REVIEW

王の願い ハングルの始まり

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『王の願い ハングルの始まり』ソン・ガンホ

本作は歴史の一説を基に、ハングル語の成り立ちについて描いたフィクションです。私達は普段当たり前のように文字を使っていますが、本作を観ると文字は意志の疎通をするための道具としてだけではなく、国政にとってもいかに影響力が大きいかを実感できます。
物語の舞台は朝鮮第4代国王、世宗の時代で、この時はまだ朝鮮には自国語を書き表す文字が存在していませんでした。上流階級層だけが特権として中国の漢字を学び使っていましたが、その背景には中国の支配、宗教、国政が絡んでいることが、ストーリーの中で示されていきます。ここで儒教と仏教というキーワードが出てきて、それぞれのルーツに文字が深い関わりを持っていることを知ることができると同時に、なぜ一般庶民に文字を学ばせようとしてこなかったのか、なぜ漢字だけを使おうとしているのかということの背景に権力を保ちたい人達の思惑があることもわかってきます。
本当に文字って奥が深いなとしみじみ感じられて、文字ってこうやって作られていくんだなという行程も観られることで文字の有り難みや重みも伝わってくる内容です。そして、世宗が自分の立場が危うくなりながらも自国の文字を作ろうとする姿に共感し、人間臭い僧侶達の姿は時にユーモラスに描かれていて、お国は違えど、親近感を持ちながら観ることができると思います。『殺人の追憶』のソン・ガンホとパク・ヘイルの共演も映画好きにとっては嬉しい見どころで、実力派俳優の演技が堪能できます。東洋の歴史が好きな方はもちろん、韓国映画好き、語学好きにもオススメの一作です。

デート向き映画判定
映画『王の願い ハングルの始まり』ソン・ガンホ/パク・ヘイル/チョン・ミソン

世宗と王妃の関係も物語の鍵となっていて、リスクの大きなことに取り組む際にパートナーの支えがいかに大切かがわかります。やりたいことがあるのにやれないでいる方、パートナーにそのことを言えないままでいる方は、ぜひ本作を一緒に鑑賞して、挑戦への一歩を踏み出してください。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『王の願い ハングルの始まり』ソン・ガンホ/パク・ヘイル

今皆さんは勉強として語学をやらされている感が大きいかもしれませんが、その成り立ちや背景を知ると、文字や言葉を学ぶことがいかに尊いことかがわかると思います。それと同時に文字っておもしろいと思えれば、ハングル語に限らず、いろいろな言葉のルーツなどを調べることで、勉強させられている感覚がなく自然にその言葉が身につけられると思います。文字を読めることは力を持つことであるというのもわかる内容なので、今やっている勉強も無駄ではないと思えるはずです。

映画『王の願い ハングルの始まり』ソン・ガンホ/パク・ヘイル

『王の願い ハングルの始まり』
2021年6月25日より全国順次公開
ハーク
公式サイト

© 2019 MegaboxJoongAng PLUS M,Doodoong Pictures ALL RIGHTS RESERVED.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ モンテ・クリスト伯【レビュー】

アレクサンドル・デュマ・ペールの傑作小説「巌窟王」を映画化した本作は…

映画『秒速5センチメートル』松村北斗 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年10月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年10月】のアクセスランキングを発表!

映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一 旅と日々【レビュー】

つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』などを手がけた三宅唱監督が映画化…

映画『風のマジム』肥後克広 肥後克広【ギャラリー/出演作一覧】

1963年3月15日生まれ。沖縄県出身。

【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】羽佐間道夫、山寺宏一ほか 人気声優達が真剣勝負!会場が終始笑いに包まれた【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】本番リポート

発起人である羽佐間道夫のもと、山寺宏一、林原めぐみほか錚々たる人気声優達がズラリと顔を揃えたライブは今年で20周年を迎えました…

映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』ホン・サビン/シン・ジュヒョブ あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。【レビュー】

物語の始まりは、1995年の韓国、テグ。学校でいじめられていたドンジュン…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  2. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー
  3. 映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング
  4. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  5. 映画『秒速5センチメートル』松村北斗

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP