REVIEW

BAUS 映画から船出した映画館【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太

REVIEW

2014年、東京都、吉祥寺の映画館“バウスシアター”が閉館となりました。本作は、この映画館を親の代から運営してきた本田拓夫著「吉祥寺に育てられた映画館 イノカン・MEG・バウス 吉祥寺っ子映画館三代記」を原作とし、2022年に逝去された青山真治が遺した脚本をもとに、甫木元空監督が映画化した作品です。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太/峯田和伸

サネオ(染谷将太)は、兄のハジメ(峯田和伸)とともに青森から上京します。当時、活動写真と呼ばれていた無声映画は弁士の語りとともに上映されていて、2人は弁士として生計を立てたいと考えていたところ、ひょんな出会いがあり、“井の頭会館”で働くことになります。そうしてサネオの家族と映画館の物語が始まります。本作は、約90年遡り、2014年のバウスシアター閉館までを辿っています。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』

井の頭会館は、1925年、東京都の吉祥寺に初めてできた映画館です。その後、無声映画からトーキー映画への移行、日中戦争、第二次世界大戦、敗戦でアメリカの統制下に置かれた影響による外国映画の輸入統制など、時代の大きなうねりの中で生き延びてきました。一方、1951年にバウスシアターの前身となる”ムサシノ映画劇場(後の吉祥寺ムサシノ映画)”が誕生します。このバウスシアターでは「おもしろいことはなんでもやる」というコンセプトのもと、演劇、音楽、落語なども上演されていたそうです(映画公式資料)。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』

映画館とそこで働く人達を含めた“家族”の90年の物語を観ると、人々にとっての映画とは何かが伝わってきます。そして何より、映画館という居場所の意義を実感できます。映画が消費、消化されて終わるただのコンテンツではない存在であることを再認識できます。映画文化を後世にも継いでいくためにも、映画ファンはもちろん、ぜひ多くの方に観ていただきたい1作です。

デート向き映画判定

映画『BAUS 映画から船出した映画館』夏帆

サネオとハマ(夏帆)の夫婦関係も見どころです。夫サネオをそっと見守り、頼もしい母として子ども達をのびのび育てるハマの姿も印象的です。映画好きには響く言葉も散りばめられているので、2人とも映画ファンなら鑑賞後の会話も弾みそうです。気まずい要素もないので、映画ファン同士なら初デートで観るのもアリでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『BAUS 映画から船出した映画館』

途中から幼いタクオが登場し、子どもから観た映画館、映画館で働く大人達の姿が描かれています。キッズにはまだピンとこないかもしれませんが、中学生以上なら、時代背景と映画館の経営状況、変化を余儀なくされる状況を理解しながら観られると思います。本作によって、映画文化を遺したいという思いが、若い皆さんに伝わると嬉しいです。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太/峯田和伸/夏帆

『BAUS 映画から船出した映画館』
2025年3月21日より全国公開
コピアポア・フィルム、boid
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©︎本田プロモーション BAUS/boid

TEXT by Myson


関連作

「吉祥寺に育てられた映画館 イノカン・MEG・バウス 吉祥寺っ子映画館三代記」本田拓夫 著/文藝春秋
Amazonで書籍を購入する

「吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館」ラスト・バウス実行委員会 著/文藝春秋
Amazonで書籍を購入する

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年3月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

【東京コミコン2025】オープニング:イライジャ・ウッド、カール・アーバン、リー・トンプソン、トム・ウィルソン、クローディア・ウエルズ、ダニエル・ローガン、ジョン・バーンサル、クリスティーナ・リッチ、イヴァナ・リンチ、ノーマン・リーダス、ショーン・パトリック・フラナリー、ジャック・クエイド、マッツ・ミケルセン、浅野忠信、ピルウ・アスベック、セバスチャン・スタン、ジム・リー、C.B.セブルスキー、フランク・ミラー、クリストファー・ロイド、中丸雄一(MC)、伊織もえ(PR大使)、山本耕史(アンバサダー) 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』一行や人気アメコミ出演者達が勢揃い!【東京コミコン2025】オープニングセレモニー

年末恒例行事となった東京コミコンのオープニングセレモニーを取材してきました。今年は過去最高といえるのではないかという数のスター達が来日してくれました。

映画『ズートピア2』 ズートピア2【レビュー】

さまざまな動物達が人間と同じように暮らすズートピアを舞台にした本シリーズは…

映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル エディントンへようこそ【レビュー】

アリ・アスター監督とホアキン・フェニックスの2度目のタッグが実現した本作は、メディアの情報に翻弄される人々の様子を…

映画『愚か者の身分』林裕太 林裕太【ギャラリー/出演作一覧】

2000年11月2日生まれ。東京都出身。

映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン ペンギン・レッスン【レビュー】

『ペンギン・レッスン』というタイトルが醸し出す世界観、スティーヴ・クーガンやジョナサン・プライスといった名優がメインキャストに名を連ねていることからして…

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

映画『ナイトフラワー』北川景子 北川景子【ギャラリー/出演作一覧】

1986年8月22日生まれ。兵庫県出身。

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年11月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年11月】のアクセスランキングを発表!

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『ズートピア2』
  2. 映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル
  3. 映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン
  4. 映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平
  5. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP