REVIEW

MEN 同じ顔の男たち【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『MEN 同じ顔の男たち』ジェシー・バックリー

これは、闇鍋のような作品です(笑)。観る人を選ぶ要素がかなりあります。自分でさまざまな解釈をするのが好きな映画ヘビーユーザーは、存分に楽しめると思う一方、可愛いドレスを着た主人公ハーパー(ジェシー・バックリー)が映るアーティスティックなビジュアルに惹かれて、何となくのノリで観ると「ギョエ〜〜〜〜!!!」となってしまうでしょう。もうクライマックスなんて、「何を見せられてるんだろう…」と、ある意味劇中のハーパーと同じく固まってしまうかもしれません。
とはいえ、嚙めば嚙むほど味が出てくるのが本作の魅力です。クライマックスのあまりに強烈なビジュアルに「オイオイオイオイオイ」となってしまうものの、その描写が何を意味するのかを考えずにいられなくなります。だからこそ、最後のハーパーの反応、表情をどう読み取るかがとっても重要!直前まで目を背けたくなるシーンが続きますが、どうか頑張って目をしっかり開けてキャラクターのやり取りに最後まで注目してください。

この後は、私なりの解釈をなるべくネタバレがないように書きますが、何も知らずに観たい方は鑑賞後に読んでいただければと思います。

ハーパーは、冒頭で記憶から消せない出来事を経験します。ハーパー自身、その出来事から一生逃れられないだろうと覚悟していることはセリフから伝わってきます。ただ、彼女の記憶から消えない理由が複数あることが、その時彼女に何が起こったかがストーリーの中で徐々に明かされていく度に見えてきます。“同じ顔の男たち”は、彼女が何をしていてもふと現れますが、それは彼女のトラウマの象徴であるように読み取れます。そして、彼等が口々に話す言葉は男性社会で女性達が異論を唱えた際や助けを求めた際に返される理不尽な言葉であり、女性達自身も受け容れてはいないながらも脳に擦り込まれてきた社会通念を代弁しているものだと考えられます。少年や聖職者さえ“同じ顔の男たち”である点で、いかに逃げ場がないか、おかしな社会通念が蔓延っているかを表しているとも受け取れます。自分の意志を主張したハーパーが責めを負う必要はさらさらないはずですが、なぜかハーパーが身の危険を感じ、自分が崩壊する恐怖怯える状況に陥ってしまっているという理不尽さが、本作で本当に怖いポイントなのではないでしょうか。ラストのハーパーの表情をどう読み取るかは皆さんそれぞれ異なると思いますが、私は「何言ってんだ、こいつ」と世の女性達の本心を表現しているように思いました。女性を尊重できない男性達がいかに稚拙であり、愛という上っ面な言葉で片付けようとする姿勢をもろともしないハーパーの反応に私は賛成です。
最後に、海外ドラマ『ペニー・ドレッドフル ~ナイトメア 血塗られた秘密~』を観ていたファンとしては、あのキャラクターを彷彿とさせる部分もあり、ロリー・キニアを起用している点で「ナイス・キャスティング!」とニンマリしてしまいました。七色の顔を出せるロリー・キニアが素晴らしい!そして、主人公のか弱さと強さを同時に体現したジェシー・バックリーにも拍手を贈ります。

デート向き映画判定
映画『MEN 同じ顔の男たち』ジェシー・バックリー

絶対デートで観ないほうが良いでしょうね(笑)。観終わった後は何を話していいんだか…となりそうです。いや、でもこれを観た後にいろいろ開けっぴろげに話ができるなら、二人の心の距離はかなり近いと胸を張れるかもしれません。とはいえ、交際が浅いと「どういうつもりで誘ったの?」というところから、いろいろな疑念を持たれる恐れがあります。一人で観るか、仲の良い友達と観ることをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『MEN 同じ顔の男たち』ジェシー・バックリー/ロリー・キニア

15歳以上は一応観られますが、いろいろな意味で、たくさん映画を観て免疫ができてから観るほうが良いと思います。というのも、映像が強烈なだけにそれだけで終わって欲しくない部分があるからです。ここまでの描写をすることにどんな意味が込められているのか、ぜひ考えながら観て欲しいと思います。

映画『MEN 同じ顔の男たち』ジェシー・バックリー

『MEN 同じ顔の男たち』
2022年12月9日より全国公開
R-15+
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト

© 2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

映画『君の顔では泣けない』芳根京子 芳根京子【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月28日生まれ。

映画『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー 『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー

今回は『白の花実』に出演する美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんにお話を伺いました。撮影前に準備されたことや、本編を観た感想を直撃!

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド 『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』オリジナルグッズ<チャージングパッド&チャージケーブルセット> 3名様プレゼント

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』オリジナルグッズ<チャージングパッド&チャージケーブルセット> 3名様プレゼント

映画『AFRAID アフレイド』ジョン・チョウ AFRAID アフレイド【レビュー】

『M3GAN/ミーガン』を手掛けたブラムハウスのチームが本作でも進化し過ぎたAIの脅威を描いています…

映画『楓』北島岬 北島岬【ギャラリー/出演作一覧】

2007年8月6日生まれ。千葉県出身。

映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン 心理学から観る映画60:記憶障害の診断「神経認知領域」と「病因」からみる『殺し屋のプロット』

今回は、急速に進行してしまう認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病に冒された殺し屋の最後の“仕事”を描く『殺し屋のプロット』を取り上げます。

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  2. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  3. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ

REVIEW

  1. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  2. Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック
  3. 映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ
  4. 映画『AFRAID アフレイド』ジョン・チョウ
  5. 映画『星と月は天の穴』綾野剛/咲耶

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP