REVIEW

町田くんの世界

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『町田くんの世界』細田佳央太/関水渚

朗らかな良い話なんだろうなというのはポスタービジュアルなどから伝わってきますが、観てみると、想像以上に笑えるシーンが多い上に、後半で胸が締め付けられるような青春ラブストーリーへ怒濤の転換を遂げる点で、観る側の感情もかなり揺さぶられるので満足感が得られます。実年齢的にアラサーの、岩田剛典、高畑充希、前田敦子、太賀が学生役として起用されていることに観る前は違和感がありましたが、彼らをキャスティングすることによって、良い意味で滑稽に見えると同時に、町田くんと猪原さんというキャラクターの戸惑いが際立って見えて、演出的に練られたキャスティングなんだなと納得できます。池松壮亮は大人の役でしたが、彼が演じたキャラクターもすごく味があって、大人の観客は彼の目線を通してこの世界を観察できます。原作漫画では、それぞれのキャラクターがどんな風に描写されていたのか興味が湧きますが、役者達のコミカルな演技が上手な点も功を奏しているのは間違いありません。町田くんにつられて、周囲もだんだん必死になっていく姿や、よくわからないけど素直な気持ちで行動してしまって戸惑う掛け合いなどが笑えると同時に感動して、観た後は本当に心が洗われるような感覚を味わえますよ。

デート向き映画判定
映画『町田くんの世界』関水渚/高畑充希/前田敦子

誰にでも親切で優しい人に片思いしている人や付き合っている人は、本作で関水渚が演じた猪原さんにとても共感するでしょう。誰にでも優しいと、特定の相手には逆に気持ちがわかりづらいということも客観視できると思います。本作では、町田くんも猪原さんも、人として好きというのと、恋心で好きという違いをわかるまで苦労しますが、友達以上恋人未満から発展がない人は、試しに2人で観に行くと何らかの刺激を受けられそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『町田くんの世界』細田佳央太/岩田剛典

町田くんのように誰にでも分け隔てなく人に親切にすることは本当に素晴らしいことです。でも、一方で自分を後回しにするのってどうなのかという疑問にも触れていて、日頃皆さんが葛藤を覚えるテーマを扱っています。キッズやティーンの皆さんの心情にドンピシャな物語で、いろいろなキャラクターが登場するので、何かしら自分に当てはまる部分を見つけて感情移入できると思います。大人にも刺さる内容なので親子で観るのもアリだし、友達と観るのもアリです。

映画『町田くんの世界』細田佳央太/関水渚/岩田剛典/高畑充希/前田敦子/太賀/池松壮亮/戸田恵梨香/佐藤浩市/北村有起哉/松嶋菜々子

『町田くんの世界』
2019年6月7日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト

©安藤ゆき/集英社 ©2019 映画「町田くんの世界」製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  4. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  5. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP