REVIEW

果てしなきスカーレット【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『果てしなきスカーレット』

REVIEW

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は、シェイクスピアの「ハムレット」をベースにしたといいます。スカーレットの“レット”の部分もハムレットの“レット”から取ったそうですよ(映画公式資料)。

映画『果てしなきスカーレット』

スカーレットは国王だった最愛の父を殺され、敵討ちを試みたものの返り討ちに遭い、目を覚ますと《死者の国》に来ていました。《死者の国》にいてもなお命を狙われながら、スカーレットは父の敵の居場所を目指して遠い道のりを歩いていきます。そんななか、別の時代から《死者の国》にやってきた聖(岡田将生)に出会います。

映画『果てしなきスカーレット』
映画『果てしなきスカーレット』

本作で描かれる《死者の国》は、劇中の言葉を借りると生と死が共存するような世界で、そこにいる人々の魂はまだ残っています。だから、自分の人生をどう終えるかを最後にもう一度考え直すことができる場所ともいえます。そこでスカーレットは復讐を果たすべく旅をしながら、亡き父が最後に遺した言葉の意味を深く追求していくことになります。複数の意味に捉えられるその言葉は本作で大きな伏線となっており、とても大切なメッセージとなってスカーレットの心に響くと同時に、私達観客にも生き方の指針を示してくれます。また、その言葉も「ハムレット」に由来しているので、シェイクスピア好きの方は比較しながら楽しめる部分もありそうです。

映画『果てしなきスカーレット』

19歳のスカーレットの声を演じたのは、芦田愛菜。細田監督(映画公式資料)によると、スカーレットは他の人とは全く異なる環境でさまざまな経験をしてきているので、現代でいう年長の感覚があり、それを表現できる人物を考えた時に芦田愛菜が思い浮かんだそうです。プレスコ(プレ・スコアリングの略。先に音声を録ってから、映像を作っていく方法)の際、芦田愛菜は偶然にも19歳だったそうですよ。

映画『果てしなきスカーレット』

本作の声優には、他にも、岡田将生、山路和弘、柄本時生、青木崇高、染谷将太、白山乃愛、白石加代子、宮野真守、津田健次郎、羽佐間道夫、古川登志夫、吉田鋼太郎、斉藤由貴、松重豊、市村正親、役所広司といった実力派が勢揃いしています。細田監督は、このキャスティングにもこだわっていて、本作が「ハムレット」をベースにしていることから、同作やシェイクスピアの舞台を経験している岡田将生、市村正親、役所広司を起用したとのことです(映画公式資料)。

映画『果てしなきスカーレット』

古典をベースにしているものの、本作には現代と繋がるユニークな展開があります。それこそがスカーレットの決断にも関わってきて、本作から伝わってくるメッセージに説得力を与えています。心に優しさを取り戻す機会を与えてくれる本作は、老若男女問わずオススメです。

デート向き映画判定

映画『果てしなきスカーレット』

程よくロマンチックな展開がありつつ、ガッツリとラブストーリーではない分、どんな関係のカップルでも観やすいでしょう。人生観を問う内容なので、感想を話すなかで自ずとお互いの人生観を読み取れるのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『果てしなきスカーレット』

強欲で自己中心的なキャラクターや、心優しい性格ながら復讐心で我を忘れてしまっているキャラクターが出てきます。スカーレットのいる世界は現実世界とは全く異なるとはいえ、人間関係は私達のいる世界と似通っているので、自分達の現実を客観視する機会にできるでしょう。シェイクスピアの「ハムレット」がベースとなっているので、これを機に読んでみると文学への興味も深められそうです。

映画『果てしなきスカーレット』

『果てしなきスカーレット』
2025年11月21日より全国公開
東宝
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2025 スタジオ地図

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

映画『金髪』白鳥玉季さんインタビュー 『金髪』白鳥玉季さんインタビュー

今回は『金髪』で生徒の板緑役を演じた白鳥玉季さんにインタビューさせていただきました。“金髪デモ”を起こすキーパーソンである板緑を演じた感想や、撮影裏でのエピソードを直撃しました。

映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉 TOKYOタクシー【レビュー】

クリスチャン・カリオン監督『パリタクシー』を原作とした本作は、東京にある柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設までの道のりを舞台に、山田洋次監督が映画化…

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『果てしなきスカーレット』
  2. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  3. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉
  4. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  5. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP