REVIEW

幻滅【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『幻滅』バンジャマン・ヴォワザン

19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックによって書かれた「人間喜劇」の一編「幻滅——メディア戦記」を原作として映画化された本作は、マスメディアの実態を描いています。美しい詩を書いたリュシアン(バンジャマン・ヴォワザン)は、貴族で人妻のルイーズ(セシル・ド・フランス)に気に入られ、深い関係に。でも、2人の関係がルイーズの夫にばれてしまい、2人はパリに駆け落ちをします。でも、田舎者で平民のリュシアンは社交界に属するルイーズの日常に馴染めず、路頭に迷うことになります。
この後、リュシアンは自活するために職を探し、やがて新聞社で記事を書く仕事を得ます。そのなかで、マスメディアの実態が描かれていくわけですが、人も社会もマスメディアに踊らされている実態は現代のマスメディアとさほど変わらないことに驚きます。また、芸術にも大きな影響(むしろ打撃のほうが強い)を与えていて、作品の良し悪しや、アーティストの実力は、吟味されることなく、“誰かの都合”に合わせてマスメディアが流す情報によってコントロールされている実態が描かれています。本作を観ていると、マスメディアの在り方について考えさせられると同時に、マスメディアに潰されていく才能があると考えると恐ろしくなります。
本作は、魅力的なキャストが揃っている点も見どころです。主演のバンジャマン・ヴォワザンは、純粋無垢な一面と美しさで女性達を魅了するリュシアンにピッタリ。ヴァンサン・ラコストは、キーマンとして登場するエティエンヌを好演しています。グザヴィエ・ドランは圧倒的な存在感を放っていて、物語の風向きを変えるナタンというキャラクターにはとある仕掛けもあり、再度観直したくなると思います。他にも、セシル・ド・フランス、ジェラール・ドパルデューといった実力派が脇を固めていて贅沢な作品となっています。
1人の青年がたどる希望と絶望の物語はどんな結末を迎えるのか。現代にも通じる要素がたくさんあるので、ぜひご覧ください。

デート向き映画判定
映画『幻滅』バンジャマン・ヴォワザン/セシル・ド・フランス

恋愛関係のもつれが描かれていたり、セクシャルなシーンやヌードも出てくるので、初デートだと少し気まずいかもしれません。軸は、リュシアンが田舎からパリに出てきてどんな運命をたどるかという物語なので、地元を出て都会暮らしに苦労してきた方なら共感する部分も多く、鑑賞後に話したくなることもいろいろ出てきそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『幻滅』バンジャマン・ヴォワザン

主人公のリュシアンは20歳で田舎から都会のパリに出てきます。彼はさまざまな経験をするので、もうすぐ社会に出ようとするティーンの皆さんにとっては、リハーサルのような感覚で観られるところがあるでしょう。若気の至りで危機的状況を招く展開もあるので、反面教師としても観られます。

映画『幻滅』バンジャマン・ヴォワザン

『幻滅』
2023年4月14日より全国公開
R-15+
ハーク
公式サイト

© 2021 CURIOSA FILMS – GAUMONT – FRANCE 3 CINÉMA – GABRIEL INC. – UMEDIA

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大 兄を持ち運べるサイズに【レビュー】

原作は、村井理子が書いたノンフィクションエッセイ「兄の終い」…

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『見はらし世代』井川遥 井川遥【ギャラリー/出演作一覧】

1976年6月29日生まれ。東京都出身。

映画『WEAPONS/ウェポンズ』 WEAPONS/ウェポンズ【レビュー】

ある町から突然17人の子どもが同時に行方不明になるところから始まる本作は、“IT/イット”“死霊館”シリーズなど、傑作ホラーを多数世に送り出してきた…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  2. 映画『消滅世界』蒔田彩珠
  3. 映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚
  4. 映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大
  5. 映画『WEAPONS/ウェポンズ』

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP