REVIEW

悪人伝

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『悪人伝』マ・ドンソク

ヤクザと刑事が手を組んで、無差別連続殺人犯を追い詰めるという奇想天外なお話ですが、本作は実際の事件に基づいて創作されたというから驚き。どこまでが実際の事件の部分で、どこからがフィクションなのかとても気になりますが、いずれにしてもリアリティがあると同時に、かなりドラマチックなので、映画化されるのも頷けます。本作は韓国で大ヒットし、既にシルベスター・スタローン制作でハリウッド・リメイクも決定しているそうです。
ストーリーについて、一般的には「悪とは、善とは」という一定のイメージがありますが、本作を観ると、全人類に共通する善と悪の定義をすることは不可能であると感じます。本作には悪を持って悪を制する部分が大いにありますが、社会的に善とさせる立場の警察だって必要悪に頼る部分があって、社会的に悪とされるヤクザにも良心があって、それぞれの“正義”、その時々の“正義”を自在に変化させながら、人間は折り合いをつけて生きているんだなと思います。本作は誰が悪人で善人かをジャッジしていない点でキャラクター描写に厚みがあり、観ている側も法による裁きだけでなく必要悪を心のどこかで期待させられたり、観ながらにして善と悪を彷徨う人間の性(さが)を体感できます。マ・ドンソク、キム・ムヨル、キム・ソンジュも迫真の演技を見せていて、最後まで緊張感を途切れさせずに観られますが、ちらっとユーモラスなシーンもあって、演出、演技のクオリティも高いです。ビジュアル的にマフィア映画に見えますが、良い意味でそのジャンルに収まらない、社会派スリラーとなっているので、映画好き女子にも観て欲しい1作です。

デート向き映画判定
映画『悪人伝』マ・ドンソク

ヤクザ、無差別連続殺人犯というキーワードが出ている点でお気づきの通り、バイオレンス要素は必須なので、苦手な人はいると思います。露骨に映しているシーンはそれほどないものの、思わず痛さを想像して緊張感が高まるシーンは何度もあるので、相手にその辺りに免疫があるかどうかをわかった上で、デートで一緒に観るか検討してください。ロマンスの要素は一切ありませんので(笑)、ムーディになることは期待せず、でも吊り橋効果はちょこっとだけ期待できるかも知れません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『悪人伝』マ・ドンソク

これはキッズには怖いでしょう。映画に目覚めた中学生ならトライしてみても良いかなと思いますが、世の中の歪み、大人の事情を多く含んだ内容なので、「善と悪って、結局何なんだ?」と混乱を伴うかも知れません。でも、それぞれの立場によって見え方が違うこと、何が正義で何が悪かは簡単には区別できないことを、極端な例で学べるストーリーだとも言えます。エンタテインメントとして楽しむだけでも十分ですが、考えさせられる部分がある点で見応えを感じてもらえると思います。

映画『悪人伝』マ・ドンソク

『悪人伝』
2020年7月17日より全国公開
クロックワークス
公式サイト

©2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ セレステ・ダッラ・ポルタ【ギャラリー/出演作一覧】

1997年12月24日生まれ。イタリア出身。

映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ ブロークン 復讐者の夜【レビュー】

『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』などを手掛けたサナイピクチャーズが贈る本作は…

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ Dear Stranger/ディア・ストレンジャー【レビュー】

真利子哲也監督(脚本も担当)による西島秀俊主演作という情報のみで、毎度ながら前情報をほぼ入れずに観て、いろいろ良い驚きが…

映画『風のマジム』伊藤沙莉 風のマジム【レビュー】

マジムって何だろうから始まり、すぐに主人公の名前とわかると、次に「じゃあ、風のマジムってどういうことなんだろう?」という具合に…

映画『ベスト・キッド:レジェンズ』ベン・ウォン ベン・ウォン【ギャラリー/出演作一覧】

2000年1月1日生まれ。中国、上海出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  2. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  3. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流
  4. 映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ
  5. 映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP