取材&インタビュー

『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロさん&サムエーレ・セグレートさんインタビュー

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロさん&サムエーレ・セグレートさんインタビュー

イタリアを驚愕させ、やがて世界が変わる大きなきっかけとなった実際の事件を映画化した『シチリア・サマー』。今回は、主人公ニーノ役のガブリエーレ・ピッツーロさんと、ジャンニ役のサムエーレ・セグレートさんのお二方にお話を伺いました。オーディションの様子や、イタリアにおけるLGBTIの現状について直撃しました。

<PROFILE>
ガブリエーレ・ピッツーロ:ニーノ 役(写真右)
2004年生まれ。イタリア、ローマ出身。5歳でトリノ劇場の舞台でデビューし、その後イタリアで数々の舞台を踏み演技と歌唱力を磨く。2018年には、フランチェスコ・モンタナーリ監督のマスタークラスに参加する。本作『シチリア・サマー』で初の映画出演を果たし、ナストロ・ダルジェント賞最優秀新人賞、アートハウス賞最優秀男優賞を受賞した。また、ファッション誌の表紙を飾り、ジュゼッペ・フィオレッロ監督、サムエーレ・セグレートと共にヴァレンティノのファッションショーに招待されるなど、本作出演を機に脚光を浴びている。

サムエーレ・セグレート:ジャンニ 役(写真左)
2004年生まれ。イタリア、パレルモ出身。8歳からヒップホップとモダンダンスを始め、2016年にテレビダンサーとしてデビュー。同年、ピエルフランチェスコ・ディリベルト監督作『愛のために戦地へ』で俳優デビューを飾った。長編映画は、“Il mio corpo vi seppellirà(原題)”(2018)の出演を経て、本作『シチリア・サマー』が3本目となる。本作ではガブリエーレ・ピッツーロと共に主演を飾り、ナストロ・ダルジェント賞最優秀新人賞、アートハウス賞最優秀男優賞を受賞した。2022年には、イタリアのタレントショーにヒップホップダンサーとして出演し、ダンサーとしても一気に人気を集めている。

2人が愛し合うことによってシャイな部分や恐れが勇気に変わる

映画『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロ/サムエーレ・セグレート

シャミ:
オーディションで役が決まったそうですが、具体的にどんな審査があったのでしょうか?

ガブリエーレ・ピッツーロさん:
まずビデオ審査から始まり、その後実際に監督と会ってオーディションを受けました。監督と会った時に、作品や役についてわかりやすく説明してくださり、何を求めているのかがはっきりとわかったので、演技をすることが非常に楽になりました。また、最初から監督と気が合ったことも良かった点です。

シャミ:
実際に役が決まった時はどんな心境でしたか?

ガブリエーレ・ピッツーロさん:
監督とすごく理解し合えた感覚があり、上手くいくと良いなと思っていたので、結果を聞いた時はすごく幸せな気分になりました。あまりに嬉しくて、その後に近所を散歩して、公園のベンチにその時の自分の気持ちを書きました。そうやって喜びを表現しました(笑)。

映画『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロ

サムエーレ・セグレートさん:
僕も役が決まった時はとても嬉しかったです。初めての主演で、僕にとって非常に大きなことでした。結果の連絡があった時に、僕は友達の家でパスタを食べていたんです(笑)。そしたら母から電話があり、飛び上がって喜びました。それでこの作品の旅を始めることになりました。今までの人生の中で1番素晴らしい経験になりました。

シャミ:
お二人にとって本当に嬉しい瞬間だったんですね!ちなみにお二人は元々お互いのことを知っていたのでしょうか?れとも今回の現場で初めてお会いになったんですか?

サムエーレ・セグレートさん:
オーディションの時に初めて会ったのですが、すぐに良い関係を築けました。オーディションの後も話を続けて、それは僕にとってすごく大きなアドバンテージになりました。というのも、監督は先にガブリエーレを決めていたんです。その後に僕のオーディションがあったので、彼と話ができたことは僕にとってすごく大きなエネルギーになり、希望を与えてくれました。
ただ少し不安だったことは、実際と役の設定とで、背の高さや年齢が僕達とは逆だったことです。ジャンニのほうがニーノより1つ年上で、背も高い設定だったのですが、実際には僕のほうが少し早く生まれていて背も低いので、そのことでもしかしたら他の方が選ばれてしまうのではないかと心配していました。でもジャンニ役に選んでいただき、撮影の時は高さの違う靴を履いたり、カメラのアングルを変えていただいて、劇中では年の差や背の高さがあまり影響しないようになっています。

映画『シチリア・サマー』サムエーレ・セグレート

シャミ:
お二人とも本当に自然な演技を披露されていて、それぞれの役にピッタリでした。

ガブリエーレ・ピッツーロさん&サムエーレ・セグレートさん:
ありがとうございます!

シャミ:
本作は1980年に起きたジャッレ殺人事件を基にした物語ですが、お二人はこの事件のことは以前から知っていたのでしょうか?

ガブリエーレ・ピッツーロさん:
知っていました。僕の祖母はシチリア人で、その事件についてもよく知っていたので、家族の間でもその話題が出ていました。オーディションの時も祖母が改めてその話をしてくれたので、すごく助けになりました。非常に重要な話なので、何か栄誉になるような形にしたいと考えていました。絶対にこの話を小さくしてしまうようなことにならないようにと、よく勉強をした上で撮影に臨みました。

映画『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロ/サムエーレ・セグレート

シャミ:
なるほど〜。この事件が起きた時から40年以上経っていますが、イタリアにおけるLGBTIの方々に対する見方は変わったと思いますか?

サムエーレ・セグレートさん:
僕達の世代と比べると少しは変わったと思います。でも、実際には今でもジャンニやニーノが経験したのと同じような話を聞くことがあります。ニーノに関しては家族から問い詰められ、ジャンニは周囲の人にからかわれていますが、そういった状況は今でもないわけではありません。
もちろん1980年代と比べると良くなっている部分もありますが、やはり小さな町や村に関しては今でも偏見が残っています。大都会は多少違うかもしれませんが、今でも偏見が残っているのは事実だと思います。僕はシチリアの州都のパレルモで育ちましたが、そこでもやはりジャンニと同じような経験をしている方を見たことがあります。とても残念なことですが、親が子どものセクシャリティを否定したり、追い出したりするということは今でもあり、それはイタリアに限ったことではないと思います。

映画『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロ/サムエーレ・セグレート

シャミ:
日本でも同じようなことがあるので、この作品を多くの方にご覧になってもらえたら良いなと感じます。

ガブリエーレ・ピッツーロさん&サムエーレ・セグレートさん:
そうですね!

シャミ:
陽気で無邪気なニーノと、内気な性格で孤独を感じているジャンニという対照的な人物が出会い、心を通わせていく様子が繊細に描かれていました。それぞれ演じたキャラクターに感情移入した部分やもしご自身と似ている点があれば教えてください。

ガブリエーレ・ピッツーロさん:
僕が演じたニーノは、最初からすごく似たところがあると感じていました。その点から監督が僕を選んだのだと思います。今おっしゃったようにニーノは喜びが全身からあふれ出しているようなキャラクターでしたが、それと同時にシャイな部分も持っています。その部分は特に僕と通じると感じました。そして、ニーノとジャンニが出会い、愛し合うことによってシャイな部分や恐れが勇気に変わるんです。1人の時にネガティブだったものが大きな勇気に結実するというところがこの物語の大きなポイントだと思います。

映画『シチリア・サマー』サムエーレ・セグレート

サムエーレ・セグレートさん:
2人の関係についてはガブリエーレと同意見です。2人は世界で1番素晴らしい愛のために戦うので、僕は彼らを愛の戦士のように捉えていました。彼らは命という代償があっても愛のために戦うわけです。もちろん僕も彼らの中に勇気があったと感じるのですが、ジャンニもニーノも暴力に対して暴力を使わずに戦うところが非常に共感できました。

シャミ:
ジャンニとニーノの姿は本当に胸を打たれました。セクシャリティの問題に関わらず、ニーノとジャンニのように何か困難な壁にぶつかり、挫折したり、時には自分の心に嘘をついてしまう方が多くいます。そういった方々に向けてお二人からメッセージをお願いします。

映画『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロさん&サムエーレ・セグレートさんインタビュー

ガブリエーレ・ピッツーロさん:
困難な壁にぶつかった時に降参してしまう方もいれば、戦うことを選ぶ方もいますよね。戦うことによって、困難がチャンスに変わることもあり得ると思います。僕自身はできるだけいつも戦うことが必要だと思っています。自分に幸せをもたらしてくれるもののために戦うということです。困難と直面した時にそれに甘んじてしまうのではなく、僕自身は戦う姿勢が必要だと感じます。でも、それは個人個人の考え方にもよると思います。

サムエーレ・セグレートさん:
僕もガブリエーレに賛成です。やっぱり自分が信じていることに対して、難しさに関係なく、戦うことが大事だと思います。選択肢がある場合、僕はより難しいほうを選択することが多いです。そういう時に戦わなければ負けたような気持ちになってしまうからです。人生はいろいろな困難をもたらすわけですが、それと戦うことによって僕達は強くなることができるんです。もちろんガブリエーレが話したように人それぞれだと思います。でも、ただじっとしているのではなく、不安に負けないように、勇気を持って自分の信念で戦っていくことが大切なのではないかと思います。

シャミ:
素敵なメッセージですね!本日はありがとうございました。

2023年11月2日取材 TEXT by Shamy

映画『シチリア・サマー』ガブリエーレ・ピッツーロ/サムエーレ・セグレート

『シチリア・サマー』
2023年11月23日より全国公開
PG-12
監督・脚本:ジュゼッペ・フィオレッロ
出演:ガブリエーレ・ピッツーロ/サムエーレ・セグレート/シモーナ・マラート/ファブリツィア・サッキ/アントーニオ・デ・マッテオ/エンリコ・ロッカフォルテ/ジュゼッペ・スパータ/アレッシオ・シモネッティ/シモーネ・ラッファエーレ・コルディアーノ/ジュディッタ・ヴァジーレ/ロベルト・サレーミ/アニータ・ポマーリオ
配給:松竹

舞台は1982年初夏のイタリア、シチリア島。16歳のニーノと17歳のジャンニは運命的な出会いを果たす。2人は一瞬で惹かれ合い、友情は次第に激しい恋へと変化していく。しかし、少年達の恋は、ある日突然の終わりを迎えるのだった…。

公式サイト ムビチケ購入はこちら

© 2023 IBLAFILM srl
© Maddalena Petrosino

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合 てっぺんの向こうにあなたがいる【レビュー】

女性初、エベレスト登頂に成功した、登山家の田部井淳子氏による著書「人生、山あり“時々”谷あり」を原案として映画化された本作は、実話を基にしたフィクション…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「映画アカウントで自分らしい距離感やペースをどう整えていけばいい?」

正式部員さんからいただいたSNSについてのお悩み相談におこたえしました。後半は…

映画『トロン:アレス』グレタ・リー グレタ・リー【ギャラリー/出演作一覧】

1983年3月7日生まれ。アメリカ生まれ。

映画『盤上の向日葵』坂口健太郎/渡辺謙 盤上の向日葵【レビュー】

“孤狼の血”シリーズの原作者としても知られるベストセラー作家、柚月裕子の同名小説を映画化した本作は…

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『女性の休日』 女性の休日【レビュー】

ちょうど今から50年前の今日、1975年10月24日に…

映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗 爆弾【レビュー】

呉勝浩による同名ベストセラー小説を原作として映画化された本作は、知らぬ間に…

海外ドラマ『エイリアン:アース』海外ドラマ『エイリアン:アース』 シドニー・チャンドラー【ギャラリー/出演作一覧】

1996年2月13日生まれ。アメリカ出身。

映画『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』マリアンヌ・ジャン=バプティスト/ミシェル・オースティン ハード・トゥルース 母の日に願うこと【レビュー】

現代のロンドンを繰り広げられる本作は、対照的な性格を持つ姉妹のそれぞれの日常を…

映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人 ミーツ・ザ・ワールド【レビュー】

この町で出会った、アニメにハマっている腐女子の由嘉里(杉咲花)、キャバ嬢のライ(南琴奈)、既婚の No.1 ホスト、アサヒ(板垣李光人)は、それぞれどこか孤独感、空虚感を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3 11月6日開催:トーキョー女子映画部マイソンと学ぶ【明るい未来のための将来設計とお金の基本講座】(スイーツとお飲み物付)女性限定ご招待!

本セミナーでは、「NISA・iDeCoなどの資産形成」「子どもの教育資金」「将来受け取る年金」「住宅購入・住宅ローン」「保険」など、将来に役立つお金の知識や情報、仕組みやルールについて、ファイナンシャルプランナーの先生が初めての方でもわかりやすく優しく教えてくれます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合
  2. 映画『盤上の向日葵』坂口健太郎/渡辺謙
  3. 映画『女性の休日』
  4. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  5. 映画『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』マリアンヌ・ジャン=バプティスト/ミシェル・オースティン

PRESENT

  1. 映画『爆弾』山田裕貴/佐藤二朗
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP