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西湖畔(せいこはん)に生きる【レビュー】

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映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』ウー・レイ

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邦題にある、西湖畔(せいこはん)は、中国茶の最高峰といわれる⿓井茶の⽣産地として有名だそうです。これだけ聞くと穏やかな自然に囲まれた暮らしを描いたストーリーなのかと想像しますよね。でも、本作のキャッチコピーには地獄という文字があります。毎度ながら、前情報を極力入れずに観るようにしているので、高級茶の産地、地獄、違法ビジネスというキーワードが気になり、それ以外の情報を入れずに本作を鑑賞しました。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』ジアン・チンチン

映画公式資料によると、本作は、グー・シャオガン監督が『春江⽔暖』を撮っていた頃に親族の⼀⼈がマルチ商法にのめり込んでしまった実際の出来事から着想を得ています。主人公は10年前に父親が家を出て、母に育てられたムーリエン(ウー・レイ)です。もうすぐ大学を卒業するムーリエンは就職活動中で、母、タイホア(ジアン・チンチン)は住み込みで茶畑で働いています。でも、タイホアはある事情で職を失い、親友に誘われてマルチ商法にのめり込んでいきます。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』

まず、タイホアの変貌ぶりが凄まじく、ムーリエンと同様に観ているこちらも驚かされます。そして、その変貌ぶりこそが洗脳の威力を物語っています。でも、最もリアリティを感じるのは、ムーリエンの説得に対して出てきたタイホアの本音です。どこかで怪しいと思っていても、人生が詰んだタイホアにとって心の拠り所となっている点に怖さを感じます。マルチ商法も霊感商法もタイホアのように心が弱った人に付け入り、まやかしの居場所を与えるからこそ、洗脳できるのでしょう。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』ウー・レイ

物語の行方は本編でご覧いただくとして、想像以上にシリアスで黒いエネルギーに満たされたストーリーとなっています。日本でも今もどこかで行われているような“集会”の様子が生々しく、ゾッとさせられます。ただ、そんな状況に瀕しても母を守ろうとするムーリエンの優しさと強さが闇を取り払ってくれます。行き詰まっていると感じる方は、本作で心の拠り所を探す人達の心の中を覗いてみると、少し冷静な視点を取り戻せるかもしれません。

デート向き映画判定

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』ジアン・チンチン

本作を観ると交友関係に気を付けていても防げないトラブルがあるなと実感します。それが悪事だと本人自身が気付かずに手を染めてしまっている場合、つまり洗脳されている場合、仲の良い友達だからこそ誘うということもあり得ます。自分の交友関係も相手の交友関係も、ある程度共有しておくことでお互いに守れるかもしれません。デートのムードは盛り上がらないでしょうが、一緒に観ておくとお互いに用心できそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』ウー・レイ

大学生になると、交友関係が一気に広がるので、マルチ商法などに知らずしらずに勧誘される恐れがあります。誘ってきた相手が友達や知り合いだから大丈夫だと思うのは禁物です。本作にもどうやって巻き込まれていくのかが描かれているので、観ておくと予防線を張る参考にできると思います。家族や友達と共通認識を持っておくきっかけに観るのもオススメです。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』ウー・レイ

『西湖畔(せいこはん)に生きる』
2024年9月27日より全国順次公開
ムヴィオラ、面白映画
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©Hangzhou Enlightenment Films

TEXT by Myson

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