レビュー】

かつて繁栄しながらも今は廃墟と化しているシェルビー・オークスという町で…

映画『ナイトフラワー』渋谷龍太 渋谷龍太【ギャラリー/出演作一覧】

1987年5月27日生まれ。東京都出身。

映画『悪魔祓い株式会社』マ・ドンソク/ソヒョン/イ・デヴィッド 悪魔祓い株式会社【レビュー】

本作は、『悪人伝』や“犯罪都市”シリーズ、ハリウッド映画『エターナルズ』などでお馴染みのマ・ドンソクが…

映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ 『ツーリストファミリー』特別試写会 10組20名様ご招待

映画『ツーリストファミリー』特別試写会 10組20名様ご招待

Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一 イクサガミ【レビュー】

今村翔吾著のベストセラー「イクサガミ」シリーズを原作とする本シリーズでは、岡田准一が主演、プロデューサー、アクションプランナー、藤井道人、山口健人、山本透が監督と脚本を担当…

映画『TOKYOタクシー』蒼井優 蒼井優【ギャラリー/出演作一覧】

1985年8月17日生まれ。福岡県出身。

映画『バーフバリ エピック4K』来日舞台挨拶イベント、プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ(プロデューサー) プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ来日!『バーフバリ エピック4K』には追加シーンも

2025年に劇場公開10周年を迎える大ヒット作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ2 王の凱旋』を一つの作品として再編集し、壮大な物語を4K映像で体験できる『バーフバリ エピック4K』の日本公開を目前にして、バーフバリ役のプラバースと、プロデューサーのショーブ・ヤーララガッダが来日しました。

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 楓【レビュー】

残酷過ぎて、切な過ぎて、優し過ぎて、どうしましょ(笑)。ネタバレを避けると、ほぼ何も書けませんが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン
  2. 映画『シェルビー・オークス』
  3. 映画『悪魔祓い株式会社』マ・ドンソク/ソヒョン/イ・デヴィッド
  4. Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一
  5. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥

PRESENT

  1. 映画『サリー』エスター・リウ
  2. 映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ
  3. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
PAGE TOP