REVIEW

アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』

タイトルだけ聞くと強烈で、前情報を入れずに観ると一見ぶっ飛んだ映画のように感じる部分がありますが、実はすごく哲学的で真面目な映画です。物語は、ルーマニアのブカレストにある名門校で教師を務めるエミが、私的に撮った夫とのセックス動画のネット流出問題に直面するというもの。公式サイトによると、「猥褻(わいせつ)とは何か」をテーマとしています。
本作は3章で構成されており、1章と3章はエミの様子が映されていますが、2章はいろいろな言葉の定義とそのイメージをテンポ良くスライドのように映しています。そのほとんどには皮肉が込められていますが、この2章があることによって、本作が何を伝えたいのかが一層明確になっているとも言えます。一方で作者の意図が汲み取れないと、キョトンとしてしまう可能性もあります(苦笑)。ですので、本作に関していうと最初に公式サイトでプロダクションノートを読んでおくほうが理解しやすいかもしれません。
そして3章で描かれている、学校と保護者がエミに対する処分を決めるシーンでは、まさに「猥褻とは何か」について、さまざまな人の態度で表現されています。私達観客は彼等の様子を客観視できるので、何が猥褻か、誰が卑猥なのか、よく理解できると思います。子ども達に対する教育、大人の責任について問う内容でもあり、セクシャルハラスメントの観点でも興味深い内容です。

デート向き映画判定
映画『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』

サブタイトルに「監督自己検閲版」とあり、ネットで流出される夫婦生活の動画の内容は隠されていますが、声と字幕だけでもかなりの性描写があるので、デートで観るのは気まずいでしょう。ただ、議論好きなベテランカップルなら、議論のし甲斐がある内容なので2人で観てみても良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』

特に大人の感覚が大きくズレている点は客観視できるので、悪いお手本として観るというスタンスはアリでしょう。ただ、15歳になって観られたとして、子ども目線で観るといろいろな意味で引いてしまう要素があるように思います。どういう意図で何をテーマに作られた作品なのかを公式サイトなどで予め知った上で観るほうが為になりそうです。

映画『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』

『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』
2022年4月23日より全国順次公開
R-15+
JAIHO
公式サイト

© 2021 MICROFILM (RO) | PTD (LU) | ENDORFILM (CZ) | K INORAMA (HR)

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  4. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  5. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP