REVIEW

関心領域【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『関心領域』

REVIEW

ユダヤ人虐殺を取り上げた作品はこれまでにたくさんあるなかで、本作のような角度から取り上げた作品はなかったのではないでしょうか。本作の登場人物は、1945年、ユダヤ人の大量虐殺が行われていたアウシュビッツ収容所のすぐ隣で暮らす家族と使用人達です。アウシュビッツ収容所はセリフの中には登場しつつ、収容所の様子はほとんど音だけで表現されている点も印象的です。音だけだからこそ余計にそこで行われている恐ろしい出来事が生々しく伝わってくるように感じます。
本作は『関心領域』というタイトルそのままに、人の関心がいかに違っていて、それが何を意味するのかを訴えかけてきます。すぐ隣で多くの人が殺されているにもかかわらず、キャラクター達の日々の過ごし方はまちまちです。その環境が“快適”と捉えている者もいれば、耐えられない者、その場にいながら自分ができることをやろうとする者、それぞれの日常の様子が淡々と描かれています。一見平然としているようでいて内心はそうとはいえない者、完全に自分中心の価値観で生きている者、そうした違いも言葉ではなく、ふとした描写で示している点も本作が秀逸な点だといえます。

映画『関心領域』

虐殺が罪深いのはもちろん、無関心であることもとても罪深いと訴えかけてくる内容です。戦争映画、ユダヤ人虐殺の映画というジャンルを超えて、本作は時代や場所を問わず、人間が常に抱えている問題を提起しています。これこそ本当に怖い物語です。誰にでも日常で見て見ぬ振りをしてしまうことはあり、何にでも関心を持つというのは不可能です。ただ、無関心であってはいけない領域があると、本作は教えてくれます。

デート向き映画判定

映画『関心領域』クリスティアン・フリーデル

デートムービーとはいえないものの、本作に登場する夫婦を観て何を感じるかを話し合うと、お互いの価値観を知る機会になりそうです。致命的といえるほどの感覚の異常さ、“極度の無関心”について描かれていて、現代社会にも通じる部分が大いにあります。自戒の機会にもなるので、一緒に観るのも有意義だと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『関心領域』ザンドラ・ヒュラー

露骨な描写は出てこないとはいえ、かなりむごい状況が描かれています。幸せに暮らしているように見える家族の周辺で何が起きているのか、想像力、観察力を働かせながら観てください。無関心でいることがいかに残酷か、客観視する機会をくれる作品です。同時に、どんな人間でありたいか、考える機会にもなると思います。

映画『関心領域』

『関心領域』
2024年5月24日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド 大切な人ができれば、譲れないことも変わる!?『We Live in Time この時を生きて』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は運命的な出会いを果たし、ぶつかり合いながらもお互いに正直に生きるカップルの物語『We Live in Time この時を生きて』を取り上げます。

映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊 『雪風 YUKIKAZE』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『雪風 YUKIKAZE』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー IMMACULATE 聖なる胎動【レビュー】

敬虔な修道女のセシリア(シドニー・スウィーニー)は、イタリアの美しい田園都市にある修道院にやってきます…

映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド ストレンジ・ダーリン【レビュー】

6章からなる本作は、ユニークな構成となっています…

映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー/ブランドン・スクレナー ブランドン・スクレナー【ギャラリー/出演作一覧】

1990年6月26日生まれ。アメリカ出身。

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット スーパーマン【レビュー】

ジェームズ・ガン監督らしい表現によって、全く新しい“スーパーマン”が観られます。冒頭の演出からして…

映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレート アンソニー・ブイサレート【ギャラリー/出演作一覧】

2004年9月27日生まれ。タイ、バンコク出身。

映画『逆火』北村有起哉 逆火【レビュー】

主人公の野島浩介(北村有起哉)は、感動を呼び話題となっている自伝小説の映画化作品の助監督を務めています。野島は作品に活かすため…

映画『アマチュア』来日ジャパンプレミア:レイチェル・ブロズナハン レイチェル・ブロズナハン【ギャラリー/出演作一覧】

1990年7月12日生まれ。アメリカ生まれ。

映画『顔を捨てた男』セバスチャン・スタン 顔を捨てた男【レビュー】

社会が自分を見る目と、自分自身が自分を見る目がいかにして人の心理や生き方、ひいてはウェルビーイングに影響するのかを…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド
  2. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  3. 映画でSEL:告知1回目

REVIEW

  1. 映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー
  2. 映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド
  3. 映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット
  4. 映画『逆火』北村有起哉
  5. 映画『顔を捨てた男』セバスチャン・スタン

PRESENT

  1. 映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊
  2. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
  3. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP