REVIEW

ミッドサマー【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ミッドサマー』フローレンス・ピュー/ジャック・レイナー

へレディタリー/継承』のアリ・アスターが監督、脚本を務めた作品ということで、「何かあるんだろう」というのは予想していましたが、個人的には『へレディタリー/継承』よりもよっぽどこちらのほうがクレイジーでヘビーに感じました。本作の舞台は、スウェーデンの奥地で暮らす宗教団体が90年に一度行う祝祭。メインキャラクターは、両親と妹を亡くしたばかりの大学生ダニー(フローレンス・ピュー)、彼女の恋人クリスチャン(ジャック・レイナー)とその友人達。ダニーとクリスチャンは、民俗学を研究する友人達に誘われて、祝祭に参加するためにスウェーデンに旅行をすることになりますが、儀式を見学するだけに留まらない事態に巻き込まれていきます。最初はこの宗教団体の行為の恐ろしさに目がいきますが、根本は宗教云々いうよりも、ある意味、誰にでも起こり得る話だからこそ、このストーリーは怖くて、切ないのです。
あくまで私の解釈ですが、人には何かすがりつくものが必要な時があること、そして何かを“盲信”することが救いになることもあります。ダニーは家族を一度に亡くし、その背景にも重い事情があって失意のどん底にいますが、恋人のクリスチャンともうまくいっていません。そんな精神的に不安定な彼女が、この旅にきてどう変わっていくのかを観ていると、強烈な体験が彼女を変えていくことがわかります。ここで目にする光景の中には、ある意味動物的に男女の役割を象徴するような行為も出てきます。どれも一見すごくむごいのですが、どこか男女関係における“割り切り”を促すような描写にも見えます。そういった視点で観ると、最終的にダニーにとっては救いになる部分もあるように思うわけですが、世の中にある“宗教”の存在意義というものを改めて違った視点で観るような感覚があります。公式資料でアリ・アスター監督は「僕はダニーのような立場にいたんだ。(中略)これは僕自身のトラウマを癒すためのおとぎ話なんだ」と語っており、監督としてはハッピーエンドだそうです。観ようによってはバッドエンドにもハッピーエンドにも取れる結末ですが、皆さんはどう観るでしょうか。いろいろな解釈ができる作品なので、複数回観ると、毎度発見がありそうです。

デート向き映画判定
映画『ミッドサマー』フローレンス・ピュー/ジャック・レイナー

うまくいっていないカップルが、別れるタイミングを逃したまま、旅に出てえらいことになるというストーリーなので、カップルと観るとだいぶ複雑な気持ちになると思います(笑)。かなり強烈なストーリーなので、客観的に観る人も多いとは思いますが、むごいシーンも多いので、そういう意味でもデートにはオススメできません。哲学的な解釈が好きな人は、根底に描かれているものを考えながら観るとどっぷりハマれるので、1人でじっくり観るか、仲の良い友達と観ることをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ミッドサマー』フローレンス・ピュー

15歳未満の人は観られませんが、高校生でもこれはかなり刺激が強いので、心して観てください。怖いシーンも出てくるスリラー映画ではありますが、美しい風景や衣装なども出てくるので、アートとして楽しめる要素もあります。結末は「なんで、そうなっちゃうの〜?」と思う人もいるかも知れませんが、その辺りは人生でいろいろな経験をしてからもう1回観ると見え方が変わる部分もあるでしょう。今は今の心で観るということで良いと思います。

映画『ミッドサマー』フローレンス・ピュー

『ミッドサマー』
2020年2月21日より全国公開
R-15+
ファントム・フィルム
公式サイト

© 2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『けものがいる』レア・セドゥ 心理学から観る映画53:感情は有害か有用か

『けものがいる』と『シンシン/SING SING』は全く内容は異なるものの、感情の必要性について考えさせられるストーリー…

映画『秋が来るとき』エレーヌ・ヴァンサン/ジョジアーヌ・バラスコ 『秋が来るとき』特別一般試写会 10組20名様ご招待

映画『秋が来るとき』特別一般試写会 10組20名様ご招待

映画『#真相をお話しします』大森元貴/菊池風磨 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年4月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年4月】のアクセスランキングを発表!

映画『未完成の映画』チン・ハオ/マオ・シャオルイ 未完成の映画【レビュー】

物語の始まりは2019年。10年間、電源が入れられずにいたパソコンを起動し…

映画『アンジーのBARで逢いましょう』草笛光子 草笛光子【ギャラリー/出演作一覧】

1933年10月22日生まれ。神奈川県出身。

映画『サンダーボルツ*』フローレンス・ピュー/デヴィッド・ハーバー/セバスチャン・スタン/ワイアット・ラッセル/オルガ・キュリレンコ/ハナ・ジョン=カーメン/ジュリア・ルイス=ドレイファス サンダーボルツ*【レビュー】

こりゃ、おもしろい!いろいろ新鮮で…

映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M) 『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(Mサイズ)2名様 プレゼント

映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(Mサイズ)2名様 プレゼント

映画『ロザリー』ナディア・テレスキウィッツ ロザリー【レビュー】

自分で作った美しいドレスを身にまとったロザリー(ナディア・テレスキウィッツ)は、父(ギュスタヴ・ケルヴェン)に連れられて…

映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』マリリン・モンロー 『マリリン・モンロー 私の愛しかた』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『サスカッチ・サンセット』ジェシー・アイゼンバーグ/ライリー・キーオ 『サスカッチ・サンセット』先行試写会 10名様ご招待

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』ジャパンプレミア試写会 5組10名様ご招待

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『けものがいる』レア・セドゥ
  2. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  3. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性

REVIEW

  1. 映画『#真相をお話しします』大森元貴/菊池風磨
  2. 映画『未完成の映画』チン・ハオ/マオ・シャオルイ
  3. 映画『サンダーボルツ*』フローレンス・ピュー/デヴィッド・ハーバー/セバスチャン・スタン/ワイアット・ラッセル/オルガ・キュリレンコ/ハナ・ジョン=カーメン/ジュリア・ルイス=ドレイファス
  4. 映画『ロザリー』ナディア・テレスキウィッツ
  5. 映画『女神降臨 After プロポーズ編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永

PRESENT

  1. 映画『秋が来るとき』エレーヌ・ヴァンサン/ジョジアーヌ・バラスコ
  2. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  3. 映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』マリリン・モンロー
PAGE TOP