このゾクゾクは何なんだろうと、言葉にし難い、克服しようのない、人間関係の本質、人間の本性みたいなものを感じさせられる作品です。綾野剛が演じる今野と、松田龍平が演じる日浅の友情物語という側面はありつつ、そもそも友情、信頼って存在するのかと疑問を投げかけてくるようなパワフルなストーリー。つかみどころのない日浅という人間は、時々ドキッとするような言葉を言うのですが、それは悟りなのか、言い訳なのかどちらにも取れて、余計に不気味です。また、人と一定の距離をおいて、恐る恐る近づいてみては傷ついてしまう今野のキャラクターはとてもリアルで、人間関係に踏み込んでみた先に必ず遭遇する試練のようなものを見せてくれます。2人の関係は一見特殊なように見えて、設定は違えど少なからず誰もが経験することだと思います。現代はそこまで踏み込んで人と付き合う機会すら少なくなっているというか、そういう付き合いを選ぶ人が少なくなっていると想像すると、そういう意味でも、見たくない現実を突きつけられるようで一層ゾクゾクさせられます。それでもその中に一筋の光を残し、完全に突き放すわけではない点が、作品の深さであり魅力となっています。綾野剛、松田龍平の演技も本当に見事で、この空気感は2人にしか出せません。いろいろな意味で見応えのある作品です。
低いトーンで進んでいくストーリーで、感情が掻き乱される内容なので、ウキウキした気持ちで楽しく過ごしたい日のデートには向きません。ただ、一方が友人関係で悩んでいたりする場合は、一歩下がって冷静に物事を見られる部分もあるので、頭を冷やすために誘うのもアリかも知れません。
キッズやティーンの皆さんは、規模の大きい小さいはあれど、日々こういうやり取りの中で過ごしているのではないかと思います。大人になったら、それなりに器用に人と付き合おうとするので、相手を選んで付き合おうとしますが、本作で描かれているように、大人になってもいろいろあります(苦笑)。年齢を問わず感情移入できるストーリーなので、皆さんも観てみてください。
『影裏』
2020年2月14日より全国公開
ソニー・ミュージックエンタテインメント
公式サイト
TEXT by Myson
©2020「影裏」製作委員会