REVIEW

VORTEX ヴォルテックス【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『VORTEX ヴォルテックス』ダリオ・アルジェント/フランソワーズ・ルブラン

REVIEW

ギャスパー・ノエ監督作品といえば、過激な性描写やバイオレンス描写が特徴的な作品が多いなか、本作は老夫婦の最期を淡々と追った作品となっています。ただし、”ふつう”の映画を撮らない点が、さすがギャスパー・ノエ監督。まず、本作は終始2画面で物語が同時進行するユニークな構成となっています。2画面に映っている人物が同じ場所にいても終始2画面で、微妙に異なるカメラアングルで、それぞれの画面に映る人物を眺めることができます。これはとても不思議な映像体験です。
主人公は、認知症の症状が進行する妻(フランソワーズ・ルブラン)と、心臓の病を患っている夫(ダリオ・アルジェント)。脇役の数もかなり限られています。彼等の身に起こるのは、とても生々しい日常的な出来事であり、時代を問わず万国共通の出来事といえます。だから、日本人である私達でもとても身近に感じられます。そして、一見淡々と描かれているようでいて、老いの怖さはヒシヒシと伝わってきます。人の最期を映す作品には、最期の日々を美しく描いている作品が多い印象があるなか、本作は観る者に媚びへつらうことなく、人間の最期をありのまま生々しく描いています。そこにキャラクター達の人間臭さも染み出ていて、テーマがこれまでの作品と一見大きく違っていても、やはりギャスパー・ノエ監督らしい描写になっています。
本作は、ホラー映画の帝王といわれるダリオ・アルジェント監督が80歳(撮影当時)で初主演を果たしたことでも興味深い作品です。ギャスパー・ノエ監督作品でダリオ・アルジェント監督が主演しているなんて濃過ぎますよね!そんな濃すぎる2つの才能がどんな化学反応を起こしているのか、映画好きなら気にならない人はいないはず。強烈な芸術センスを持つ2人の映画人が、本作を作る上でどんなやり取りをしていたのか想像するのも楽しいです。もちろん、老いや死についてしっかり考えさせられる内容なので、いろいろな観方を楽しめます。

デート向き映画判定
映画『VORTEX ヴォルテックス』ダリオ・アルジェント/フランソワーズ・ルブラン

デートで観てムードが盛り上がる内容ではないものの、一生を共にしようと考えているカップルや夫婦で観ると、自分達の未来を一緒に想像できるのではないでしょうか。本作を観て、将来本当にどうなるのかわからない怖さを感じつつ、”うまく”生きていくにはどうすれば良いのか、綺麗事を抜きにして考えるきっかけにするのもアリかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『VORTEX ヴォルテックス』ダリオ・アルジェント/フランソワーズ・ルブラン

祖父母と一緒に暮らしている方にとっては身近なストーリーに思えそうですが、そうでない限り、キッズやティーンの皆さんにはまだピンとこない部分があると思います。大人になって、自分達の親が老いていくのを実感する頃には、いろいろと思うところが出てくるでしょう。
一方、観る人の年齢を問わず、終盤のシーンでは特に”家”にまつわるセリフや描写にさまざまな想像を掻き立てられると思います。死生観に興味がある方は、老夫婦の生活から見えること、ラストシーンの意味など、いろいろな解釈をしてみるのも良いのではないでしょうか。

映画『VORTEX ヴォルテックス』ダリオ・アルジェント/フランソワーズ・ルブラン

『VORTEX ヴォルテックス』
2023年12月8日より全国公開
PG-12
シンカ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE – KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  2. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  3. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  4. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  5. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP