REVIEW

ヴィレッジ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ヴィレッジ』横浜流星

小さな村に住む主人公の片山優(横浜流星)が、幼い頃に父が起こした事件により、長らく批判の目に晒されながら、わずかな希望にすがりついて生きていく様を描いた本作を観ていると、強いテーマが浮かび上がってきます。それは、臭いものには蓋をする文化です。本作の舞台となる閉鎖的な村には、異様な統率感が存在し、おかしなことに疑問を抱かない、投げかけないのが当たり前で、問題が起きても簡単にうやむやにされる状況になっています。この状況は、村の産業の中核となっているゴミ処理場に象徴されています。集められる不要なものと同様に、社会から阻害された人達はゴミ処理場で働かざるをえず、ないがしろにされている状況が比喩されているといえるでしょう。
テーマの2つ目は、臭いものに蓋をするにも限界があるということです。不法投棄は、捨てられてもなお害を与えるものの象徴に見えます。たとえ揉み消された過去でも、何かしらの形でいつまでも人々のその後の人生に付きまといます。
ゴミ処理場とゴミ、不法投棄物、それがそのまま、この村社会を比喩していて、さらには大きな括りとして、社会全体の縮図として描かれているとも捉えられます。閉鎖的な村社会を描く作品は多くあり、短絡的に観れば「嫌なら村を出ればいい」といって終わるかもしれません。ただ本作のとある登場人物もそうであったように、村を出たからといって幸せになれるかといえばそうでもありません。結局人間はどこにいても何かしらのコミュニティに属さずに生きることは難しく、居場所が必要です。ただ、誰でも容易に自分に合う居場所を見つけられるわけではありません。人が軸であるべき社会が、人ではなく見せかけの社会を守ることを重視する本末転倒な状況はこの世に蔓延しています。本作はそんな現代社会の姿を映し出しているのではないでしょうか。

デート向き映画判定
映画『ヴィレッジ』横浜流星/黒木華

お互いに支え合うカップルの姿が映し出されていて、共感できる要素はあるものの、重い内容なのでロマンチックなムードはそれほど期待できません。ただ、自分の価値観、人生観を振り返るきっかけになりそうな内容なので、一緒に観て感想を語り合うことでお互いを理解できる部分が増えるかもしれません。2人とも興味があれば一緒に観てみてはどうでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ヴィレッジ』黒木華/一ノ瀬ワタル

いろいろな人生経験を経てから観るほうが一層心に刺さりそうな内容です。とはいえ、進路を考えたり、自立した後の将来イメージがだんだん具体的になってくる中学生、高校生の皆さんは、興味があれば観てみてください。大人になってくると、良くも悪くも周囲に合わせて”器用”に生きる術を知っていきます。そのなかで、自分はどんな人生を歩みたいか、本作を観て客観的に考えてみるのも良さそうです。

映画『ヴィレッジ』横浜流星/黒木華/一ノ瀬ワタル/奥平大兼/作間龍斗/西田尚美/木野花/中村獅童/古田新太

『ヴィレッジ』
2023年4月21日より全国公開
PG-12
KADOKAWA、スターサンズ
公式サイト

© 2023「ヴィレッジ」製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『左利きの少女』ニーナ・イエ かわいいだけじゃ務まらない!名子役特集Vol.4

今回も、主役から脇役まで存在感を大いに発揮している名子役をご紹介します!

映画『TAVERNA DE GAGA―人生はまだまだ面白い―』パンツェッタ・ジローラモ 『TAVERNA DE GAGA―人生はまだまだ面白い―』キャスト&監督登壇!先行プレミア試写会 5組10名様ご招待

映画『TAVERNA DE GAGA―人生はまだまだ面白い―』先行プレミア試写会 5組10名様ご招待

映画『平行と垂直 』安田章大/のん 平行と垂直【レビュー】

主演の安田章大にとって初の企画作品ともなる本作は、自閉スペクトラム症の兄、大貴(安田章大)と、妹の希(のん)の物語です…

映画『オークストリートの異変』アン・ハサウェイ/ユアン・マクレガー オークストリートの異変【レビュー】

本作が斬新なのは、日常に突如恐竜が入り込んでくる点です。文字どおり、家に恐竜が来ちゃうんです…

映画『私はあなたを知らない、』坂口健太郎/堀田真由/倉田瑛茉 私はあなたを知らない、【レビュー】

坂口健太郎が主演の中野量太監督作という情報のみで観たいと思い、ポスタービジュアル、あらすじ、キャッチコピーすら目にすることなく本編を拝見しました…

映画『Mr.ノボカイン』ジェイコブ・バタロン ジェイコブ・バタロン【ギャラリー/出演作一覧】

1996年10月9日生まれ。アメリカ出身。

映画『さとこはいつも』有村架純/石田ひかり/姫野花春 『さとこはいつも』キャスト登壇付き特別試写会 5名様ご招待

映画『さとこはいつも』キャスト登壇付き特別試写会 5名様ご招待

映画『時には懺悔を』西島秀俊/満島ひかり 時には懺悔を【レビュー】

打海文三による原作「時には懺悔を」には、著者自身が障がいを持つ息子を育てた実体験が反映されているとのことです…

映画『グレイ・ミッション』ヘンリー・カヴィル/ジェイク・ギレンホール グレイ・ミッション【レビュー】

『コードネーム U.N.C.L.E.』と同様に、女性1名、男性2名のトリオで魅せる作品でありつつ、本作では女性がボスという設定に特徴があります…

映画『君の見る世界をなぞる』エロワ・ポユ/マクシム・スリヴィンスキー 君の見る世界をなぞる【レビュー】

一見恵まれた環境にいるエンゾは、自分のアイデンティティに悩まされ、居場所を見出せずにいます…

【映画でSEL】にたどりつくまでの道

今のあなたに必要な非認知能力を伸ばす【映画でSEL】プログラムのご案内

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集! 【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集!

メタ認知は、自分で自分をわかるために必要な認知機能です。今回は、映画鑑賞においてメタ認知の働きによって、鑑賞後の印象が変わるはずという仮説のもと、メタ認知が働く映画鑑賞とそうでない映画鑑賞で何が異なるのかを一緒に考えます。本ゼミでは、映画鑑賞に絡めて日常にも役立つ心理学を取り上げています。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』ラミ・マレック 映画好きが選んだ実在アーティストの伝記映画ランキング

今回は実在アーティストの伝記映画について、正式部員の皆さんに投票してもらいました。さまざまな有名アーティストにまつわる作品がある中で上位にランクインしたのはどの作品でしょうか?

映画『ズートピア2』 映画好きが選んだ2025アニメ映画ベスト

今回は、2025年に劇場公開されたアニメ映画について、正式部員の皆さんによる投票結果ベスト30を発表!2025年のアニメ映画ベストに輝いたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画学ゼミ第10回】「メタ認知が働く映画鑑賞、そうでない映画鑑賞、何が違う?」参加者募集!
  2. 映画『四月の余白』一ノ瀬ワタル/上阪隼人
  3. 【映画学ゼミ第9回】「作品との心理的距離感に影響を与え得る情動知能」参加者募集!

REVIEW

  1. 映画『平行と垂直 』安田章大/のん
  2. 映画『オークストリートの異変』アン・ハサウェイ/ユアン・マクレガー
  3. 映画『私はあなたを知らない、』坂口健太郎/堀田真由/倉田瑛茉
  4. 映画『時には懺悔を』西島秀俊/満島ひかり
  5. 映画『グレイ・ミッション』ヘンリー・カヴィル/ジェイク・ギレンホール

PRESENT

  1. 映画『TAVERNA DE GAGA―人生はまだまだ面白い―』パンツェッタ・ジローラモ
  2. 映画『さとこはいつも』有村架純/石田ひかり/姫野花春
  3. 映画『ヒンド・ラジャブの声』
PAGE TOP