REVIEW

アス

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『アス』ルピタ・ニョンゴ/ウィンストン・デューク

私の場合、毎度のことですが観る前は極力情報を入れずに観るので、自分達とそっくりな人達が襲ってくるという事態がなぜ起こったのかという謎解きを楽しむ視点で観賞しました。結構早い段階でカラクリに気付いてしまったこともありますが、本作はそこを楽しむというよりも、やはりアメリカの社会問題、ひいては私達を含む世界中に通じる社会問題を投影している点が最大の見どころとなっています。これはどのジョーダン・ピール監督作にも通じるところなので、本作を観ようとする人はそこを期待している人も多いと思います。残念ながら公式サイトには載っていないので、少しだけここでヒントを紹介しておくと、マスコミ向けの公式資料にある映画評論家、町山智浩氏のコラムにジョーダン・ピール監督がこの作品を作った背景が載っていて、長きに渡り続いている富裕層の優遇と、福祉への政府支出の削減による貧富の差の問題が挙げられていました。ジョーダン・ピール監督は「この世でいちばん怖いモンスターは何か考えた」と話したとも書かれていて、本作でそれをどうやって描写しているかは、映画でご覧頂くとして、利己的な社会が何を生み出すのかというのが本作の一つのテーマになっていると言えます。本作で、いろいろな意味でゾッとする感覚を味わってください。多くの人がゾッとするなら、まだこの世界は救いようがあるのかも知れません。

デート向き映画判定
映画『アス』ルピタ・ニョンゴ

社会的なメッセージまで読み取って観るか、単純にスリラー、ホラーとして観るかによって、満足感が異なりそうだし、観終わった後の会話の内容も全然変わってくると思います。そういう意味では、観方にギャップがあると、カップルとしてはちょっと相性を疑ってしまうきっかけになるかも知れません。好みも分かれそうなので、初デートには向いていないでしょう。一緒に観て楽しめそうな友達を誘うか、1人で観るほうが無難そうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『アス』ルピタ・ニョンゴ/ウィンストン・デューク

R-15なので、15歳未満の人は観られません。子どもでも容赦ない描写がたくさん出てきて、15歳以上のティーンでも怖いストーリーを観慣れていないとショッキングだと思います。ただ、背景には社会問題に対するテーマがあるので、本作を気に入ったら、本作が描かれた背景を調べてみるのもオススメです。ジョーダン・ピール監督は7歳の頃、1986年5月25日に実際にあった“ハンズ・アクロス・アメリカ”という慈善イベントを目撃して、「怖かった。なぜだかわからないけど」と語っています(公式資料より)。映画のヒントにもなっているようなので、この出来事から調べ始めてみると、アメリカで長年続いている社会問題をより深く知ることができ、この映画が何を意味しているかもイメージが膨らむと思います。

映画『アス』ルピタ・ニョンゴ

『アス』
2019年9月6日より全国公開
R-15+
東宝東和
公式サイト

© 2018 UNIVERSAL STUDIOS © Universal Pictures

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

映画『君の顔では泣けない』芳根京子 芳根京子【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月28日生まれ。

映画『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー 『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー

今回は『白の花実』に出演する美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんにお話を伺いました。撮影前に準備されたことや、本編を観た感想を直撃!

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  2. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  4. Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック
  5. 映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP