REVIEW

悪は存在しない【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『悪は存在しない』西川玲

REVIEW

『悪は存在しない』というタイトルにインパクトがあり、鑑賞中はどういう意味が込められているのか考えずにはいられません。自然豊かな村を舞台に展開するストーリーは一見物静かでありながら、あるきっかけによって物々しさを増していきます。そのきっかけとなる出来事は、形は違えど私達の日常によくあることで、利害関係で対立する人達の姿を観ていると、かなりリアルに心を掻き乱されます。
村にもたらされた問題がどう転んでいくのかということに注意が向きながら、それぞれのキャラクターの心情が激しく動き、想定外の一面が見えてくる点もストーリーをよりドラマチックにしています。何気ないセリフをきっかけに一瞬にして空気が変わる瞬間が何度もある点も本作の魅力です。
「悪は存在しない」の意味を考えながら観るなかであらゆる解釈が浮かびつつ、最後にドスンと重い意味が降りかかってきます。地球上の生物としての生存と、人間社会での生存が対比されているような物語の構造も見事です。私達はこういう世界に生きているのだなと実感させられます。

ここからはあくまで私個人の解釈でネタバレを含みますので、鑑賞後にお読みください。

映画『悪は存在しない』小坂竜士/渋谷采郁

ラストのシーンを観た直後は、何が起きたのか目が点になる方もいるかもしれません。ただ、その前に出てくるある会話にヒントがありそうです。グランピング場を作ろうとしている芸能事務所の高橋(小坂竜士 )と黛(渋谷采郁)、主人公の巧(大美賀均)が3人で車に乗っているシーンで鹿の話をしています。鹿が生息している森にグランピング場を作るなら、鹿はどこへいけばいいのかと巧は高橋と黛に問います。その時、高橋は鹿が他のところへ行けばいいと答えます。また、鹿は害がなければ人間を襲わないけれど、危険を感じた場合は違う(厳密な表現では少し異なるかもしれません)というようなことを巧は話しています。

映画『悪は存在しない』

ラストで、鹿に近づき過ぎた娘は恐らく鹿に攻撃されて鼻血を出したのでしょう。巧と高橋も、鹿と人間に置きかえてみると、巧はこの村にとって高橋を有害と考え、あのような行動に出たのではないかと解釈しました。この世に「悪は存在しない」けれど、いつも誰かの”都合”が存在するということではないでしょうか。
ご覧になった方は、どんな解釈をされたでしょうか。上記はいち解釈として捉えていただければと思います。

デート向き映画判定

映画『悪は存在しない』西川玲

ロマンチックな要素はなく、特別デート向きというわけではないものの、鑑賞後はお互いの解釈を話して盛り上がれそうです。何度か一緒に映画を観ていて、気楽に感想を言い合える2人なら一緒に楽しめるのではないでしょうか。相手が観察、考察が好きな方なら特に喜んでくれそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『悪は存在しない』大美賀均/西川玲

わかりやすい説明があるタイプの映画ではなく、何を読み取るかによって、楽しさが変わる作品といえそうです。キャラクター達の日常が一見淡々と描かれているので、これまでアクション超大作など、見た目に派手な映画しか観たことがない方は慣れない感覚になるかもしれませんが、キャラクター達のセリフや受け手の反応を細かく観ると、人間ドラマを中心とした映画の醍醐味を知るきっかけになると思います。

映画『悪は存在しない』大美賀均/西川玲

『悪は存在しない』
2024年4月26日より全国順次公開
Incline
公式サイト

© 2023 NEOPA / Fictive

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』ローラ・カーマイケル ローラ・カーマイケル【ギャラリー/出演作一覧】

1986年7月16日生まれ。イギリス出身。

映画『MERCY/マーシー AI裁判』クリス・プラット/レベッカ・ファーガソン MERCY/マーシー AI裁判【レビュー】

人間 vs. AIという構図になっているかと思いきや…

映画『ヒグマ!!』鈴木福/円井わん ヒグマ!!【レビュー】

『先生を流産させる会』『ライチ☆光クラブ』『許された子どもたち』等を手がけた内藤瑛亮監督作ということで、社会問題を絡めた作品だろうと予想…

映画『エクストリーム・ジョブ』リュ・スンリョン/イ・ハニ/チン・ソンギュ/イ・ドンフィ/コンミョン(5urprise) エクストリーム・ジョブ【レビュー】

本作の主人公は麻薬班の刑事5人です。彼等の登場シーンからコミカルで、一瞬で…

映画『パンダプラン』ジャッキー・チェン/フーフー パンダプラン【レビュー】

スター並みに大人気の稀少なパンダが、何者かに狙われ、パンダの里親になったばかりのジャッキー・チェン本人がパンダを守る…

映画『喝采』キャシー・ベイツ キャシー・ベイツ【ギャラリー/出演作一覧】

1948年6月28日生まれ。アメリカ、テネシー州メンフィス出身。

映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2』 ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2【レビュー】

かつて子ども達に人気だったピザレストラン“フレディ・ファズベアーズ・ピザ”で恐ろしい体験をしたマイク(ジョシュ・ハッチャーソン)と妹のアビー(パイパー・ルビオ)、警察官のヴァネッサ(エリザベス・レイル)は、あれから1年半経ち、平穏な日々を取り戻しつつあり…

映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』ロムニック・サルメンタ/イライジャ・カンラス アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス【レビュー】

怖い!巧い!物語の舞台はレストランの一席、ほぼ2人の登場人物で展開される会話劇で、ここまでスリリングな作品に仕立て上げるとは…

映画『恋愛裁判』唐田えりか 唐田えりか【ギャラリー/出演作一覧】

1997年9月19日生まれ。千葉県出身。

映画『グッドワン』リリー・コリアス 利口な子どもに甘える大人『グッドワン』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は、父と娘、父の友人の3人で出かけたキャンプでの様子を描く『グッドワン』を取り上げ、娘サム、父クリスと、その友人マットそれぞれの視点でどんな思考が働いていたかを想像してみます。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
  2. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  3. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン

REVIEW

  1. 映画『MERCY/マーシー AI裁判』クリス・プラット/レベッカ・ファーガソン
  2. 映画『ヒグマ!!』鈴木福/円井わん
  3. 映画『エクストリーム・ジョブ』リュ・スンリョン/イ・ハニ/チン・ソンギュ/イ・ドンフィ/コンミョン(5urprise)
  4. 映画『パンダプラン』ジャッキー・チェン/フーフー
  5. 映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ2』

PRESENT

  1. 映画『アウトローズ』ジェラルド・バトラー
  2. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  3. 映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ
PAGE TOP